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1話 ニセ・トイノール 1

 今から一万二千年前、突如として現実世界が崩壊した。魔物、モンスター、異種族、ダンジョンなどと言った……ファンタジーの世界が現実世界を侵蝕し始め、純粋な生物は適応していった。人類も同様に徐々に適応していき、今では魔法やスキルを駆使して繁栄していっている。異種族とは共生が可能であることから生き残る為に協力体制を構築してお互いに持っている知識を共有しながら今まで魔物やモンスター、ダンジョンと戦い続けてきた。


 20以上の国が壁を築き自国を守るための軍隊を持っているがその中でも強い十二の軍隊に贈られる称号が干支の十二の動物だ。俺が属している国には十三の軍隊があるがその内十二の軍隊は十二支に選ばれている。最強の軍隊は我が国、ヘルアルイ王国が持っているので他の国へと出張してもらっている。他の国は1つの軍隊しか持ってないがヘルアルイ王国は大国なので十三もの軍隊を持てる。軍隊の隊員を育てる学園も有しているので他の国から受験してくる者も大勢いる。ヘルアルイ王国の軍隊に属している俺はその中の一つの隊長をさせてもらっている


「はぁ……帰りたい」

「許しませんよ。各軍の隊長と副隊長が出席するのですから」

「だから帰りたいんだよ」

「我がゼロ隊は隊長が出席しないことが多過ぎると国王や大隊長からツッコまれているのですから」

「その二人が止めていたんだろうが」


 現在、ヘルアルイ王国では定期的に各軍の隊長と副隊長が集まり会議と言う名の情報交換が行われる。王都で行われているがそれに俺は出席を一回もしていない。俺が所属している第0軍隊、通称ゼロ隊は交換する程の情報を持ち合わせていないのだ。俺がこのゼロ隊の隊長になってから十年の月日は経つがほとんど公の場には顔を出していない。ここ最近では出るように大隊長に言われているので出るようにしているが仮面を着けて出ている。


 王城に行く時ですら仮面を着けているがそれを許されている理由があるのだがそれを知らない他の軍隊は俺のことが嫌いなみたいだ。エコヒイキと言われているが一切意味が分からないし分かりたくもない。副隊長も「知らなくていいです」と言っていたし覚えなくても何も問題はないか。まぁそんなことはさておき、俺が仮面を着けている理由は五歳の時から軍隊の隊長になっているし、公の場に顔を出していないことから呪いをかけられていると思われていたそうだ。それに目を付けた二人が俺に仮面を着けて公の場に出るように命令してきた。十年も出てなかったら今さら就任させたって思われないのか。


「そろそろ入らないと“()”の隊長に色々と言われますよ」

「なぁ初めてだからさサポート……」

「わかっていますとも。お任せください」

「じゃあ入るか」


 俺が会議室の扉を開けると先についていた各隊が一斉にこっちを見てくる。うわぁこんなに視線を集めるのは初めて公の場で王家と謁見した時以来だな。まぁ今回は会議という名の情報交換らしいから俺が何かを喋らないといけないってことはないだろう。副隊長に席に案内されて座るがまだ全員がこっちを見ている。好奇心の視線を向けているのは“()”と“(ひつじ)”そして“()”か。他のは敵意と殺意ってどういうことじゃい。


 “子”に関しては他とは違う視線を送ってくるが一体なんなのかは分からない。一番殺意を飛ばしてくるのはその“子”の副隊長なんだが……何かしたかな? 別に放っておいても何もしてこないだろうからいいとして……やっぱり男女ペアなのか隊長と副隊長って。てっきりウチだけがそうなったと思ったんだがなぁ。各隊がジャンケンで決めたわけでもないだろうからなぁ。何かしら理由があるだろうから後で聞いてみるか。


「珍しく全員揃ってるな」

「「「「大隊長、お疲れさまです」」」」

↑ゼロ隊以外の全員

「誰のせいですか。誰の」

「我が隊長がここに出席出来なかったのは大隊長の判断だった筈では?」

「貴様ら……なんだその舐めた態度は!!」

「落ち着け」

「隊長……奴らは大隊長に向かって」


 なるほどねぇ“子”隊の副隊長は大真面目さんなんだなぁ。別ではあるが隊長に向かって刃物を向けてくるとはな。公の場じゃないので軽い感じで言ったのは反省しないと。大隊長の笑ってないで止めないんですかね。じゃないとうちの副隊長がアイツのことを斬り刻んでしまいますよ。まぁそうなる前に止めれるから止めるけど……それはそれで後がめんどくさい事になるのは確かだ。それならここは


