表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/69

王立魔術院 2


 私たちは3人、横並びになった。

 王立魔法院の制服を着た2人に挟まれたドレス姿の私は明らかにこの場にそぐわない。


「筆頭および序列1から12位が揃ったことを確認した。これにより緊急会議を開催する。ここで決定したことは、王立魔術院の総意と見なす。序列3位と12位は席に座るように」


 レイラ様がさっさと向かって右側の入り口近くの席に座る。ということは、アルベルトの席は向かって左の3番目なのだろう。


(アルベルトが序列3位だなんて聞いてない!!)


 けれど、確かに筆頭魔術師であるフール様との近しい関係。しかも、筆頭魔術師を幾人も排出したローランド家の次期当主なのだ。

 やはり自分と住む世界が違いすぎて、震えそうになる。


(でも、レイラ様は王立魔術院に所属すらしていなかったはず)


「アルベルト、座りなさい。シェリアはこちらに」


 なぜかフール様の隣の席を勧められた。

 アルベルトの機嫌が絶対零度になった気がしたけれど、周囲には気が付かれていないようだ。


 そのまま、アルベルトと私は別れて席に座る。


「さて、序列12位の交代に続き、連日の緊急会議開催など前代未聞」


 アルベルトの左隣の男性が口を開いた。

 彼はデルフィーノ公爵家の派閥に属する。


 私でもわかる。この席は、デルフィーノ公爵家とローランド侯爵家の二派閥に分かれている。

 たった一人、その席に座るフール様を除いて。


(フール様の実力がいかに高いかわかるわ……)


 そう思いながら隣の席に座ると、会議室の視線がこちらに一手に集まる。


「さて、そろそろ引退を考えていてね」


 いきなり本題に切り込んだその言葉に、会議室は静まり返った。


「と言っても今すぐというわけではない。後継者候補にアルベルト・ローランド、レイラ・デルフィーノ、シェリア・ウェンダーの三人を指名する」


 会議室がざわめいた。

 一人の男性が勢いよく立ち上がる。


「アルベルト・ローランドはともかく、レイラ・デルフィーノは水属性の魔力しか持たず、魔法の才能も足りず幼い頃に候補から外されたはず!」

「ああ、だが彼女は成長し序列12位をその実力で奪った」


 再び静まった会議室。


(レイラ様は、初代筆頭魔術師の記憶を持っているのだもの。当然と言えば当然よね)


「だが、しかし! シェリア・ウェンダーは確かに学園在籍中は名が上がっていたが魔力を失ったと!!」

「ほら、見てご覧よ? 彼女にあふれる魔力を」


 私の色合いを見た男性が押し黙った。

 確かに今の私は、以前のように青みを帯びた黒髪と深い青の瞳をしている。


(一目で魔力が強いとわかる色合い……。それだけでこんなにも私を見ている周囲の視線は違う)


 けれど、私がそのことに何かを感じることは無い。それよりも今、気になってしかたがないのは……。


(アルベルトが令嬢たちが歓喜の悲鳴を上げるような美しい微笑みを浮かべている!! 機嫌が悪い!! アルベルトは、間違いなくとても機嫌が悪いわ!?)


 おそらく、フール様はアルベルトの心中を察しているのだろう。わざと私の肩を引き寄せて妖艶すぎて魔力全部抜き取られそうな微笑を見せた。


(……そろそろ、この空気を何とかしてほしい)


 その時、金色の巻き髪を揺らして救世主が立ち上がった。そう、レイラ様だ。


「時間の無駄よ。私、早く研究を再開したいの」

「――そうだね。さて、闇の魔力を持つ彼女には、あの部屋を与えようと思う。異論は?」


 誰一人手を上げなかった。

 もう、手がつけられないほど美しく氷の刃のように微笑んだアルベルトは、状況を正確に理解しているに違いない。

 けれど、アルベルトが反対しないということは、私にとって悪いことではないのだろう。そう信じたい。


 そのあとも会議は続いた。

 次期筆頭魔術師候補については、持ち帰って検討したいと言う意見が大半だった。

 けれど、私が部屋を持つことについて反対した人は誰もいなかった。


「でも、私が部屋持ち……?」

「そ、これについては誰も反対意見はないみたいだね? そもそもあの部屋は、闇の魔力を持つ人間にしか活用できない。無駄にしておくより良いだろう」

「えっと、どんな部屋ですか?」

「……初代筆頭魔術師の部屋だよ」

「はい!?」


 こうして私は王立魔法院に部屋を持つことになった。『部屋持ち』それは、王立魔法院に正式に所属していることを意味することくらい、いくら私でも知っているのだ。しかもその部屋は、初代筆頭魔術師の部屋だという。


「レイラ様……」


 けれど目の前に、部屋の持ち主の記憶を持った人がいるのに、私が使っていいのだろうか。

 恐る恐る視線を向けると、レイラ様はニッコリと私に微笑みかけた。


「いいんじゃない? 記憶があっても、私は水属性だもの。あの部屋で魔法は使えないわ」

「魔法が使えない……?」

「行ってみれば分かるわ」


 それだけ言うと、レイラ様は他の魔術師たちとともに退室してしまった。部屋には、私とアルベルト、フール様だけが残される。


 こうして私は正式に憧れの王立魔法院に所属が決定した。曰わく付きの初代筆頭魔術師の部屋持ちという肩書きとともに。



最後までお付き合いいただきありがとうございます。下の☆を押しての評価やブクマいただけるとうれしいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