【完結】
『爺ちゃん見て!出来たっ!出来たよ!!』
『んー?こ、これは…』
『飛行機の模型!爺ちゃんが作ってるの見て作ったんだ!』
『図面を読んで…これを作ったのか…!?』
『うん!どう?どう?』
『ハハッ…ハハハッハハハハハハハァ!!!!すごい!すごいぞヒューズ!天才だ!!私の孫は世界一の天才だ!ブウウウウン、ハッハッハッ!!!!』
ジュールに模型を渡し抱きかかえると、そのまま高く持ち上げ小屋の中をぐるぐると回りながら、移動する。
ヒューズは手に持っていた模型を風を切るように波打たせ、まるで本当に飛んでいるかのように演出する。
『ブウウウウン!』
『ブウウウウン!』
そのまま崩れ落ち、ジュールの上にかぶさるようにヒューズが倒れこむと、尚も笑い続けるジュールに頭を撫でられ、つられて無邪気に笑うヒューズ。
ハッハッハッハ!ハーーハッハッハハァ!!!!
……………バンッ!
ドアが開かれ、そこからサイモンとその子供である…ビームが入ってくる。
『やあ、何だか楽しそうだね』
『あー!ヒューズずるい!僕もッ!僕もやるー!!』
ビームはヒューズの真似をして、ジュールの胸へとダイブする。
『あぁ…!よしよし、ビームお前もこっちに来なさい良いものを見せてやる』
手製の椅子へと腰かけると、やけに厚く塗られた油絵に描かれた、巨大な羽を生やしたマシンに複数の窓が付けられ、トランクを持った人々が笑顔でその機械に乗り込む絵が描かれていた。
『私は鳥がうらやましい…空を飛んで当たり前だと誰もが疑わないからだ』
『……私もいつか大空へ行くだろう、人類が誰もが到達することのできる未知の領域へ』
『任せたぞ…ヒューズ、ビーム』
『…?』
ビームはよく分からないといった表情で首をかしげるが、ヒューズは身を乗り出し手を上げ、明るく無邪気な声で宣言する。
『うん!僕やるよ!この手で空を飛ぶのが当たり前な時代を作ってみせるよ!』
『あっ!ぼっ、僕も!僕もやるっ!!』
それにつられたのかヒューズの真似をするように、大きく手を挙げるビーム。
ブウウウウウウウウゥゥゥン…ゴッ…ボォオオン!!!!
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ブロロロロロロロ…キキー。
郵便が木造の町はずれにあるボロい作りの一軒家の前に止まる。
ドンドンドン…。
扉を叩くが返事はない。
「そこの変人なら居ねーよ」
後ろを振り返ると黒髪にオールバック、きつい目をした、やけに高級なスーツに身を包んだ紳士がそこには立っていた。
「それ、俺が届けといてやるよ」
…。
‐現在‐
1911年6月14日。
快晴。
南東からの平均風速3〜5メートルの穏やかな風。
「おい変人科学者!今何時だと思ってんだ!!今日は飛行テストって言ったろ!誰が金だしてやってると思ってんだ早くいくぞ!」
少しウェーブの掛かった茶髪に、丸眼鏡をかけ白衣を着た額に凄まじい火傷痕を残した青年は振り返り、丘の上から差し込んだ太陽の光を受け、心底楽しそうに微笑むと。
「うん!」
そう言って小走りでビームのもとへと向かっていく。
最後まで、読んでいただきありがとうございます、トネリカズアキです。
今回の短編はメインで執筆中の
~魔王軍のお荷物〈最弱クズ魔族は〉巨乳女騎士を体目的で助けたら裏切ったと勘違いされ、難攻不落の魔王城から脱出するために〈魔王様を出し抜くようです〉~
が多くの方に見ていただけているということで書いた、記念作品的な短編でして、気になった方は良ければこちらも読んでいただけるとありがたいです。→ https://ncode.syosetu.com/n2773ig/