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013



 ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…


 カランッカランッ…

 僕は手に持っていたバールを床に滑り落とすと、血だらけの体を抑えながら、跪き、そのまま四つん這いの体制まで崩れ落ちる。


 プッ…ゴホッ……ハァハァ…

 正面を見ると、大の字になって口からプッと血を吐き寝そべっているビーム、そしてその横でウンウンと唸りながら、お腹や、下腹部を抑え悶えている取り巻きたちも倒れていた。


「こっ、この…こんなことしていいと思ってるのか…」


 一人の取り巻きがそんなことを言うが、返事は誰からも帰ってこない。

 夜の物置小屋、ビームたちが持ってきたガス式のランタンだけが、辺りを照らし、隙間風の入るこの小屋は時折ギシギシと風にあおられ、静かな沈黙を作り出していた。


「で…出ていけ…」


 僕は再びバールを手にし震える足でゆっくりと立ち上がると、バールを引きずりながら後ずさる取り巻きたちの間で仰向けで倒れているビームへと近づいていく。

 ビームは倒れながら、手足も動かさず、顔すらこちらに向けずに問いかける。


「…お、ゴホッ…お˝前は、コレのためにどこまで残酷に…な˝れる…?」

「……………いま…君を殺すくらいは」


 ヒッ…。

 ビームの後ろで取り巻きたちが恐怖に引きつった声を上げ、さらに後ずさりを加速させる。


「狂ってる…お前は間違いなくあのキ〇ガの孫だ!!」

「……ハッ…こんなにも人を変えちまうなんてなぁ、やっぱりこれは、悪魔のマシンだ…」


 そういうとビームは自分たちの持ってきたガス式のランタンを手に取り、先程かけられた鉄粉めがけて投げつける。


「やめろ!!!!」


 ランタンからガスが漏れだし、鉄粉に火が着火され同時に爆発すると、小屋のいたるところに燃え移り、多くの可燃性の物が収納されたこの小屋にはあっという間に燃え広がる。


 ビームは取り巻き二人に抱えられ、この場をいち早く去る。

 僕はほとんど反射的に消火活動を開始し、布をかぶせ火の消火に当たっていたがそれでは間に合わないと考え、辺りを見まわし、転がっていた手製の消火器を使って消火していく。

 

 徐々に火の勢いは弱まり、壁から天井まで伸びていた火柱は消火され、後にはところどころ煤のまじった壁や机、それと、ボロボロの飛行機がそこにはあった。


「はぁ…はぁ…」


 緊張が取れたのか、再び床へと寝転がると、喧嘩と火の消火で物の位置が大きく変わり、露出した発明品の山から、一つの模型が顔を出しているのに気が付くと、その模型へと手を伸ばす。








『爺ちゃん見て!出来たっ!出来たよ!!』

『んー?こ、これは…』

『飛行機の模型!爺ちゃんが作ってるの見て作ったんだ!』

『図面を読んで…これを作ったのか…!?』

『うん!どう?どう?』

『ハハッ…ハハハッハハハハハハハァ!!!!すごい!すごいぞヒューズ!天才だ!!私の孫は世界一の天才だ!ブウウウウン、ハッハッハッ!!!!』


 ジュールに模型を渡し抱きかかえると、そのまま高く持ち上げ小屋の中をぐるぐると回りながら、移動する。

 ヒューズは手に持っていた模型を風を切るように波打たせ、まるで本当に飛んでいるかのように演出する。


『ブウウウウン!』

『ブウウウウン!』


 そのまま崩れ落ち、ジュールの上にかぶさるようにヒューズが倒れこむと、尚も笑い続けるジュールに頭を撫でられ、つられて笑うヒューズは無邪気な笑顔を受かべる。


 ハッハッハッハ!ハーーハッハッハハァ!!!!














 焼けただれた模型を手に取ると、それを胸へと押し付け小屋の中で丸まり…薄れゆく意識の中、あの笑い声だけが僕の心を満たしていった。


「…………もう一度ほめてよ爺ちゃん…」













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