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母の葬儀が終わらないうちに、父は屋敷に現れた。
今度は、一人ではなかった。
玄関の扉が開くと、父と、見知らぬ女と、その手を握った少女が並んで立っていた。
女は明るい色のドレスを着て、濃い化粧に強い香水をまとっていた。
喪に服すという気配は、一切感じられなかった。
「今日からこの人が、お前の新しいお母さんだ」
父は言葉に迷いもなく、まるで長く連れ添った相手のように、女の背中を軽く押した。
女は作り笑いを浮かべていた。
その笑顔に、本当の優しさは一欠片もなかった。
「そして、こっちが――お前の妹だ」
隣にいた少女が一歩前に出た。
わたしより少し背が低く、年はさほど離れていなかった。
白いリボンが揺れていた。
服や靴はどれも新品で、誰かに大事にされてきたことがわかった。
わたしはただ黙って、彼女を見つめた。
彼女もわたしをじっと見返していた。
それだけだった。
何か言えばよかったのかもしれない。
でも口を開けば、きっと何か嫌なことが出てきそうで、黙っていた。
新しい母親。妹。
わたしには、そんなものは必要なかった。
どこか遠い話のように感じられ、受け入れることも拒むこともできずにいた。
父は、まるで母が最初からいなかったかのように、わたしにそれを押しつけた。
それが一番、腹立たしくて、恐ろしくて、どうしようもなかった。
心のどこかで、認めたくない現実がじわじわと広がっていくのを感じていた。