第1話 異世界なはずの場所で自分の知っている生物に出会うと不安になりますよねぇ?
※今話は挿絵がありますので、苦手な人は設定から表示しないようお願いします。
やっとのことで森を抜けた。
途中で動物の気配を感じたため、通り過ぎるのを待ったり迂回していたからだ。
いや、本能的に理解できるこの体のスペックを信じるなら、ダンプカーで引かれようがマシンガンで撃たれようがへっちゃらのはず。何なら核に巻き込まれたってケロッとしていそうである。
……もうドン引き以外の言葉が出てこないよ。
私を一体何と戦わせる気なの神様は?
そんな丈夫なのに動物ぐらいに何を~と思ったそこのアナタ。
理解できることと実践ができることはまた別問題です!
仮に突然目の前にクマが現れたとして、一度も能力の検証はおろかどれだけ体が丈夫かの実感もしていない状態でまともに動けますか?
私だったら全力で逃げるよ。
何かいける気がする!と、超ポジティブ思考で物語序盤から未知の生物に立ち向かうチート主人公くんな行動を期待するとかふざけてる。
アニメとかで見た時は考えなかったけど、どれだけ心臓に毛が生えていたらそんな行動取れるんだろう。精神構造が一般人と違うのかな? あぁ、だから主人公としての見栄えが良いのか。変に納得しちゃった。
閑話休題。
「何にもねー……」
森を抜けた先は原っぱでした。
サバンナとかイメージすればいいかも。
見たことない鳥は飛んでいるし、意識すれば草に隠れて小動物とかも存在しているけど、建造物も何もねー……
どこを目指して何をするかの方針が決めらんねー……。
「あ~~~……心の中の口調も投げやりになってきている」
グレるよ?
放任主義もここまでくるとグレちゃいますよ?
物語とかだと森とかトンネルとか抜けたら遠くに建造物が見えてそこ目指すのが定石だと思うの。わざわざこんな体にしておいて、サバイバルでもやらせたいのかな? 全ての元凶は神様じゃなくて人の不幸を楽しむ邪神の類いじゃないかと勘ぐってしまう。
「一先ずぶらぶらと歩くしかないか」
こうなったら流れに身を任せるしかない。
その辺に落ちていた木の枝を地面に立てた後、手を離した。
カランと倒れ込んだ棒の先、その方向に向けて歩き出す。
……まさか自分がこんな方法で行き先を決めることになろうとは。
というか、今更だけど私ったら無一文なんだよね。
服や靴はあるけど、それ以外の換金できそうなものが何も無い。
人里見つけても下手したら中にすら入れてもらえないじゃん……
そうやって自分のこととか神様への愚痴とか考えながら歩くことしばし、ようやく行き先を決めるのに役立ちそうなものを発見した。
「おぉっ! 川だー!」
目の前を流れる川は太陽の光を浴びてキラキラ光っているようだった。それだけ澄んでいるということだ。
つまりは――
「うわー……想像通り、いやそれ以上の美少女顔だ」
私の姿も川に反射して大まかに分かるということ。
少なくとも私の知っている人種の顔ではない。
アジア系でも、アメリカ系でも、ヨーロッパ系でもない。でも、日本人の感性からすれば10人中10人が振り向く絶世の美少女だった。
綺麗系よりカワイイ系に近いかな?
アイドルが裸足で逃げ出すレベル~なんて表現があるけど、まさしく今の私がそれだった。
着ている服のデザインは異世界風――でいいのかな。
知っているどの国のデザイン、民族衣装にも当てはまらない不思議なデザインだった。一言で表わすと異質なシンプルさ。
誰なのさこれデザインしたの……
この世界の基準に当てはまればいんだけど。
「現地人とのファーストコミュニケーションが不安になってきた。私は本当に標準なのかな? 会ってすぐ『異教徒~!』とかって襲われないかな?」
不安だけが募っていく。
だけどここでじっとしているわけにもいかない。
川の流れに沿って歩き始める。
人の町って川に沿って作られることが多いって話だし、海に出るまでの間に街の1つぐらい――いやいっそ村でもいいから存在して欲しい。
そうじゃなきゃ今度は延々と海沿いに沿って歩くことになりそう。
そうして、歩いて歩いて歩きまくった。
足は痛くならないしお腹も空かない。そもそも疲れない。さらに言うと変わり映えのしない景色に飽きも来ないという、丈夫な体どうこう以前に“人”のカテゴリーに入れていいのかと本格的に悩み始めたその時だった。
私がこの世界で初めて見ることとなる大型動物に出会ったのは。
「………………」
巨大な四足歩行の動物。長い鼻を持ち、同じく長いキバ2本を口元から生やした存在。茶色系の毛を全身に生やした見上げる大きさの生物。
それはまるで――
「…………マンモス?」
歴史の教科書や博物館でしか見たことのない生き物だった。
あれ? 正確にはナウマンゾウだっけ?
あれれ? ここ本当に異世界???
人物画超不得意だった作者にしては最低限見られるものを書いてみました。