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初めての仲間

 グレスは考えた。ダンジョンで戦うことは容易ではない。

 何か、根本的な見落としをしているのかもしれない、と思った。


 モンスターへのリベンジを果たした彼は、今度はギルドの方へ向かった。

「冒険者……みんな、鎧を着ている。武器も剣だけじゃない。しかし……」


 グレスは様々の冒険者を観察し、訝しんだ。

「あいつ、刃のついていない棒で、どうやって戦うんだ。あいつは多分お荷物だ」


 そして気付いた。多くの冒険者が、複数人で行動していることに。

 単独の人間もかなりの数いるが、それは店に並んでいたり、食事をしていたり、とにかくダンジョンから離れていく人間だった。

 ダンジョンに入ろうとしているのは、どれも複数人だ。


「助け合うのか。……先駆者は頭が良いな」


 しかしグレスはこの街に知り合いがいない。どこかの団体やグループに所属しなければ、ダンジョンに潜る仲間は見つからないだろう。


「共にダンジョンに潜る仲間を探している」


 グレスはギルド会館の受付にそう告げた。

 職員は、その背後にある大きなボードに、パーティ(一緒に行動する仲間のことだ)やクエスト(ギルドが仲介している依頼らしい)が張り出されていることを教えた。


「俺が参加できるグループはあるか」

「グレス氏は昨日、冒険者になったばかりですよね。では、難しいかもしれません」

「俺では力不足か」


「はい。初心者のうちはより腕のある者に師事を乞うのが一般的。しかし、時間をかけて物事を教えるお人よしは、冒険者のような荒くれ者にはなりません。

 加えて、冒険者は今日明日にも死んでしまうような不安定で信頼のない職種です。下級冒険者同士であっても、仲間はしっかり選ばなければ、むしろ事故を誘因する爆弾ともなりえる。わかりますか?」


 グレスはよく考えてから呟いた。

「俺では、力不足かもしれないな」


「……ええ、おそらくは。一応、今現在も第一層の攻略を目標とする初心者パーティもあります。参加の申請をしてみますか?」

「では、よろしく頼む。足を引っ張るかもしれないから、そう伝えておいてくれ。ありがとう」


 職員は「足を引っ張るとわかっている冒険者を参加させるパーティがどこにあるのか」とは言わなかった。


「……承りました。向こうにも似たボードがあるのがわかりますか?」

 職員はギルド会館の入り口の方を指さした。カウンターの向こうにあるボードと同じように、ハンコが押された紙がたくさん留めてある。


「もし参加を承認、あるいは顔合わせに応じるパーティが見つかれば、あそこにこの紙を貼っておきます。剥がしてこのカウンターに持ってきてください」


「了解した。これは、画期的な報告システムだな」

「……恐れ入ります。パーティが見つからなかった場合もその旨を掲載しますので、連絡用紙を剥がして廃棄してください。いずれにせよ受付には来ていただかなくて結構です」


 グレスは待った。

 待ちぼうけるほどに待った。入口のボードの前で。

 その日は夜遅くまで待ったが、誰もグレスに話しかけてくることはなかった。


「連絡が来た」

 それから2日後。ついにボードには、グレスを受け入れるパーティについて張り出されていた。


 パーティメンバーは二人、前衛の男と、後衛の女が一人ずつだった。

 二人は半年前にダンジョンに入り、第二階層に進攻しようというところらしい。


「レダだ。今日はお試しということで、まあ気楽にいこう。よろしく」

「グレスだ。足を引っ張るかもしれないが、ぜひよろしく頼む」

「イノンです。今日はよろしく」

「グレスだ。右も左もわからないが、精いっぱい頑張るつもりだ」


 二人はグレスと握手する。グレスは、同じ初心者ながら、先輩となる二人の頼もしさに感動した。

 黒髪のレダと、薄橙色の髪のイノン。


「グレスには前衛として戦ってもらう。戦闘経験はどれくらいある?」

「一度、獣の亜人を倒したことがある」

「……なるほど。じゃああまり期待はできなさそうだな」

「面目ない…」


 グレスはしょんぼりした。亜人を1体だけ倒したという実績は、おそらく迷宮の中では塵芥ほどの価値もない。

 レダは苦笑すると、グレスの肩を軽く叩いた。

「いいんだ。グレスが真剣にうちのパーティでやっていきたいなら、俺たちは歓迎する」


「ありがとう。今日は何をする」

「今日はモンスター素材を集める依頼(クエスト)を進めよう。角のある鼠のモンスターを狩って、その角を回収するんだ」

「了解した。イノンは?」

「私も行くよ。後方支援なの。物を管理したり運んだり、地図を見たり……」


「戦わないのか?」

 グレスはいぶかしんだ。

「戦わなくはないんだけど、なんというか、役割の違いというか……」


 イノンは困ったように前髪を触った。

 レダが「すぐにわかるさ」と、地図をしまって立ち上がった。

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