貌無影法師・ドッペルゲンガー
『貌無き者』がハリガネさんと別れた後に成った特異点個体。
ハリガネさんの英雄としての姿に憧れを持ってしまった自然現象の一端、もう一度ハリガネさんのカッコイイ姿を見たいあまりに死ぬ運命を覆した強火オタク。
保有スキルは紐づけられている物を除けば驚異の1つのみ、むしろ1つのみで足りてしまうという部分に彼の特異点個体としての異能がある。
特異点スキル『貌のない怪物』
[何にでもなれるスキル]
[例えば憧れ、例えば恐怖、例えば恋情]
[その姿に、その者に、その存在になりたいと願い、それを叶えるために己のあり方すらも変貌させる1つの認知]
[もう一度君に会いたい、もう一度君が誰かを護る姿が見たい、もう一度……君と共に]
特異点スキルはある種『更に先へ』のようなドーピング技、使用によって不定形の光を吸収するモヤとなりその際ありとあらゆるダメージを無効化する。
尚且つこの姿は純粋でとてつもなく凶暴なリソースの塊であるため、下手に触れると生きたまま貪り食われることになる。
そしてこの姿は前述したように何にでも成れる。
それが例え神であろうと、魔王であろうと、存在すらしていない怪物であろうとも。
己の記憶が、己の想像力が、それらをあると認めていれば成れてしまう。
有り得ないほどに自由で、想像もつかない程の創造力、出生時点で特異な存在な貌無者の純粋な到達点たらしめるスキルである。
『貌無恐怖』
特異点スキルから派生されるスキルの1つ、相手が最も恐怖する存在となる。
[それは見る者によっては強大な敵や恐ろしい魔物に写る、しかしまたある者から見れば親しき者との別れが見えるだろう]
『貌無影法師』
特異点スキルから派生される己が名前を冠するスキル。相手の姿を写し、己自身との戦いを強いる。
[自分から目を逸らし、自分に向き合わず、自分を蔑ろにしてきた者にこそこのスキルは恐ろしい、憎しみの表情を浮かべて迫り来るのはかつて見捨てたはずの己の姿なのだから]
『貌無者』
特異点スキルから派生される、貌を得たという己を返上するスキル。
自身の本体である黒いモヤを無尽蔵に生み出し周囲を飲み込みながら自分の想像力を創造する。
ただ黒いだけのモヤの塊など不定形とは言わない、闇から、周囲を埋め尽くす何もかもから貌が滲み出すこの姿こそ、本当の『貌無者』としての在り方なのだ。
[これから先は何もかもが滅茶苦茶でいつ始まっていつ終わるかもわからない、何もかもが有り得る時間さ]
[日が落ちる頃、自分の後ろをじっと付け回す少し伸びた己の影や、真昼間だって言うのに木々が密集して作り出した薄暗い空間の不気味さが、どうにも怖くて仕方が無かったことはあるかい?]
[すぐに思い出せるさ]
[僕は、俺は]
[貌無影法師だ]
[腕を引かれたら逃げられない、本当の闇を見せてやろう]
単刀直入に聞かせていただきますが……つまり、貴方が見た物は何だったんですか?
「結論を焦るんじゃない、ゆっくり全てを話してやろうじゃないか……あー、まず…何だったか...」
…大丈夫ですか?
「ああ勿論、大丈夫…………すまないね、1本いいかな?」
構いませんよ、それは?
「……ああ、少し前に発見した植物でね、少量なら鎮痛作用と精神を落ち着かせる成分があるが…摂取しすぎると毒だ、中毒性がある……煙草みたいな物だな、君もやるか?癖はあるが……病みつきだぞ」
……結構、落ち着いたなら話の続きを。
「……あれは…私が森をさ迷っていた時だな、コンパスが壊れてね…木の影…ああ、確かに木だったと思う、トゥレントや擬態する生き物じゃなく……」
「その木の影が急に動いたんだ…」
「……何だその程度かって顔だな?ああわかってる、影みたいな生き物は多数確認されてるさ…ゴースト系統だってそうだ……」
「……だが、あれは違う」
……新種…ですか?
「新種……新種ね、確かにこの世の生き物を全て改名してやる!何てほざいてる私の息子に言わせれば…あれは新種の生物だ」
「だが私に言わせればあれは……全く新しいジャンルだ」
ジャンル?
「ああ……自然現象、生き物、人造物……なんだっていい、そんな雑の括りの中で…あれはきっと、自然的な循環から外れた何か……つまり…」
……特異点?
「……そうなってしまうだろうな、最終的には」
それ程に強力な存在だったのですか…?
「強力……にもなるだろうな、それでいて誰も見向きもしないくらい無力でもある」
……すみません、先程から貴方が何を言いたいのか…
「……あれは、何者かじゃない」
「……何者でもないんだ」
……何者でも…ない。
「あれは何者でもない、そして何者にでもなる……それこそあの場所は神と共にある土地だ…」
「……いつかは神にだってなるだろうさ」
「……すまないね、何分命が惜しかったものでまともに観察はできなかったんだ、それに……すぐに姿を変えて飛んで行ってしまったからね」
……はい、ありがとうございます。
「1つ言うならば……私は…あれに見られた」
「……きっともう、世界のどこかで私がもう1人…はは、寒気がする話だね……昔聞かされた怖い話であったなぁ……自分と同じ姿の奴を見たら死んでしまうって……」
「……あながち、おとぎ話でも無いのかもしれないね……」
[民族学者アンジェリカ・アイゼンベル著、『カムイ達の住む森』、巻末インタビュー記事より抜粋]
久々のこっち更新よー!
さて、今日は本編も更新しようと思っていましたが!
……申し訳ございません、私世紀末肩パッド!!
熱発いたしました!!
寝ます!!