レダとイノン
「お疲れ様でした。報酬はこちらになります」
ギルド会館に依頼の物を納品したレダたちは、報酬の銀貨銅貨を分けあった。
レダは、新たな仲間となるグレスの歓迎会をしようと、酒場に彼を案内した。
「乾杯!」
レダ、イノン、グレスはジョッキをぶつけて勝利と新たな仲間を祝った。
「ぷはっ。いやー、1日で依頼が終わってよかった」
「そうだねー。ホーンラットがたくさんいてラッキーだったよー」
「レダ、イノン。俺を仲間に入れてくれてありがとう。それと……俺は足手まといにはならなかったか?」
グレスは心配そうに聞いた。レダは焼いた鳥肉を口に運びながら語った。
「グレス。人間、だれしも初心者から物事を始めるんだ。気負うことはない。
俺だって初めてダンジョンに潜った時は震えていたよ、人と一緒だったけどな。
ダンジョンは危険な場所だ。何百人という冒険者が挑み、死んで魔物の餌になってきた。
そんな場所に新たに挑む人間は、無謀な馬鹿だ」
レダは苦笑いを漏らした。
「でも、俺はそんな馬鹿な人間たちも、問答無用で見捨てるべきとは思わない。
誰かが教えたり、協力することで『無謀』は『挑戦』に変えられる。勝算のある賭けになる。
多少自分の歩みが遅くなったとしても、無駄な死を減らせるなら、俺は人に協力するべきだと思う」
協力。あの青髪の男も似たことを言っていたな、とグレスは思った。
「初心者は弱い。しかしそれを助け、教えれば、冒険者の総力を伸ばしていくことができる。
それが回りまわって、いつか俺のピンチを救ってくれるかもしれない」
レダは「それに、自分が見捨てた奴が次の日死んだら目覚めが悪いしな」と付け加えた。
イノンがレダの手を握り、彼に微笑んだ。レダも微笑を返す。
「二人は……」
過去に誰かの死を経験したのか。グレスは後の言葉を飲み込んだ。
代わりに「人をよくパーティに入れているのか?」と聞いた。
「時々な。みな攻略の速いパーティに移っていくから、期間は短いが」
「みんな血の気が多いよね」
ギルドの職員は紹介の時、半年も第一階層にいるパーティは珍しいとグレスに言ってあった。
進捗が悪いのではなく、堅実なのだ。
新人育成を兼ねながら、第一層を安全に戦い抜いている結果だった。
グレスは少しだけ黙ったあと、ゆっくりと話した。
「俺は……感動した。イノン、レダ、君たちは冒険者やギルドに大きな貢献をしているはずだ。きっと多くの命を救い、攻略に役立ってきたんだろう」
「グレス……ははは。いや、なんだか照れ臭いな。なんというか、初心者の君に言われるのも少し変な感じだけど……そうだな。そう願ってるよ」
レダはグレスの言葉に苦笑したが、グレスの真っ直ぐな瞳を見て、素直に賞賛を受けることにした。
「……」
「……イノン?」
「あ、うん。私もそう思うよ」
「どうかしたのか」
「ううん、なんでもない」
「……そうか。さあ、二人も食べよう。安い食事だが、たくさん食べて力をつけるんだ」
「ああ。俺ももう一杯頼もうかな」
「じゃあ私も」
酒場の小さな歓迎会を、澄んだ夜空が包み込んだ。
「……ああ。だが……は、下層で……れて」
「……か?……の悪い噂……いだろう」
「わからない。……のまま、もし……ら、討伐隊を……」
肉が、酒が、種々の料理が、いつもと同じように、冒険者の英気を養っていた。
酒場の夜は静かに深まっていった。
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