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第8話『ルーの彼氏』

「帰ったよー」

「おかえりー! あら珍しいわねお父さん。マイが友達連れてきたわよー!」

「やぁどうも! うちの子は最近、魔法少女の漫画にはまってしまってね」

「そんなのいいの! それよりこの子の脚見てくれない?」


「これは呪術のようにも見えるが、一体これはどこで?」

「それは言えないの……」


 アンズは押し黙ってしまった。どうしたんだろう。


「それは失礼。呪術を受けたものは原因を言えないようにされることもあるし、恐らくその類のものなのかもしれない」

「どうしたものか。そう言えばカトリーナ姫が『過去の鏡』を持っていたような。それを貸してもらえるように手紙を書くから待っていて。言えないなら鏡で過去の様子を見ればいいだけの話だ!」


「カトリーヌ姫の母親は実は私の古い友人でね。取り敢えずその手紙を持っていけば借りられるから、明日にでも行ってみたらどうかな」


「アンズ良かったね。明日にでもいく?」

「ありがと……」

「私もいくー!」

「メグは明日は学校あるでしょ」

「メグは駄目だぞ。」

しょんぼりとしてこちらを睨んでいる。まだ小さいしそんなところも可愛らしく見えた。

「マイはこれる?」

「ごめん明日は大事な試験があるからいけないんだ。別の日ならいけるよ」




「アンズ大丈夫?」

「う……うん……」

「気にしなくて良いよ。お互い様じゃない」

「私つぐみに何かしてあげられた?」

「十分すぎる位もらってるよ」


 アンズの目が泳いでいる。心配しなくても私はあなたを助けるよ。私は気乗りしないアンズを急かして城の前まで一緒に来てしまった。


「お城の門が見えてきたね」

「緊張する。私たちだけで大丈夫かな?」


 お城はコンクリートの様な素材でできていて少し冷たさを感じた。魔法の世界なのだからもう少しカラフルな色が散りばめられているものを想像していたけれども、これでは中世のヨーロッパに何世紀にも渡って取り残されたようなお城と変わらないように見えた。


「おい! こらっ! 何してる? 今は隣国との戦争中で警戒体制を敷いている!」

「怪しいものではありません。これを読んでください」

「嘘をつくな! 王女に手紙などあるわけがなかろう!」

「待ってください!」

「これ以上進むと牢屋にぶちこまなければならない!」


 金属製の鎧に身を包んだ門番は私たちをけん制している。


 ──困ったなどうしたらいいんだろう。めぐのお父さんの話と全然違うし……。


「どうする?」

「やるしかないよね?」


 アンズのポケットから突然メグが現れた。


「だねっ!」

「めぐっ! なんで? いつからいたの?」

「ごめん、どうしても来たくて、アンズのポケットに小さくなってついてきたの!」

「もしかしたらパパになれば入れるんじゃない?」

「あっ、それいいかもしんない」


 お城の脇にある草むらの中にうずくまり、


「マイのパパにへんしーん」


 ──やばい慣れてきたかも。風が下の方から舞い上がり体を包み込む。七色の光に包まれる。手がごつい。足もやや長くて、目も少し見づらい。変身は慣れたけど人によっては持病がそのまま残るみたいだ。やや腰までもが痛い。



「二人はペンにでも変身して!」


 私はペンを二本摘まむとポケットに優しく差し込んだ。


 テイク2ってところだろうか、またあの門番の前にやってきた。少しドキドキしてくる。また追い返されるんじゃないかって。



「えへん、丁度この辺りに通りかかってね……」

「大賢者様じゃないですか? どうぞどうぞ!」


 さっきまでの対応とはうって変わり、門番は尊敬の念を抱いているようだ。メグのパパって有名人なのかもしれない。人なんて薄皮一枚でなんとかなるもんなんだ。顔パスのようにして中に入ることが出来た。


