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使い魔 1


 アルベルトの案内で、図書室の奥へと進む。

 図書室の奥には、グリーンを基調にした読書スペースが設けられていた。

 たくさんの木材が使われて、落ち着く雰囲気だ。


「この場所は、君専用だ。自由に使ってもらって構わない」

「えっ」

「……不服か?」

「そんなわけないわ! とても素敵……だけど、あまりに待遇が良すぎない?」

「君のために用意……。いや、禁書を扱うんだ、専用のスペースが必要だろう」

「それはそうかもしれないわね」


 ローランド侯爵家は、代々筆頭魔術師を輩出している魔術の大家だ。

 禁書指定されていても、特別に所持を許可されているのだろう。


「ところで、魔力がないと魔術書が劣化しないってどういうこと?」

「……研究段階ではあるが、魔力を持つものが魔術書に触れると、魔法が発動しないまでも魔力が流れ込んで劣化させてしまうらしい」

「そうなの……」

「驚かないのか?」

「だって事実、他の本よりも魔術書は劣化するのが早く、古いものほど現存数が少ないわ。何かしら理由があるという仮説は理解できるもの」


 もしそうなら、確かに魔力がゼロになってしまった私は、ここにある魔術書の管理に向いているのだろう。


「確かに、都合がいいわね」

「っ、それは……」

「……ありがとう、アルベルト。声をかけてくれて嬉しいわ。実は家を追い出されてしまって、困っていたの」

「……知っていた」

「さすが、筆頭魔術師に一番近いと言われているだけあって、情報が早いわね」


 アルベルトは、王立学園を卒業してからの3年間で、階段を駆け上がるかのように出世した。

 今や一番筆頭魔術師に近いといわれるほどだ。


(ローランド侯爵家の力を使って出世したなんて噂も聞くけれど、私はそうは思わないわ)


 アルベルトは、本当に努力家で、しかも才能がある。いつも喧嘩ばかりしていたけれど、心の中では彼のことを尊敬していた。


(尊敬というより、私はきっとアルベルトのことが……)


「シェリア、これを読んでみてくれないか」

「はっ、はい!」

「……どうしたんだ、慌てて」

「それはその……。えっと、この本を読めばいいのね?」


 首をかしげたアルベルトから慌てて視線を逸らして、魔術書に視線を落とす。

 そこには難解な文字が書かれている。


(古代語ね。読めなくはないけど……)


「特別なインクが使われているようで、魔力が流れ込むと文字が消えてしまうんだ。恐らく使い魔との契約に関する内容だと思うんだが……」

「そうなのね……」


 道具にしても、人にしても、魔力がないなんてあり得ない。だから、この本を読むことができるのは、私だけということになる。


 そっとページをめくる。


「使い魔は、本来であれば主になる人間の呼びかけにしか応じない。だが、魔力なき者の血液と仲介者の血液を介して魔法を発動すれば、再び出会えるだろう」


 口に出して読んでみる。


「予言書みたいにあえてぼかして書かれているようで、少々わかりにくいわ」

「やはりそうか……」


 アルベルトは、なぜか納得がいったようにひとつ頷くと美しい細工のナイフを取り出した。

 そして、自分の指先に小さな傷をつける。


 血液がポタポタと本に落ちると、パアッと淡い金色の魔法陣が浮かんで消えた。


 


 


 

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