「大隊長、申し訳ございませんでした」

「・・・うむ俺もすまなかったな。任務を個人的に与えてしまっていて」

「副隊長も頭を下げておけ」

「承知いたしました。私も申し訳ございません」

「ほぅ……ゼロ隊は皆、このような感じか?」


 大隊長は何を言っているんだ? 十年も隊長をしているんだから部下の教育はしっかりとしているに決まってるだろ。そこの“子”の壱隊(いちたい)とは違ってしっかりと教育は行き届いていますよぉって言ってやりたいが、周りの反応を見るに俺の時だけ猫を被っていやがるな。後で副隊長に自白剤でも盛って喋らせておくとするか。大副隊長から時々言われる狂犬隊ってあだ名は他の隊でも噂になってそうだな。


「まぁいい。今回呼んだのは隻眼の黒竜が確認された」

「任務などの詳細は私からさせていただきます」


 黒竜の名前を聴いて周りがざわつく。まぁ無理もないが騒ぎすぎじゃないか? 大副隊長はそれを無視して喋ってるしみんな聞き取れてるの? まぁ俺からしたら関係はないだろう。今回も壱隊だけで討伐作戦を実行するだろう。そう安心していたが「今回はゼロ隊と合同でお願いします」と言われた。はぁ? 以前出てきた黒竜に壱隊の隊長と隊員のほとんどが殺されていたのに2軍隊だけで事足りるとでも思っているのか。


「大副隊長、質問があります」

「壱隊副隊長どうぞ」

「ありがとうございます。連携も取れないゼロ隊と合同では無理ではないでしょうか?」


 そうなの!? 合同訓練すら俺は参加することを止められていたから知らなかった。副隊長に聞いても「問題ありません」って答えるから安心していたんだが次は問答無用で参加してやろう。うちの副隊長を睨んでいると彼女は頷いて「問題ございません」と自信満々に言い放った。どこが大丈夫なんだよ? その理由もしっかりと答えろと目線を送ると何をとち狂ったかは知らないが……「ゼロ隊だけで十分なので」と言った。


 俺含めて全員が「「「は???」」」と言った。それを言った本人は意味が分からないという顔をしていたが、そりゃそうなるだろうがよ。今回、目撃されている黒竜は六年前に隊長を殺して逃げている奴な筈だ。そんなのをゼロ隊だけでやれるわけないだろう。黒竜は生ける災害と呼ばれるような魔物だぞ!! 何をどう考えてそれを言い放ったんだよ!!


「ゼロ隊の言う通りかもしれないな」

「大隊長、本気ですか?」

「うむ……ヤツの片目を奪ったのは誰だ?」

「・・・分かりました。作戦を考え直します」

「頼む。他は特にないか? ないなら今回は終了とする」


 これって決定事項みたいな雰囲気じゃない? 反論なんてさせないという圧が大隊長から出ているので各隊は会議室から出て行っている。俺らを出て行こうとしたら大隊長から「ゼロビトは待ってくれ」と言われて副隊長を先に退室させた。これ以上の面倒ごとを持ってくるのであれば俺は速攻でここから逃げる。副隊長は「隊長、大丈夫でしょうか?」や「何かあったら絶対に教えてください」などと散々言っていたから大副隊長から無理やり連れ出されていた。


「お前に別の任務も与えたい」

「黒竜の討伐には参加しなくていいのです?」

「それに参加してもらった後の話だ」

「すごく面倒な気がするのですが……」

「学園に通ってもらう」

「いやだ」


 何故今更になって学園に通わなくてはならない。隊長としての業務がある訳だしそんなことが出来るわけないだろうが。しかも黒竜の討伐に参加してからってアホなのか? 死ぬかもしれない作戦なのにコイツなら大丈夫だろみたいな感じで言ってくるのはアホ以外の何者でもないだろ。一夜で国を滅ぼせるような奴を撃退されるだけでも偉業になるんだからな。アレは個体数は少なく一番弱い奴ですら隊長と隊員を蹂躙出来るんだ。


 それをたかだか不意打ちで片目を奪っただけの人間に期待しすぎだろ。まぁ黒竜の件は一旦、忘れるとして学園に通わないといけない理由を聞こう。任務とは言っていたけどもどんな感じの任務なのかが分からないから詳細をしっかりと聞かないと降格さられる可能性が……別に仕事量が減るから隊長から降ろしてくれても全然いいんだけど。もしかしてこのまま何もしなければ隊長辞めれるのでは?


