Chapter.3 士煌のゆくえ
この作品は完全オリジナル作品です。
ーピピピピピー
スマホのアラームが鳴る。それを止めようと起き上がる。スマホには”7時30分”と表示されていた。
士煌「もう朝か...。」
大きなあくびをして体を伸ばす。ドアを開けて日光を浴びた。
士煌「...どうするか」
スマホの画面を確認してもまだ元の世界には戻れていないらしい。この神社から出れないということもありどうするか悩んでいる最中だ。
士煌「とりあえずどうしてこうなったのか整理してみるか」
そしてリュックからノートと筆記用具を取り出し、書いていく。
士煌「いつもと変わらず過ごしてたしな...。その日に限って違うことをしたといえば願い事か?」
神社で願い事をしたのが関係していると推測した。だがタイムスリップするような願いは叶えていない。本人もどういうことかあまり理解できず、八方塞がりだ。
ー2098年、夜ヶ崎高等学校ー
風井先生「それでは出席取りまーす。相田さん」
相田「はい!」
風井先生「安良くん」
安良「はい」
風井先生は出席番号順に生徒の名前を呼んでいった。生徒1人1人の声と表情を毎回確認しながら出欠をつけてることをいつも意識している。そして士煌の番がきた。
風井先生「久信田くん」
返事は返ってこない。いつもなら小さい声でも返事だけはしてくれる。返事が返ってこないため座席を見ると1席だけポツンと空いていた。その席は士煌の席だった。
風井先生「あれ?久信田くん?久信田士煌くん!?」
大きい声を出しても返事はない。クラスもざわつき始めた。今日は欠席連絡は入っていない。風井先生は嫌な予感がしていた。
風井先生「みんな!申し訳ないんだけど1時間目は自習にします。ちゃんと勉強するんだよ?私は欠席連絡が入ってるかもしれないので確認してきますね」
そういうと教室を後にした。そして急ぎ足で職員室へ向かう。
風井先生『久信田くんが無断で欠席したことは一度もない...。もし事件に巻き込まれていたら!?』
不安と焦りがつのるばかり。そうこう考えているうちに職員室にたどり着いた。ドアを開けて入ると花森先生が真っ先に目に入ったので聞くことにした。
風井先生「花森先生?今ちょっと時間ある?」
花森先生「全然大丈夫ですよ。それより授業あったんじゃないの?」
風井先生「そうなんだけど久信田くんがいなくて連絡来てないか確認をしに来たの」
花森先生「え?士煌くんが?私は朝から職員室にいるけど欠席の連絡は来てないよ?」
2人は顔を見合わせる。そして動揺し始める。特に風井先生。すごくわかりやすい。
風井先生「どうしよ!もしかして久信田くんに何かあったのかも。それか昨日私と話したこと嫌だったのかな?それとも学校つまんないって言ってたしもしかして...」
花森先生「風井先生!一旦落ち着いてください?」
風井先生「あっ!ごめんなさい」
風井先生は深呼吸をする。焦ると周りが一気に見えなくなるのは風井先生の欠点でもある。
花森先生「とりあえず、私は他の先生方に聞いてみるから風井先生は士煌くんの家に電話してみたらどう?」
いかなる時も冷静な花森先生。2人の性格が正反対なのに親友でいられるわけはこういう場面を見ると納得できる。
風井先生「そうだね。ちょっと電話してみます!」
風井先生は自分のデスクまで走り(※職員室内は走っては行けません)久信田くんの家に電話した。
ープルルルル、プルル...ガチャー
?「はい。久信田です」
風井先生「おはようございます。夜ヶ崎高等学校の久信田士煌くんの担任の風井愛葵と申します。」
?「はあ...。士煌の母です。一体なんの誤用でしょう?」
久信田くんのお母さんは疲れ切ったような声で電話に出た。面倒ごとを増やすなという雰囲気が電話越しでも伝わってくる。
風井先生「それが士煌くんが今日学校に来ていらっしゃらなかったので確認のためにお電話いたしました」
すると士煌くんの母がおどいた様子で風井先生に言う。
士煌の母「え?今日の朝学校に行ったんじゃないんですか?」
風井先生「それがまだ学校に来ていないようで...」
士煌の母「ちょ、ちょっと待ってください。今祖母に確認してみます」
久信田士煌の家庭は母と祖母、士煌の3人暮らしだ。幼い頃に両親が離婚しており士煌は母に引き取られ、4年前に母の実家のある夜ヶ崎村に引っ越してきたのだ。母はシングルマザーとしてお金を稼ぐため病院で働いているが他にも仕事をいくつか掛け持ちしているため家にはほとんど帰ってこない。祖母は高齢のためほとんど寝たきりの状態だ。そんな家庭環境が影響しているのか、久信田士煌は人と関わろうとしない。風井先生もそれを気にしていた。
士煌の母「...お、お待たせしました」
風井先生「いえいえ大丈夫ですよ。どうでしたか?」
士煌の母「祖母に聞いたところ昨日家に帰ってきていないみたいです」
風井先生「え?一応学校側としては夕方17時30分くらいに帰宅させたのですが...」
士煌の母「士煌のことなので深夜にこっそり帰ってきてる可能性もありますが心配ですので探してみます。ご連絡ありがとうございます」
風井先生「いえいえお役に立てなくて申し訳ないです。こちらでも職員たちで捜索してみます」
士煌の母「ありがとうございます」
電話が終了し一大事だということを知ったため校長先生に伝えるため校長室へ行った。
ーコンコンコンコンー
風井先生「失礼します」
風井先生が校長室に入ると花森先生と校長の大岡先生がいた。
風井先生「花森先生!?どうしてここに?」
花森先生「あれからいろいろあって〜。士煌くん探すんでしょ?」
風井先生「なんでわかったの!?」
大岡先生「さすが高校からの同級生ですね〜。タイミングバッチリでした」
風井先生「それはどういうことでしょうか??」
花森先生「それはね〜」
ー風井先生が電話をかけに行った直後ー
花森先生『士煌くんが無断欠席するような子じゃなかった。じゃあ他に理由が?』
とりあえず朝、職員室にいた先生方に連絡を受けてないか聞いてみた。しかし誰1人として連絡が来てないとのこと。
花森先生『どうすればいいんだろう。士煌くんがいなくなって行方不明にでもなったら愛葵に保護者からの批判がきてしまう。どうすれば...』
自分のデスクで1人葛藤していた花森先生。しかしふとした瞬間に過去の記憶が蘇った。そしてハッとした顔で校長室に走って行った。(※職員室内は走っては行けません)
ーコンコンコンコンー
花森先生「失礼します」
大岡先生「花森先生どうしましたか?」
花森先生「お話があるんですけど、2年生の久信田士煌くんが行方知らずなんです。少し時間がたったら風井先生が他の職員の先生方に協力してほしいとお願いに来るはずです。なのでぜひ捜索に協力させていただけないでしょうか?」
すると校長の大岡先生は書類から一度目を話して花森先生の方を向いて話し始めた。
大岡先生「我が学校の大事な生徒です。協力しましょう」
花森先生「ありがとうございます」
花森先生は深くおじきをした。これが精一杯の感謝の気持ちだった。そこへ...
ーコンコンコンー
風井先生「失礼します」
......という感じで校長室で話はもうついていたようだ。それを聞いて風井先生は恥ずかしそうに顔を赤くした。
大岡先生「まっ!職員全員で士煌くんの捜索だ!」
2人「はい!」
2人は校長室を後にして手の空いている先生方に捜索の協力をお願いしに行った。そして学校では捜索が始まろうとしていた。
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