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「オリビアさん!? 」
「お館さま!? 」
半分ドワーフのクライバンは人間の成人男子の平均身長ほどもない。しかし、鍛え抜かれた筋骨隆々の身体は見るからに重量があった。
そのクライバンを華奢な身体でひとり抱えて屋敷に戻ってきたオリビアを使用人たちは慌てて迎えた。
「オリビアさん、私が代わります、さあ、お前達も手伝っ……ひっ。」
「お召し物を楽な物に替えて差し上げましょう……きゃっ。」
ロバートとレベッカの申し出に、使用人達は久しぶりにオリビアの殺人的な眼光を見た。
「ご心配は無用です。クライバン様の看病は私がいたしますから、どなたか厨房からお湯とお水と、氷室から氷と、柔らかい布を寝室へ……いえ、寝室の扉の前へ置いておいて下さいな。よろしくお願いします。」
オリビアはいつものようにテキパキと指示を出し、クライバンを羽よりも軽いお姫様のように軽々と抱っこして寝室へ消えた。
使用人達はしばし呆然と見守っていたが、いつもはヘマをしても笑って許してくれるオリビアだが、お館さまがからむと急に厳しくなるのを思い出し、厨房と氷室へ走った。
寝室へ入ったオリビアは、クライバンをベッドへ横たえた。
クライバンの息からほんのり酒の匂いがしているし、気を失っていると言うよりは熟睡しているようだ。
病気という訳ではあるまい、オリビアはほっと安堵した。
「でも、作業用のズボンでは寝苦しいでしょうし、汗もたくさんおかきになっているようだわ。レベッカさんの提案を採用して、お召し物を替えて差し上げましょう。その時にお、お、おか、おか、お身体を、ふ、ふ、拭いて…… 」
オリビアはブツブツ独り言を言いながら震える手でクライバンのシャツのボタンに手を伸ばした。
「やっほー、姉さまー。」
「ふにゃーっ!! 」
後ろからベロニカの声がしたので、オリビアは飛び上がった。
「あ、あ、あらあら、まあまあ、ベロニカさん、お久しぶりですこと。」
「もー、姉さまったら、ほんとにえっちなんだから。我慢しきれなくてとうとう旦那さんの寝室に押しかけて来ちゃったのね。」
豪華な布張りの椅子に腰掛けて足をぶらぶらさせているベロニカがニヤニヤしながら言った。
失意のどん底にあり心を閉ざしていたオリビアが久しぶりに自分の呼びかけに応えてくれたので、オリビアをからかいつつも嬉しそうだ。
「な、な、な、何を言うの! 私は突然お倒れになったクライバン様の介抱をしようと! ベロニカさんこそ、こんなふうに殿方のお部屋に入っては……あら? 」
ふと気がつけば、部屋はいつの間にか公爵家のベロニカの部屋に変わっており、クライバンはベロニカの天蓋付きの豪華なベッドに横たわっている。
「ベロニカさんっ! ご自分のベッドに殿方を招くなんて、公爵家の娘にあるまじきことですよっ!! クライバン様はこの私の部屋にさえいらした事が無いと言うのに! いえ、違いました、えーと、えーと、えーと…… 」
真っ赤になって訳のわからない主張をするオリビアに生暖かい視線を送りながら、ベロニカは言った。
「姉さまこそ、意識の無いのを良い事に好き放題やりまくったことが後で旦那さんにバレたら……。」
「う……。」
オリビアは絶句した。
「ロバートさん。」
氷の入った桶をクライバンの寝室の前に置いたロバートが顔を上げると、オリビアが無念そうに立っていた。
「申し訳ありませんが、クライバン様のお召し物を取り替えて下さいますか。ついでに、お身体もきれいに拭いて差し上げて下さいな……。」
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