番外篇 双子と王立魔術院
王立魔術院に関しては、アルベルト・ローランドが筆頭魔術師に就任したものの、完全に混乱が収まったとは言いがたかった。
アルベルトが筆頭魔術師に就任したこと、そしてレイラ・デルフィーノがレイ・フールと共に消えたことで序列三位と十二位が空席になってしまったのだ。
これに伴い、自動的に序列は繰り上げられ、結果として十一位と十二位の席が空席となった。
「……それで、序列決定のために選考会が開かれたのよね」
「……そうだな」
「これは予想していた結果?」
「いや、ここまで二人が優秀だとは思ってもみなかった」
結果として、序列十一位と十二位にはローランド侯爵家の双子、ジルベルト様とミラベル様が就任した。
年齢制限はないものの、王立学園の一年生が序列魔術師として就任するというのは前代未聞だった。
「筆頭魔術師であるあなたが口をきいたという口さがない噂が出回っているわ」
「うーん。噂はそのうち消えるだろう。なんせ、驚くほど二人は優秀だ」
確かに、その色合いだけでも強い魔力を持つとわかる二人。
紫がかった黒髪とアメジストのような瞳のジルベルト様。
アルベルトと同じ黒髪に金色の瞳のミラベル様。
二人は属性が被っていないが、二人揃えば闇属性以外の全ての魔術を遣うことができる。もちろん一人一人でも完璧なほどの能力を持つ二人。けれど揃ったときは……。
「アルベルトは、二人を相手して勝てる?」
「まだ、負けないだろう」
それを聞けば、やっぱりフール様のすごさが際立つ。
生家の後押しもなしに、あれだけの長い期間その地位にいたのだから……。
(年をとらないというのも大きいわね……)
高位貴族たちは、今もフール様の不老の秘密を知ろうと血眼になっている。
もちろん、いつか私以外に闇の魔力だけを持つ人が現れる日まで、その方法が日の目を見ることはないだろう。
「兄様! 姉様! ほら、祝いの席に遅れるのは良くないよ!」
「もうそんな時間……?」
「二人一緒だとすぐに時間が過ぎてしまうんだね……」
生温かい視線、ジルベルト様は私たちを揶揄うのがとても楽しいようだ。
アルベルトがにっこり笑って私の頬に口づけをするとジルベルト様が口をとがらせる。
「完璧な兄様が、表情を崩すのが良いのに……。つまらないな」
「……お前の思い通りになると思うな」
「ふん。悪いけど、僕が筆頭の席に着くその日まで、しっかり他の人に奪われないように守っておいてよね!」
「ふん……。うん……? シェリアとのんびり隠居生活……? それもいい」
「……はあ。ほら、早く行こう」
がっくりと肩を落としたジルベルト様。
本当にこの兄弟が疎遠だったなんて嘘みたいだ。
何やら瞳から光を失って考え始めてしまったアルベルトの手を引いて立ち上がらせる。せっかくのお祝いなのだ。遅れてしまうのはやはり良くないだろう。
「アルベルト、行きましょう?」
「そうだな……」
アルベルトが嬉しそうに微笑んだ。
やはりアルベルトも、ジルベルト様とミラベル様がその能力を周囲に認められたのは嬉しいようだ。
「あと三年か? 待っても五年だな……」
「何の話?」
「もちろん、延期になっている君との新婚旅行の話に決まっている」
「……」
筆頭魔術師の仕事はあまりに多岐にわたっていて、アルベルトは忙しすぎてほとんどお屋敷に戻ることも出来ずにいる。
今日は本当に久しぶりに戻ってきたのだ。
もちろん、王立魔術院ではいつでも会うことができるから、三年も会わずにいたことを思えば雲泥の差ではある。
(でも、そうね……。二人きりで新婚旅行なんて素敵よね)
そのときを想像するととても幸せな気分になる。
それまでは、仕事漬けの毎日になりそうだけれど……。
そして、アルベルトと手を繋ぎ向かった食堂には、幸せな笑顔があふれていた。
けれど、私たちはまだ知らない。その頃には家族が増えて新婚旅行はもっとずっと先にしか実現しないことを。




