望まぬ再会──レダ
紅い木材でつくられたギルド本館は、いつもまして騒がしかった。
「おい、第二層の生還者だ!」
「二層の冒険者が帰って来たぞ!!」
わっと走り出す人々。四層級モンスターが確認されていた第二階層の殲滅戦が始まり、次第に冒険者たちが帰還していた。
「あっ……!」
レダも人の波に合わせ、階段から転げ落ちるように、人だかりの方へ走る。
人々は抱き合い、涙を流して帰還を喜んでいた。
重傷者の治療はすでに始まっており、歩けるほど軽傷の者はロビーに入ってくる。
レダは何度も行ったり来たりした。
いない、いない、いない、いない、いない、いない、いない──────。
あと数分待てば、いや一日あれば間違いない。多少傷を負っていても、イノンは帰ってくる。
だから今はまだ、外を見に行かなくていい。
レダは自分にそう言い聞かせた。
「……っ」
「ああ……」
ギルド前に次々に物が運ばれてくる。
並べられるのは、人々の死体と遺留品だった。
レダは決してギルド本館から出なかった。外に目を向けることもしなかった。
夕方になっても、レダはギルド本館で二人の期間を待っていた。
負傷者、帰還者は続々とありながら去っていく。その姿が焦燥をかき立てた。
死体は一日もしないうちに蠅がたかり腐敗が始まってしまう。引き取り手がいない死体は今晩にでも火葬されるだろう。
「イノンは帰ってくる……イノンは必ず帰ってくる……大丈夫だ」
その呟きがまず無為な願いでしかないことに、レダは気づき始めていた。
日没ごろには既に第三階層からの帰還者が見え始め、中級冒険者も見えるようになっていた。
第二階層で敗走したっきりの三人の、そこから知識と実力のあるレダを抜いた二人が、いったいどれだけの幸運に恵まれれば無事に帰って来られるだろう。
願わくば、地上を目指していた何らかの上級者パーティに合流し、安全に帰ってきてくれることを。
願わくば、迷宮内に潜伏し、討伐隊・捜索隊が見逃していることを。
願わくば、第四階層で有志が拓いた休憩地点で、救助を待つことを。
気づけばレダは、遺留品の並ぶ広場まで来てしまっていた。
「っ、イノン……」
別れを告げる準備など全くできていない。
心臓は本当に拍動しているか疑わしいほどに締め付けられ、まったく頭に血液を送ってこない。顔は青ざめ、脚はがたがたと震えている。
なんども品々を確かめて、それが彼女らの物でないことを自分に言い聞かせなければならないほど、冷静さは遠くにあった。
「──────────。」
そしてレダは見つけてしまった。
中身がほとんど残ったまま、叩きつけたように破壊され、血で赤く染まった大鞄を。
イノンが身に着けていたはずの、大鞄を。




