第二階層、進行開始
「このダンジョンはね、下りるほど広くなっていって、第四階層から下に行く毎に小さくなっていくんだって。それで……いまの最前線が第八階層。下層に行くほど強い魔物が出るし、構造も迷路のように複雑になるんだって」
「酸や毒が溜まった、自然のトラップもできるらしい。俺たちの目指す第二層にも確認されている」
「でも、おおまかな地図は第三階層の分まで持ってるから、安心してね」
「イノンは、準備が得意だ。いいことだ」
「そうだな。転ばぬ先の杖ってやつだ」
第一階層から第二階層へ降りる階段は、東にある入り口とちょうど反対側の西側にある。
中心に近い道ほど太く、冒険者の往来も活発であるため、消耗しないように上級冒険者もここを通る。そのため下級冒険者は、狩りや採取を邪魔されないように、外周の方に移動してから探索することが多い。
一週間の狩りを経て、第一階層の攻略を順調に進めた一行は、いよいよ第二階層への階段を目指して中央大道を進んでいた。
レダとイノンの二人でも第二階層を十分攻略できる実力はあるように思われたが、グレスを正式に前衛に迎え、その安定性は向上したと言える。
前線を維持しやすくなったことで後衛のイノンの行動範囲が広がり、これまで攻撃にも参加していたところを指揮官として状況に対処できるようになったという。
グレスは、グレスだからではなく前衛だから貢献できているという自覚があった。
ただこの一週間で、レダから剣術の基礎やモンスターの種別ごとの戦い方、パーティメンバーのことを意識した戦線を崩さない立ち回りを学び、論理的で安定した戦闘ができるようになってきた。
人を頼ること、人に頼られること。
責任と義務は重たいが、得られる安心と休憩は継続戦闘を可能にする。
グレスは順調に自信と実力をつけていった。
そして。
「これが……」
「ああ……」
「第二階層への階段────。」
ただの階段だ。石の板で作られた、簡素で無骨な土色の階段。
しかしその異様なまでの迫力は、ほとんど消耗していない三人を飲み込むような妖気を持っていた。
「ここからは、俺やイノンにとっても未知の世界だ。気合を入れていこう」
「ああ。気合いだ。武者震いがする」
「緊張しすぎちゃだめだからね、グレス」
「ああ。この震えは……わくわくの気持ちだ」
「大丈夫なのか、グレス……」
レダは緊張した面持ちのグレスの肩を軽く叩いた。
「さあ行こう」




