015
「あ、あのぉ…ヒューズのことなんですがねっ、何とか許してやっちゃくれませんかね?」
「駄目です」
「でっでもよ、ほんのまだガキだぜ?それに…たぶん出来心っつうかよ、なっ?」
「あなたは彼の何なんですか?」
「まぁ、いうなれば被害者だな」
「ではあなたのいる場所はこの列の中になんじゃないですか?」
「いやー、そうっちゃそうだが…アイツの発明品は結構面白いもんばっかでさぁ…なんつーか生活のために涙ぐましいっつうか…」
「何が言いたいんですか?」
「それはー…」
「今回は大目に見てやってくれっつうことだ!!」
十人の煤だらけでタンクトップ姿の帽子や、汚れた包帯、それにムキムキな男たちが、裁判官率いる列の前に立ち、道をふさいでいた。
「俺たちはよぉいつもあの子の発想に助けられて来たんだよ」
「確かに今はちょっと悪いこともしたかもしれないけど…それ以上に人の役に立ってることも事実なんだ」
「どうか、大目に見てやって下さい!!」
作業員たちは横一列に並び頭を下げ、裁判官に頼み込むが、回りからはヤジが飛び交い、特に列をなしている人々からは物を投げられ最底辺の仕事をしている作業員たちは凄まじく罵られる。
だがそれでも下がらず、裁判官の前に出るともう一度深々と頭を下げた。
「………。」
「おお、神よ、どうかサタンに見入られしこの薄汚い者たちを…どうか救いたまえ」
裁判官は作業員の肩に手を置くと、厳しい表情で言う。
「……これ以上邪魔をするなら、法の名のもと、ここにいる全員ブタ箱行きです」
「……。」
肩に手を置いた裁判官は少し力を入れ、作業員を退かすと自身の持っていたハンカチで肩に置いていた手を二、三回拭き、またスタスタと歩み始める。
作業員たちはその場で跪き、地面を見ながら小刻みに震えていた、そんな様子を列の最前列辺りに紛れ込んでいたビームは横目で見ながら、同じペースで歩き続ける。
町を抜け、郊外のぼろい木造の一軒家、小屋にはいくつか補強した跡が残る、その家の玄関に、多くの人が集まり、押しかけて来た。
裁判官は、ドアノックのついていない扉を数回たたくと、大きな声で家の主を呼ぶ。
「ロック・ヒューズさん!こちらサイモンシティ中央裁判所です!現在あなたには小切手の偽造および詐欺罪として裁判所へ召喚命令が出ています!!来ていただけますね!?……ヒューズさん?ロック・ヒューズさん!?」
ドンドンドン
と、ドアを何度も激しく叩くが出てくるどころか、何の物音もせず、裁判官はドアを壊し中に入るが、やはりそこには誰も居らず、大量の本や資料が散乱しているばかりだった。
「ゴホッ…ゴホッ…い、居ませんね」
「もしや、逃げたのでは?」
「……。」
その様子を後ろから見ていたビームは、突然走り出し小屋を開けると、そこには誰も居らず、その小屋の物は家と同様凄まじく散乱していたが、中央だけは妙にキレイになっており、まるで今まであったものが動かされ無くなった時のような…そんなキレイさを物語っていた。
「クッ…!!」
ビームは再び走ると今度は家の裏を回り、小高い丘を目指した。