5番目のメンバーは無口だけどとってもお利口で頼れる隊長でした
麻未でぇーす!☆
前回に引き続き、語り手、やりまーす!
さてさてあたし達の可愛いバンド『わっふぅ』は、デスメタルばかでアウェーだったロックフェスで成功を収め、一気に名前を広めました。
デスメタルの人達ばかりでなく、一般の学生さん達にも名前を知って貰えて、ライブをやるたび客席は超満員☆
でも、あたしには、バンドに納得の行かないことがひとつ、ありました。
中庭であたしがギターの練習をしていると、カバ……ミユキちゃんが声を掛けて来ました。
「マミちゃんて、ギター弾けたん?」
あたしは答えました。
「ううん。弾けるようになりたいから練習してるの」
「なんでなん? マミちゃんの武器は必殺歌のおねえさんボイスのキュートなボーカルやろ?」
「あのさ……」あたしはミユキちゃんに打ち明けました。「タミー……桃田先輩は、最初、全員が歌えるビートルズみたいなバンドやりたいって言ってたじゃん? でもあたしばっかり歌ってる……。あたしが楽器できないから、他の人がメインボーカルとったらあたしがやることないから……」
「あー……」と、カバ……ミユキちゃんは頷きました。
あたしは正直に言いました。
「あたし、桃田先輩の歌が聞きたいの。あの人の声はすっごく優しくて、綺麗だから。……彼にも歌って貰いたいの」
「まぁ、確かに。タミーが歌わんのは勿体ないとはあたしも思っとったで」ミユキちゃんは言いました。「あいつの声めっちゃおもろいもんな」
「だからギター弾けるようになりたいんだ。あたしがギター弾ければタミーも……。他の人も歌えるでしょ?」
「バンドに幅が生まれるな」ミユキちゃんは頷きました。「でも土肥くんの歌、あたし聞いたことないで?」
「あー。あいつは除外でいいんじゃね?」
「でも歌わせてみたらめっちゃ上手かったりして……」
「聞いちゃったよ聞いちゃったよ!」と、後ろの繁みから桃田先輩が突然飛び出して来たのであたしは心臓が止まるかと思いました。「マミちゃん、バンドのこと考えてくれてるねぇ。ありがとう。その心意気、買いましょう!」
どういうこと? と、あたし達が答えを求めるように注目すると、彼は言いました。
「ボクがマミちゃんにギターを教えよう。手取り足取り、ね!」
キャー!( *´艸)
恋の大チャンス!( *´艸`)
「これをマミちゃんにあげよう」
そう言って彼はあたしにピンク色の可愛いエレキギターを渡して来ました。
「フェンダーのムスタングっていうギターだよ。ちっちゃいから手の小さいマミちゃんにも弾きやすいはずさ!」
ピンク色で固めたあたしの部屋で、あたしは彼からそのギターを受け取り、夢見るみたいに目を潤ませました。
「これ……先輩のギター? あたしに……くれるんですか?」
「うん。ボクのギターコレクションの中の一本さ。ほんの9万8千円で買ったヤツさ」
「値段いらんわ!!」
ミユキちゃんが後ろからハリセンで彼をどつきました。
「そんな高いギター……貰えませんっ!」本当は凄く欲しかったけど、あたしは柄になく遠慮してしまった。
「何遠慮なんかしてんだ6人の男と同時に付き合って貢がせまくってたクソビッチがよ」
土肥くんがそう言いかけたのでエルボーを叩き込んで黙らせました。
「大丈夫だよ。ボクのギターコレクションは全部で16本あるからね」桃田先輩は優しい微笑みを浮かべて言いました。「全部合わせて380万円だよ。弾くのはそのうち3本だけさ」
「買い過ぎや!」
ミユキちゃんのハリセンが先輩を廊下まで吹っ飛ばしました。
「新しいメンバーを見つけたよ」と言って先輩が戻って来ました。
あたしの愛犬、林檎大福大佐を胸に抱いて。
「あっ、だいふく。廊下を散歩してたの?」
あたしは彼を先輩から抱き取ると、よしよししました。
体重13kmのおデブなビーグル犬の彼は、スヌーピーみたいにあたしの膝の上にお座りしました。
「ボクたちのバンドにリーダーはいないんだ」
先輩が唐突に言い出しました。
「ボクたちはみんな対等で、いわばみんながリーダーだ。麻未ちゃんが覚えててくれた通り、みんなが歌えるバンドにしたかったからね。正直、ボクも歌いたくてウズウズしてた」
「ギター弾きながら膝が貧乏揺すりしとったもんな」
「でも、バンドリーダーは必要だ。みんなが好きにやるためには祭り上げる象徴が必要なんだよ。天皇制みたいにね」
「最後のたとえいらんわ」
「彼をリーダーにしよう」
そう言って先輩は、あたしの愛犬の頭を撫でました。
「彼ならかわいいし、目がキラキラしてるし、うってつけさ」
「子供人気も出そうやしな」
「だいふくが……バンドリーダー?」
あたしは愛犬と見つめ合いました。
「……やる? だいふく」
だいふくはきゅーんと鳴いて、嬉しそうにしっぽを振りました。