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オリバーの顔つきといい、出し抜けの火炎攻撃といい、明らかに敵意に満ちている。
さては、俺のような田舎者と婚約したと知り、激怒して娘を連れ戻しに来たのだろうか?
いや、ここはむしろ好機と捉え、オリビアの父に認められ、晴れて親公認のカップルとなってみせよう。
クライバンはそう意気込み、傷の残るいかつい顔をにんまりさせた。
「さあさあ、そんなところにお立ちになっていないで、どうぞ屋敷へお上がり下さい、これ、誰か。」
「先代国王さまとのご旅行は如何でございましたか? わざわざお土産を持って来て下さったの?」
オリビアもにこやかに尋ねる。
「何を寝ぼけたことを言っとる!」
オリバーは呑気な二人を前に声を荒げた。
「やっぱり……。お父様が私にお土産を買って来てくれた事なんてありませんでしたわね。いつもお仕事、お仕事で。」
「ま、まて、今はその話はよせ。落ち着いたら時間を作るから後でゆっくり話そう。」
「すぐそうやってごまかすんだもの。」
「まあまあ、オリビア殿。お父上も。立ち話も何でございますからどうぞ中へ。むさ苦しい所でございますが。」
「父ではないと言うに!」
クライバンは、父、オリバーに気に入られる絶好の好機を逸すまいと、雲行きの怪しくなってきた父娘の会話に割って入ったが、かえってオリバーのカンに触ったようだ。
オリバーは改めてクライバンへ向き直った。
「俺の侵入を予測していただろうに、結界も張っておらんとはいい度胸だ。俺もみくびられたものだ。
マルカム・クライバン!! 」
ギラギラした目をカッと見開き、クライバンの名を叫ぶと同時に雷がクライバンを襲う。
「わっ、わっ。」
しかし、クライバンは既にオリバーの動きを見切っている。再び大鉈を振るい、放たれた雷を衝撃波で弾き飛ばした。
「大都会の聖都ならいざ知らず、こんな田舎で結界など張っている奴などおりませんよ。隣、近所は皆知り合いですからな。」
「くそっ!」
オリバーの舌打ちにクライバンは慌てた。
「いやいや、お怒りごもっともにございます。大切な花嫁をお迎えするのにまこと不用心でしたな。今後は屋敷中に結界を張り巡らせ、侵入者はアリンコいっぴき逃さず焼き払いましょう。」
「誰がアリンコだ!」
今度は無数の氷柱がクライバンを襲うが、自身の炎に焼かれ体力を奪われたのか、今ひとつ威力に欠ける。クライバンは顔色ひとつ変えず素手で払い退けた。
「きゃーっ。 旦那さま、かっこいー。」
「いやあ、ははは。手加減して下さっているんだよ。」
かつて魔王と対峙したほどの戦士が相手では流石に分が悪すぎる。むごい傷痕は伊達ではないのだ。オリバーは今頃になり、自身の浅はかさを呪ったものの、このままおめおめと帰るわけには行かない。
「そんな男といちゃつくな! オリビア、こっちへ来い!」
オリバーは怒れる父そっちのけでクライバンをチヤホヤしているオリビアを鋭い声で呼んだ。
「お前ごときに大事な娘をやるものか、とおっしゃりたいのですね。そこを何とか……。」
「娘だけではない、書物を返せ!」
「は? 書物?」
オリバーの剣幕にクライバンは頓狂な声を上げた。
そう言えば、さっきまで漬け物石代わりにされている哀れな魔法の書物についてあれこれ話していたのだった。
そうしたら、いきなり火柱と共にオリビアの父が現れて……。
クライバンが状況を整理する為に顎に手を当て頭を巡らせている間にも、隙ありとばかりに雷だの氷柱だのが飛んでくるが、もうほとんど力の残っていないオリバーから放たれる魔法は羽虫のように簡単に払われてしまう。
オリバーは忌々しげになおも声をはり上げる。
「書物を持ってこちらへ来るのだオリビア! お前はこの男に利用されているだけだ。」
「お、お父上? 何をおっしゃっているのか、それがしにはさっぱり……!? 」
「だから、父と呼ぶなと言うに! とぼけおって、この悪党めが! 娘よ、聞くがいい! この男の目的はオリビア、お前ではない。アリントン公爵家に代々伝わるその書物だ!」
その言葉にオリビアは凍りつく。
「私ではなく、お母さまの書物を……?」
クライバンはオリビアの白い肌がさらに白くなり、大きく見開かれた瞳に絶望の色が浮かぶのを見た。
「オリビア、いい加減目を覚ますのだ。さあ、こちらへ来るのだ。」
「嘘だ、オリビア殿! お父上は何か思い違いをなさっているんだ。話せばわかる!」
しかし、オリビアにはクライバンの声は届いていないようだ。手招きするオリバーへと歩み寄った。
「そうだ、それで良い。」
オリバーは勝ち誇った顔でオリビアを見た。
「オリビア殿!」
クライバンは背を向けているオリビアになおも呼びかけるが、オリビアはこちらを振り向かない。
オリビア殿…………。
ぽこっ。
オリビアの手刀がオリバーの脳天をめがけ振り下ろされた。
「いい加減にして下さい! 私の身にもなって下さいっ、恥ずかしい!」
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