「お前、よからぬこと考えてるだろ」

「仮面を外してないのによく分かりましたね」

「はぁ……第二王子と第四王女は知ってるな?」

「もちろんです」

「あとは聖女と龍の巫女も知ってるよな」

「嫌な予感がするんですが」


 俺の嫌な予感は的中したらしく今年、学園に入学するとのこと。よりによってその四人が同じ学園に入学することはないだろうが。大隊長を睨みつけると観念したのかは分からないが「四人にお前もこの学園に通うことをゲロったら……」と言った。はぁ? そもそも俺は学園になんて通わなくてもいいってお前らが言っていた筈なのに何故に今更になって通う事になっているんだよ。しかもその四人に喋るのは最悪な選択肢だよ。


「すまんな。うちのかみさんとそこの大副隊長が入学させるって聞かなくてな」

「ゼロビトくん、相談もなしにごめんなさいね」

「今更ではないですか?」

「隊長の業務はそこの馬鹿にやらせるから……ね? お願いできない?」


 ものすごく断りたいけど……二人にはここにやって来た時に大変お世話になったからなぁ。絶対に面倒ごとに巻き込まれるのは分かってるけど「分かりました」と答えた。面倒な事になったらその時に考えればいいだろう。学園に入学するにあたって色々と手続きをしないといけないけどその辺は大丈夫なのだろうか?  ゼロビトって言うのはただの呼び名ってだけだからなぁ。その辺も考えないといけないだろう。


「ゼロビト……本名を教えてくれないか?」

「無理です。捨てた名をわざわざ拾う必要がありません」

「そう……なら私が考えた名前で手続きしてもいいかしら?」

「大丈夫ですよ。と言うかむしろお願いします」


 いやぁ助かった。大副隊長が考える名前だったら絶対にいい名になる筈だ。二人は孫までいるような歳だし考えるのは得意だろうから。本当に名前とか考えるのが面倒で副隊長に適当に決めてもらったやつをずっと使っていたが流石に学園に通うのであればしっかりとした名前が必要になるから助かる。しかも手続きもしてくれるという破格の待遇だ。・・・学園って学ぶ所だとは知っているけど、何をしているのかは一切知らない。


 知らないものを知れることについてはすごく楽しみではあるが……別の意味では絶対に何もしたくない。第二王子と第四王女に聖女と龍の巫女って組み合わせが学園にある時点で絶対に面倒ごとの火種になるわけじゃん。それを対処するのが俺の役目ってわけだろうからやるけどさ、どうやってその四人に接近するかも考えておかないとな。おそらくだが護衛がいるだろうから少々面倒だな。


「ニセ・トイノールってのはどうかしら?」

「トイノールって確か……」

「ええ私の家名よ。嫌かしら?」

「嬉しいくらいです。親戚って感じになるのでしょうか?」

「違うわ。うちの子の養子になってもらうのよ」


 大副隊長のお子さんの養子に……えっ? 養子って家族になるってことだよね。まぁ限定的だろうから別にいっか。そんなことを考えても仕方がないからなぁ。確か大副隊長って爵位が伯爵だった筈だけど、お子さんに継がせたって話は聞いたことがないんだけど……これってさ俺は選択肢間違えてしまったパターンじゃないか。


「そうと決まれば早速準備するわよ。ほら、貴方は帰りなさい」

「えっ? ちょっ」


 閉め出されてしまった。副隊長が大人しく扉の横に待機していたので今日は帰る事にした。事務仕事も残っているからそれを終わらせないといけないって言うのもあったから少しだけ急ぐ。飛竜に乗りながらゼロ隊の基地に着くまで副隊長と雑談する。そこで大副隊長のお子さんの養子になる事になったこともついでに言うと黙り込んでしまった。何も言わなくなったことに少し心配になったが……特に気にするようなことでもないかと思い置いて先に基地に戻った。


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