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再突入に向けて

 深い傷を負いながらも第二階層から生還したグレス、レダ、イノンの三人は、翌日、再突入の為の準備を進めていた。


「あ、グレス!ダンジョン行くの?私も行っていい?」

「イノン。君もか」

「うん。もうちょっと私も、戦えるようにならないと」

 イノンはそう言って、脚につけた短剣に触れた。

「そうか。なにか買っていくものはあるか?」


 対してレダは二人と別行動をすると伝え、ギルドが管理する資料館に向かっていた。


 今回の失敗で、レダは迷宮や魔物に関する知識や、戦っていくノウハウが不完全であることを実感した。

(初めての第二階層の空気に気圧され、冷静さを欠いていた気がする……。)


 『モンスターの生態と特徴』、『迷宮の構造・地形』、『利用できる原生植物』、『モンスター素材一覧』────。指南書を漁っては用意した羊皮紙に書き写していく。魔物の逆流(モンスター・フラッド)、落下トラップや遭難のことも考え、第三階層までの情報を、なるべくくまなく。


(多すぎる情報は初学者には扱いきれないが、どの情報が不要かを取捨することもできない。何度も読み、正しく書き残し、ダンジョンで参照できるようにしなくては……)




「イノンはレダといつ出会ったんだ?」


 イノンは「うーん」と少し悩んでから話した。

「レダとパーティを組んだのはね、半年前くらいなの。その時は私も、グレスみたいに右も左もわからない初級冒険者だったんだよ」

「半年か!第二層で見たイノンとレダの連携も半年という時間の賜物なんだな」

「ふふ。……でもあれはね、レダが私に合わせてくれてるんだよ。私の戦闘技能は低い方。二層で死にかけて、ちょっと甘えすぎちゃってたのかなーって、反省」


 しゅんとするイノンを、グレスは慌てて励ました。

「き、きっとそんなことはない。それに、イノンはもっと重要な役割を背負っている」

「あれもね、実は全部レダの受け売りなの」

「えっ。そうなのか」

 グレスは、イノンが博識で言っているものだと思っていた。


「うん。本当は、ああいう斥候(スカウト)の立ち回りはレダの方がずっと得意。でも私が戦うのヘタだから、レダが前衛に回るしかなかった……。他のメンバーが入れ代わり立ち代わり、誰と組んでも恥ずかしくないようにって、攻略を中断してレダが特訓してくれて」

「そうか……それは大変だったろう」

 結局五か月もかかっちゃった、とイノンは苦笑した。


 グレスは、自分が戦況や進行度合いを俯瞰し先んじてアドバイスする姿を、想像しただけで頭が爆発しそうになった。


「そうでもないよ。それが今の私の役割だし。それでね、グレス」

「ああ」

 イノンが足を止める。グレスも続いて足を止める。

「グレスが来てくれて、また前衛が安定するようになった。二層では失敗しちゃったけど……しばらく私たちと闘ってくれると、嬉しいな」


 イノンからそんなことを言われたのは初めてだった。思えばイノンよりもレダと話すことが多かったかもしれない。

 グレスはぐっと拳に力が入るのを感じた。

「ああ。もっと二人と、戦っていきたいと思う。これからも、よろしく頼む」

 グレスはイノンに手を差し伸べた。

 イノンは微笑んで、その手を握り返した。


「ありがとうグレス。さあ、行こうか。今日は私が先にやるね!」

「わかった。無理をしないように、やっていこう」

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