1.永遠を超えて、また君に巡り合う。【作者の都合で三国に戻された】
【三国志の端っこで生きています】の続編になります。
裕介=廠=アキト。
そして、また、三国時代に戻ってきたところからです。
二つの魂が未来で再び巡り合い、ようやく安らぎを得た。
はずだった。
アキトは、ミナと手を取り合ったあの夕日の光景を、何度も思い返していた。
胸の奥にあった空白が埋まり、世界がようやく“正しい形”に戻ったように思えた。
だが、その夜。
アキトとミナは、眠りについた瞬間、胸の奥で何かが軋んだ。
(……呼ばれている?)
光の川のような場所が、再び揺らいだ。
魂の奥底に沈んでいた“別の記憶”が、ゆっくりと浮かび上がる。
――まだ終わっていない。
声がした。
誰の声でもない。
だが、抗えないほど強く、深く、古い声。
【異形を倒せ】
次の瞬間、アキトの視界は闇に飲まれた。
落ちていく。
未来の都市も、ミナの笑顔も、すべてが遠ざかる。
土の匂い。
怒号。
炎。
荒れ果てた大地。
アキト、いや廠は目を開けた。
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土の匂いがした。
乾いた風が、頬を撫でた。
目を開けると、低い天井と粗末な木の梁が見えた。
廠はゆっくりと身を起こした。
胸の奥に、三つの時代の記憶が重なっている。
未来の都市でミナと再会した夕日の光。
現代での孤独と救い。
そして、三国の戦場で散った仲間たちの声。
異形の核を倒したことも覚えている。
(…なんだよ、せっかくいい感じに織と再会したのに…)
声が聞こえる。
【異形を倒せ】
(倒したじゃねーか…俺、あの後の現代、織がいなくて寂しかったんだぜ…)
【だから、未来で会わせてやったろ?】
(て、いうか、誰だよ、お前?)
【んー、作者】
(…へ?!)
【なんか、さ、ちょっとだけ人気になっちゃったんで、続けたいんだよね…】
(な、なんだこれ?!)
【だからさ、すぐに織には会わせてやるから、それにまた、チートスキル与えるからさ】
(どーなってんだ、俺の頭の中?!)
【ちゅーわけで、頑張ってくれたまえ】
脳裏の声は、ふっと消えた。
廠はしばらく天井を見つめたまま固まっていた。
(……マジかよ)
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廠は額に手を当て、ゆっくりと周囲を見渡した。
粗末な家。
土壁。
外から聞こえる市場の喧騒。
(……張世平の街だな)
劉備が馬を買いに訪れる、あの街。
歴史が大きく動き始める直前の場所。
廠は拳を握った。
十八歳の肉体は軽く、強い。
だが、魂は三つの人生の重みを抱えていた。
(天涯孤独っていう設定か。まあ、やりやすいな)
外から、怒号が聞こえた。
遠くで煙が上がっている。
黄巾の乱が、始まろうとしていた。
廠は立ち上がり、扉を開けた。
乾いた風が吹き込み、衣を揺らした。
(異形……お前たちが、この時代にもいるのか)
その瞬間、胸の奥で何かがざわついた。
まるで、運命が再び動き出したかのように。
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脳裏の声が消え、廠はしばらく天井を見つめて固まっていた。
(……マジかよ。なんでまた戦乱の時代なんだよ)
外から、にぎやかな声が聞こえてきた。
市場のざわめきに混じって、妙に通る男の声が響く。
「張家の娘婿を募集しておるぞー! 働き者、歓迎じゃー!」
(……は?)
廠は思わず耳を疑った。
張家。
張世平。
劉備が馬を買いに来る、あの商人。
(娘婿……? そんな設定、あったか?)
いや、史実にそんな話はない。
だが、さっきの“作者”の声を思い出す。
(……まさか、これも作者の仕込みか?)
廠はため息をつき、粗末な扉を開けて外に出た。
乾いた風が吹き抜け、街の喧騒が一気に押し寄せる。
その中心で、張世平らしき男が腕を組み、道行く若者たちを値踏みするように眺めていた。
「おお、そこの若いの! お前、十八か? 働きそうな体つきじゃの!」
(……いや、俺、三つの人生分働いてきたんだけどな)
廠は苦笑しながら、張世平の前に立った。
「……娘婿って、本気で募集してるんですか?」
張世平はにやりと笑った。
「本気じゃ。本気も本気、家の跡取りが必要でな」
廠は空を見上げた。
(行くしかないな。あと、もうあんまり出てくるなよ、作者、世界観壊れるぞ、ほんとに)
【はいよ】
廠はため息をつきながら、張世平の屋敷に向かった。




