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3

母の葬儀が終わらないうちに、父は屋敷に現れた。

今度は、一人ではなかった。


玄関の扉が開くと、父と、見知らぬ女と、その手を握った少女が並んで立っていた。

女は明るい色のドレスを着て、濃い化粧に強い香水をまとっていた。

喪に服すという気配は、一切感じられなかった。


「今日からこの人が、お前の新しいお母さんだ」

父は言葉に迷いもなく、まるで長く連れ添った相手のように、女の背中を軽く押した。


女は作り笑いを浮かべていた。

その笑顔に、本当の優しさは一欠片もなかった。


「そして、こっちが――お前の妹だ」


隣にいた少女が一歩前に出た。

わたしより少し背が低く、年はさほど離れていなかった。


白いリボンが揺れていた。

服や靴はどれも新品で、誰かに大事にされてきたことがわかった。


わたしはただ黙って、彼女を見つめた。

彼女もわたしをじっと見返していた。


それだけだった。


何か言えばよかったのかもしれない。

でも口を開けば、きっと何か嫌なことが出てきそうで、黙っていた。


新しい母親。妹。

わたしには、そんなものは必要なかった。

どこか遠い話のように感じられ、受け入れることも拒むこともできずにいた。


父は、まるで母が最初からいなかったかのように、わたしにそれを押しつけた。


それが一番、腹立たしくて、恐ろしくて、どうしようもなかった。

心のどこかで、認めたくない現実がじわじわと広がっていくのを感じていた。

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