episode.1
見慣れない天井だし病室かな…?にしては趣味の悪いピンクピンクしてる部屋だな…。
右側に目を向けると頭がお花畑になるんじゃないかってくらいの可愛らしいぬいぐるみと可愛らしい小物の嵐。
「こういうの好みじゃないんだよなぁ」
と呟くと
「あら、今日はお早いですね、ララ様」
と、声をかけられる。
「ら、ら、さま…?」
いや、誰だ。
「何を寝ぼけてらっしゃるのですか?あなたはランダーナ侯爵家の次女のランダーナ・ララ様ではありませんか」
ランダーナ・ララってどりょできの主人公の妹で主人公の婚約者である王太子を横取りする悪役ポジじゃん。
まぁ読者は主人公と王太子が結婚して欲しくなかったからララにめっちゃ感謝したんだけどね。ちなみに、わたしもその1人。
で、わたしがそのララってこと…?
てことは、わたしに声をかけている初老の女性はわがままなララのメイドがどんどん辞めていく中で唯一残ったメイド、ルーナさんかな…?
「せっかく早く起きたのですから、早めに朝の準備をして朝食に向かいますよ」
わたしの動揺や戸惑いなどつゆ知らないルーナさんは慣れた手つきでわたしを起こし、鏡の前に座らせる。
「わぁ、」
うっかり感嘆の声を漏らしてしまうほどララの容姿は美しい。性格が嫌いすぎてビジュが上手く入ってこなかっただけで、可愛いんだな。
少し垂れ目気味のエメラルドグリーンの瞳にふんわりとしたストロベリーブロンドの髪。左目の下には小さな泣きぼくろ。まさに、守りたくなる令嬢の王道みたいな顔立ちだ。
ララの顔に見惚れている私は側から見たら自分の顔に見惚れているいたい女なのだろうな。
そんな私を尻目にルーナらテキパキと用意をする。
その間に一旦頭の中を整理する。この物語の重要ポイントは合計四つだ。
一つ目はわたしが6歳で主人公でありわたしの一つ上の姉エリーンが7歳になる年。エリーンと王太子セルートの婚約。
二つ目は、ララが15歳、エリーンが16歳の年。16歳以上の子供の入学が義務付けられているドルトート学園へのエリーンの入学。
三つ目はわたしが17歳、エリーンが18歳の年。エリーンとセルートの婚約破棄、エリーンとビフォードの婚約、セルートとララの婚約。
四つ目はララが20歳、エリーンが21歳の年。その年に起こる国民の国王夫妻に対する大暴動。ちなみに、ララとセルートはこのタイミングで命を落とし、その後ビフォードとエリーンが国王と王妃になる。
多分鏡で自分を見た感じ、起こっていて一つ目だ。だが、一つ目が1番起きていて欲しくないものでもある。
「ねぇ、ルーナわたしって今何歳?」、
ルーナは瞬きをしながら
「ララ様は今7歳ですよ」
「そっか、ありがとう」
この時ルーナは目が落ちんばかりに目を見開いていたが、わたしにそんなことを気にしている余裕はなかった。
わたしは心の中で「エリーンちゃんとクソ王子の婚約、成立してんじゃねぇかああああああ」と叫んでいたのだ。
この婚約を不成立にさせるにはわたしがやはりセルートからエリーンちゃんを取り上げなくては。
どうしたものかな…。と思っていると、
「ララ様、髪が結い終わりましたよ、朝食に向かいましょう」
と、ルーナが声をかけてきた。パッと鏡を見ると、さっきも可愛かったけど髪がゆわれて更に可愛らしいルーナの顔が鏡に映っていた。
「可愛い!!ありがとう、ルーナ!」
ルーナは、また目が溢れんばかりに目を開く。
「さっきも少し思ったんだけどそんなに驚いた顔してどうしたの?」
ふと、思い出し、尋ねてみる。
「いえ、ララ様にお礼を言われることは初めてだったもので、驚いてしまい…」
少し言いづらそうにルーナが口を開く。
おいおいおいおい、人に起こしてもらっておいて、人に髪の毛縛ってもらっておいて、お礼もなしとかやばいやつだろ…。
と、過去のララに呆れる。
「今まで、失礼な態度をとってごめんなさい。いつもありがとう。、これからもよろしくね、ルーナ」
パッと椅子を立ってお辞儀をする。もちろんカーテンシーなんて概念はないので日本風のペコっとしたお辞儀だけれども。
「い、いえいえ、頭を上げてくださいララ様。ほ、ほ、ほら!食堂に向かいますよ」
顔を真っ赤にしながらルーナが言う。多分この語尾が強い口調は照れ隠しだ。
「うん!」
そんなルーナにニコニコしながら元気よく返事をした。
わたしはこの時しっかりと自覚をしてなかった。推しが手の前に現れると言う事実を。
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