010
「テメェまさか忘れたわけじゃねーだろ?なぁ、コイツはどういうことだ、説明しろ!!」
「ビ、ビーム、君には関係ないよ」
「なんだと…」
「ビ、ビームさんっ!こ、これが何か分かるんですかい?」
「…」
そういうと、取り巻きたちは物置のほとんどを占拠している、大型のマシンを指さしビームに訪ねる。一拍の間の後さらににらみつけ答えを返す。
「そいつは飛行機、流れるように空を飛ぶ…マシンだ」
「なっ…」
「そ、そんなことが…」
驚嘆の表情を浮かべる取り巻きとは裏腹に、ビームの怒りはさらに激しく燃え上がる。
「…あぁ、出来るはずねぇ、そんな…そんな夢物語」
「出来る」
そう言い切るとビームは再び僕を殴りつける。
「いい加減にしろっ!そんなもの、この世の何処にも存在しない!出来ねーんだよ!!」
そういうとビームは留め金で繫がれた飛行機の胴体部分を蹴り上げ、それに気が付いた取り巻きもノーズギアや壁に立てかけてあった主翼を蹴りつけ、さらに椅子やパイプを使い容赦なく機体を壊していく。
バキィ…ドカッ…ガンガン
僕は頭が沸き立つ感覚を覚えた、全身の毛が逆立ち、気が付いた時にはビームにとびかかっていた。
「止めろォォオオオ!!!!」
ビームを掴みそのまま倒れこむと、もみ合いになり最初はマウントを取り二発三発と殴っていたが、取り巻きたちが攻撃を阻止しようと服を引っ張った隙にビームが起き上がりマウントを取り殴りかかられる、顔をそむけ何とか当たらないように両手をあげてガードするが、その両手にパンチが当たりもう限界だと思ったその時、顔の数センチ先に温かくなる鉄の塊が落ちており、それを手に取ると、地面に叩きつけ中から出て来た、鉄粉をビームへと掛ける。
よろめいたその時、自分の上からビームを退かすとフラフラと立ち上がり、辺りに落ちていたスパナや木材、本などを投げつけ少しずつ後退していく、それを見たビームはスタスタと歩き僕のの肩をつかみ振り向かせ大きく振りかぶり殴る。
今度も発明品の山に倒れこむみ、その肩をつかみ同じように殴ろうと振り向かされたところ、僕は割れた砂時計の硝子部分で額を攻撃し血を流しながらビームは後ずさる。
「あ˝ぁあ˝あ˝っ!」
「はぁはぁはぁ…」
さらに、取り巻きたちが捕まえようとこちらに来るとそれを肥料から作った手製の消火器を吹きかけ、ひるませる。無くなったそれを取り巻きたちに投げつけると、手元にあったバルブを拾い上げそのまま二人を殴りつける。
「ぎゃっ!!」
後方に倒れこむ取り巻き二人、荒く息を吐居ていた僕は息を整えながら静かに立つと、ビームへと向け話しかける。
「はぁはぁ…ぼ、僕は今まで、化学は誰かのためにあるものだと思ってた…それが、爺ちゃんとは違うと証明するための…みんなに受け入れられる手段だったから」
「……じゃあ今のお前はなんだ」
「思い出したんだ…化学は発明は、こんなにも面白い!あの日から、あの出来事から逃げるように生きて来た…だけどもう止めたんだ、自分に嘘をつくのは」
「………………ふざけるな…俺は認めねーぞ、テメーも、テメーのジジイも!こんなガラクタも!ゼッテェ認めねーぞ!!!!ヒューズ!!」
「ビーム!!!!」
1888年5月6日
『春の陽気に包まれて、やってまいりました科学の祭典!!サイエンスファクトリーィィイイ!!』
ヒュ~~ボンッ…ボンッ!
司会者がマイクを持ち、高台で博覧会の開催を合図する。
この町で過去一番の盛り上がりを見せた博覧会は、町の全てを使って行われる催しで、化学の祭典などと謳われていいるが不思議で面白い物品を集めた、半ば見せ物小屋を拡張したような物であり、街中には芸人がひしめき合い、派手な衣装に包まれた人間や露店、果ては犬や猫までも高座に上げられ新種のキメラだ何だと騒がれていた。
だが中にはちゃんとした科学者もおり、その実験の成果を見せようとこの街に集まっていた。
そして、今回のメインイベントとも呼ぶべき世紀の瞬間が始まろうとしていた。
『きゃあああ!!男捕まえて!!』