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SAIGA《サイガ》  作者: 大西アキラ
19/60

第19話 「決着」

その最終電車がホームに静かに入っていく。


夜中の運行と言うこともあり、乗客はほとんどおらず、静かで平和なひと時を感じさせてくれる。


ただ一つ。


最終車両を除いては。


最終車両の光景は異様そのものであった。


数十個のつり革はちぎれ落ち、床は赤い血で塗れている。

車両の扉は大きくへこみ、座席のいくつかは陥没して壊れている。


そして、床には血に染まった十個のリング型ピアスが落ちていた。


ホームにゆっくりと止まった電車は、全車両の扉を開ける。


最終車両の扉も、他の車両と同じ様に静かに扉を開けた。


異様な空気が流れ出る。


先に出てくるのはどちらなのか。


そして、勝者は?


西牙丈一郎(さいがじょういちろう)か?


香川浩介(かがわこうすけ)か?


ざっ。


と、まずは黒いスポーツシューズが降り立つ。


そして。


黒い革のズボン。


そして。


赤と白の派手なアロハシャツが現れる。


そう。


先に出てきたのは・・・。


なんと、香川浩介である。


両耳からは血を流し、顔面も数カ所切れて赤い血で塗れている。

鼻は右にぐんにゃりと曲がり、左右の頬骨は骨折しているのか、ぼっこりとへこんでいる。


ホームに両足をゆっくりと降ろした香川浩介。


そして。


二・三歩前に歩き出すと。


上空を眺める。


両目を大きくカッと見開き。


口内を大きく膨らませ、血飛沫を空中に吐き出した。


ずしゃっ。


と、両膝から崩れる様にホームに倒れ込む。


その後ろから。


にゅっ、と。


西牙丈一郎がホームに舞い降りた。


上半身は裸である。


西牙は、倒れて意識を失っている香川を右肩に軽く乗せると、ホームに設置されているベンチにドズンと落とし、最終車両に乗っている車掌の所に向かった。


じゃり。


じゃり。


最終車掌に乗っていた車掌は、腰が抜けて車掌室から動けなくなっていた。


「あわわ・・・」


顎がガクガクと震え、歯と歯がぶつかり合ってカチカチと鳴っていた。


(殺される!殺される!)


車掌は下半身に脱力を感じて、さらに小便を漏らした。


西牙はゆっくりと車掌に近付く。


「迷惑かけたな・・・」


西牙はそう言うと、すばやく向きを変え車掌の前から離れて行った。


「あ、あ、あ、ありがとうございます・・・」


車掌は、わけのわからないお礼を述べていた。


人間は動揺したり、緊張で頭の中が真っ白になると、とんでもない言葉を発するものである。


その時がまさしくそれであった。


車掌は、西牙丈一郎の後ろ姿を眺めながら、先程の闘いを思い返していた。


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