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友人と家族 2


 ローランド侯爵家のお屋敷は、実家よりもよほど家のようだ。

 いつも一人、誰かいるときには罵られるか仕事を押し付けられていた。


(でも、この場所ではすべてが違う)


 ドレスはいつだって新しくて、同じもので良いと言っても次々に増えるから着るしかない。


「見て、まるで泉の精霊みたい」


 鏡の前には、淡いブルーのドレスを着た私がいる。あまりに色がないから、濃い色のドレスばかり着てきたのに、用意されているドレスは淡い色が多い。


「ミラベル様こそ、美しいです」


 ミラベル様の黒髪に金色の瞳は、兄であるアルベルトとお揃いだ。


「あら、美しいお姉様に褒められると、なおさら嬉しいわ。でも、私ってキツい顔をしているでしょう?」

「……それは」


 確かに猫のようなつり目がちの瞳をしたミラベル様は、黒に金色の瞳も相まって少々、いやかなり気が強そうに見える。


「ちょっと、こちらに来て下さい」

「え?」


 アルベルトに支給してもらった魔力入りの魔石。

 ローランド侯爵家の便利な道具はすべて魔力がなければ使えない。でも、この魔石を使えば私にも使いこなすことができる。


 こうして髪をまっすぐに伸ばして……。


 ミラベル様のクルクルと巻かれた髪がまっすぐになっていく。

 その髪をサイドで編み込んで、白い小さな髪飾りをつける。


 最終学年のミラベル様が、王立学園の制服を身につける。


「はわわ、清楚!」


 そのまま、つり目がちの瞳を少し垂れ目に見せる化粧をして、そのほかは色を控えめに、少しだけ唇にのせた淡いピンク色。


 そこにいたのは、清楚な美少女だった。

 いつも、きつめのメイクをしていたミラベル様。

 それはそれでとても美しいけれど、印象ががらりと変わる。


「素敵だわ……!!」

「……ありがとう、お姉様」


 はにかむ姿まで愛らしい。家族思いのミラベル様がとても優しいことを私はよく知っている。

 そこに、激しく扉を開いてジルベルト様が飛びこんできた。

 紫色の瞳と紫がかった黒髪のジルベルト様は、アルベルトに良く似た美貌だ。


(色合いが違っても、一瞬だけあの日が帰ってきたみたいに思える)


「わっ、誰!? えっ、ミラベルか!? うわ、化けたな」

「な、なな!?」


 けれど、アルベルトならそんな言葉決して言わないだろう。


(ん? ……学生時代のアルベルトなら、絶対に同じようなことを言って私を怒らせていたわね)


 信じられないことに、あの頃からアルベルトは私のことが好きだったという。


「と、いうことは、ジルベルト様はミラベル様が大好きなのですね」

「「は!? そんなわけない(です)!!」」


 振り返って怒る表情まで、仲良し双子の二人は息ピッタリだった。

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