「取り敢えず、お姫様の部屋に向かうね」


 そう、二人? 二つのペンに話しかける。


 道中、城の中で働く人に聞きながら姫の部屋を目指す。

 ドアが薔薇で沢山のデコレーションされたような部屋。そこが姫の部屋だった。


 恐る恐るドアをノックする。


「はーい。どうぞー」

「失礼する」

「大賢者様じゃないですか? お久しぶりです」

「久しぶり。姫様今日は用がありましてここにお願いに来たのです」

「どうかされたんですか?」


流石は一国のお姫様。髪はブロンドで巻かれていてシンプルな水色のドレスに身を包んでいる。上品な立ち居振る舞いで姿勢からして綺麗だった。ただ顔が険しい。普段から怒ってばかりいるのだろう。


「娘のメグの友達のアンズの脚を治すために『過去の鏡』を貸してもらえませんか? 呪術をかけられてしまい確認するしか手がないの」

「あっ!」

「あなた誰なんです?」

「人を呼びますよ! この不届きもの!」


 ボーン


「待ってください。姫様!」

「あら、メグ?」

「本当なら父の手紙を門番に見せて入りたかったんですけど、入れてくれなくて」

「あの、ぼんくら門番ね! 後できつーく叱っときます」

「で、こちらは?」

「私は木崎ツグミです。あとはアンズです」


「残念なお話になるかと思いますか、数日前にメイドに盗まれました。なので、お貸しすることが出来ません。」


「完全に探せなくなってる?」

「申し訳ありませんが、行方が分からなくて困っているんです!」

「振り出しに戻った……」

「大変そうなのでこちらでも探してはみます。はるばる来てくれたのに。もしよかったら夕食だけでも食べていく? その間は自由にしててもいいわよ」


「助かります。私たちも探してみますね!」


「このお城の従業員から秘密を聞き出すしかないね」

「どうする?」

「それは、お姫様になったら……」

「それいいかも」


「へんしーん!」


「素敵なドレス。背中の花飾りが可愛いね」

「ツグミ、眉間のしわやばい」


「すみませーん!じゃなっかった」

「あの。そこの。うーん。慣れてない!」

「お姫様いかがなされました?」

「ごめん、一つ聞いてもいい? 最近辞めたメイドはどこ行ったか分かる?」

「申し訳ありません。知りません」

「分かりません!」

「あの人とは接点はないから」

「これもしかして姫様に問題があるんじやない? それとも真実を皆で隠しいるのかも」


「メイドにへんしーん!」


メイドの姿で歩いていると先ほどの従業員が他の同僚と話をしているのが聞こえてきた。



「お姫様は何をおっしゃっているんだろうねー。あの子が買い取りの店に売りにいったのは分かっているはずなのに……今さら何を……」


「買取りする場所? そこに向かえばあるんだね!」

「アンズなんとかなるかもしんない」





 買い取りする場所に向かう。

 買取り専門店「ルーの店」と書かれた看板が掲げられている。


「過去の鏡を売りに来たメイドを知りませんか?」

「知らないわねぇ。」

「そんなことはありません。ここしか売る場所はないんです」

「言ってるでしょ。教えられないって! 商売は信用第一なんだよ。早く帰りな!」


 困ったな。お店を出て大通りを歩いていく。


 ルーにへんしーん


「あら、ルーじゃない?彼氏は帰ってきた?」

「彼氏?」


突然声をかけられた。知り合いなんだろう。


「何いってんのよ。モンスター退治に出掛けて、あなたに宝石の付いた指輪をプレゼントするって息巻いてた彼氏のことよ!」

「あ、そうだったわね!」

「まぁいいわ! 急いでるから、またね!」


 ──どういうことなんだろう。もしかして彼氏が帰ってきてないからイライラしてる? ルーが? それとも決まりで教えてもらえないのかな? ルーを助けたらもしかしたら。


 でもどうやって? そもそも助けたとして、それが鏡に繋がるかは分からない。


「アンズどうする?」

「……」

「やれるだけやってみる?」


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