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009


 ……。

 この調子で材料や食料を半ば詐欺のような手段で次々とゲットしていった。


 だが、最初は良かったこの手段も二週間がたち三週間がたち雪が振りはじめた頃、街の住人は僕の行動を訝しみ始め、失礼なことに様々な問題を起こす詐欺師として噂され始めていた。

 確かに少し騙したりしたかもしれないけど…それもこれも世紀の大発明のために仕方なくやったことだというのに…少しくらいは大目に見てほしいものだ。


「なんだよ、良いじゃないか!水の中でも消えないマッチ!すごいだろっ!」

「だからウチは換金屋じゃねーっつてんだろ!」


 橋の入り口にある露店のお兄さんに、実演販売を試みる。


「そんなこと分かってるよ!金をくれって言ってないだろ?コイツとそのサンドウィッチを交換してくれるだけでいいからさ!」

「そいつは無理だ、この前の温かくなる鉄の塊も透明人間薬も全自動砂時計ひっくり返しマシンも全部ガラクタだったじゃねーか!!」

「そう言うから今回は実演してるんだろ!ほらっ!消えてない!すごいでしょ?」

「うーんスゲーけど…今回のはいまいち使いどころが分かんねーんだよなぁ……とにかく帰った帰った、お前ほかの店にも同じようなことしてるだろ?最近妙な噂ばっかり聞くぜ?騙された―だの、怪我させられた―だの、盗まれた―だの、お前さんまだ若いんだから、そんなイタズラばっかしてねーで真面目に生きろ、な?」

「………もういいっ!」


 僕は仕方なく踵を返し地団駄のように足をわざと鳴らしながら大股で家へと帰っていく、だが、その様子をアイツらに見られているかもしれないというリスクを僕はもう少し考えるべきだった。


「あっ!あれ見て下さい!ヒューズですよっ!」

「仕事サボり始めてから噂されてますよね」

「何してんだ、あいつ…」


 ビームたちは道の端でさっき買ったのであろう、ビールと熱々のソーセージを頬張りながら、仕事を無期限でサボっている僕の行動を稀有な目で見つめていた。

 そんなこととは知らず僕は露店を去ってからすぐ横の橋を渡り、その先にあるパン屋に入ると数秒して、筋骨隆々の店員につまみ上げられ外へと放り出される、イライラしていたので少し汚い言葉をを大声で叫び、また道を歩き始める。



 家へと着くと雪を払い分厚いコートを脱ぎ捨て、以前より荒れ散らかりほとんど床の見えない床へと倒れこむ。


グゥウウウ…。


「発明は楽しいけど…お腹減ったなぁ、もう二日も食べてないもんなぁ…そもそもの話、材料もご飯もこんなことして盗まなきゃいけないのは金がないからだろ?まじめに働けかぁ…それが出来れば苦労しないんだけどさ、はぁ…それにしてもお腹減ったなぁ…」


 天井を見上げ、隙間風を受けながら本や紙が散乱した床で少しでも温まるようにと、余分に作っておいた温まる鉄の塊を起動させ、手でさする。


「金かぁ……………あっ」


 僕は勢い良く起き上がると、コートを再び手に取り外へと走る。

 夕暮れ時、街中まで来ると郵便局の前で身を潜める、数十分がたち一台の馬車が郵便局の前で停止した、中から職員と思われる男が出ると後ろに乗せた大量の手紙を中へと運び込む。

 そのタイミングを見計らい、僕は馬車へともぐりこみ、大量の手紙から何枚かを抜き取るとそそくさと退散した。


 空気が冷え込み、静まり返る夜。


 家へと帰りる途中妙な胸騒ぎが心の中をくすぐる。月が雲へ隠れ、街灯の火は消え、ゴロゴロと怪しい雲行きに、ますますその予感は強く、確実なものになっていく。

 これは、僕へのバツなのか、今までの行いの清算なのか?やめてくれ…もう少しなんだ…もう少しで完成なんだ、それからでもいいじゃないか!今までの人生さんざんだったんだ…少しくらい、少しくらい僕の思い通りに動いてくれたっていいはずじゃないか!!


 寒く暗い道を走りながら、勘違いであってくれと願う僕を裏切り、その飛行機を置いてある小屋に、ランプなど無いはずの小屋に光が灯っているのを見つける。

 血の気が引き、急いでそこへ向かって走る。


 物置小屋へと着くと、何人かの話し声が聞こえ、やはり中に人がいるようだと確信した。勢いよくドアを開けると中へと飛び込んでいく。


「だれだ!」


 中には…………ビームたちがいた。


「あっ!帰ってきましたぜ!」

「やい!ヒューズ、テメェ仕事もサボってこんなところで何してんだ!」


 バキィ!

 取り巻きたちが詰め寄る中、後ろからズカズカと歩いてきたビームに左頬を思いっきり殴られ、設計図を置いていた椅子へと吹っ飛ばされ尻もちを着いたような体制で倒れこむ。


「テメェ!これどういうことだ!!」


 予想していなかった程の怒りに取り巻きたちも、しどろもどろでどうしていいか分からず、ただ立ち尽くしていた。

 そんな反応を他所にビームは僕の胸倉を掴み立ち上がらせる。



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