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撤退

 グレスが右に左に跳ねまわるのを、アイオスは横目に捉えていた。

 アイオスは繰り返される氷結の吐息(ブレス)とその治療で少しずつ傷つき、飛竜は無傷のままだった。


「ぐッ……!」


 アイオスの空中突進は、再び飛竜の尻尾に叩き落とされた。

 ほぼ打つ手のない地対空戦。知力溢れる竜種はすでに一直線の剣を完全に見切り、危なげなく迎撃して見せた。

 岩肌にぶつかったアイオスの背に、痛みと汗が流れる。


(踏み込むタイミングまでバレている。ほんの数度切り込んだだけだというのに……)


 深部階層の未発見モンスター、威力も俊敏さも一級品。単独での撃破の可能性は、飛行特性も相まって限りなく低い。

 それでもアイオスは剣技の式句を詠唱した。

「【黒き邪悪を我が剣が拓く。続け、幾千の誉れある勇士】」


 レイピアが真っ白な光を放つ。


 その光は飛竜の目を釘付けにし、鋭敏な野性に強く警戒心を植え付ける。

 視界端の木っ端から視線を切った飛竜は、第一級の細剣士に正対しなおした。


(魔法が息切れするまで、あまり余裕がない。逃走まで……いや)

 アイオスは、集中した魔力が霧散して剣技が失効する直前まで崖を走り、再三飛竜に飛び込んだ。


(逃げ切れるのか?この未知の魔物相手に)


「【白閃剣(ヴィラナシュ・カルド)】ォッ!」


 剣が虚しく空を切る。ひらりと交わした竜は、体をうねらせ鞭のように鋭く尻尾を打ち込んだ。

 アイオスは防御不可の姿勢から此岸に叩きつけられる。


「うがっ……」


 ゆっくりと落下していく小さな体。それは拓かれた深淵(ダンジョン)の中ではあまりに矮小で、無力だった。


(痛い……)


 緩やかに体を反転させ、手足を着き転がって衝撃を殺す着地。打たれた体、50mの落下を請け負った手足と背中がずきずきと痛む。

 アイオスは高等回復薬(ハイポーション)を飲みながら、入り口の横穴の方を振り返った。

 既に四人を運び終えたグレスが、次の指示を待っていた。

「よくやった、グレス。手分けして運ぼう」

「ああ!」


 イノンとモナベノをグレスが、ジェノーとボンドをアイオスが担ぎ、急斜面を上る。


「この横穴は、あの竜の獣道だったんだな……」


 走り去る。

 不気味な青い洞窟の奥から、竜の声がクオンと響いた。

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