〜始まりの音〜
今回、初投稿となりしこの作品はある友人の思いつきから始まった一つの妄想です。
それはいかに雄大で、どんな広がり方を見せるかは今の私にはわかりません。
だけど、間違いなく、示し合わせたように読んだ人全員が
「不思議だ」
そういってもらえるような作品を目指して完結まで頑張りたいと思います。
初投稿で初執筆ということもありわかりにくい点も多々浮き彫りになると思いますが、どうか温かい目でご覧ください。
それでは・・・・・・
俺は石見奏介18歳だ。大学受験も順調に終わって名門、統制大学に入学。すごい。がんばったな僕()この学歴社会において大学まで来れたのはある意味”完全勝利”である。しかし、学歴よりも重要なチェックポイントを受験勉強を理由に完全に置き去りにしてきた。そう、人との接し方だ。そんな世に言わせれば「隠キャ」と呼ばれる僕だが、持ち前の記憶力と、おぼつかない丁寧語だけで、なんとか今までゴリ押してきた。
しかし、
僕も大学生だ。お金も稼がなきゃならない、もっと広い目を持って社会を見なければならない「どうすれば良いんだ。これから先このまんまなのか、、、、どうしたら効率よく、高い能力を手に入れることができるのか、、、」
完全な効率厨と化した僕は脳を思考を、スパーコンピューターをも追い越す勢いでフル回転させた。そして導き出された、ただ一つの答え。
熱くなった、オーバーヒートした心を宥め、、そしてどこまでも広がりそうな力強い声で、
「バイト、始めますか」
ある日のお昼休憩
「君、バイト始めるんだってね」
こいつは同じ寮の友達、相模だ。おっと、今見ている君たちはこう思っただろう。
「お前に友達?プ〜クスクス」「陰キャラくんには不釣り合いなギフトだねw」
と思った人もいるはずだ。しかーし、俺にだって趣味のあう友達の一人や二人いて何がおかしんだ。相談できる仲間とは人生において必須アイテムだぞ。
「ああ。大学の方も落ち着いてきたし、学業に専念するのも大切だが、やっぱり社会を見るのも大切なんじゃないのか、って思ってね」
「いやー、君なんか受験、よゆーで合格できるような天才君なんだからさ。そりゃぁね、合格ラインギリギリですり抜けてきた僕だったら今すぐにでも将来を考えなきゃかもだけど、君クラスのアタマあったら、多少余裕を持っても大丈夫なんじゃないのか?」
「いや、それじゃダメなんだ。そうやって考えて失敗してきた人を俺は何人も見てきた。実の父だってそうだ。俺はそんなんと一緒にはなりたくない」
「まぁまぁそうカッカしないの。君のお父さんに何があったかは知らないけど、そう固執しすぎるのも失敗の元だよ」
言い忘れていたが、相模はこう見えて、心理学部なのである。何をするにもメンタルが一番重要のなのは、僕の数倍、いや一番よくわかっている。
故に入学当初から
「まぁ、そうかもね。父だけが世界の全てなんてわけじゃあるまいし」
「そうそうそれくらいの気分で行かなくっちゃ」
「ありがと。それじゃ午後の講義がこれからあるから」
「どこまでも勉強熱心だね〜君は。見習うとこだらけじゃん。心理学的には多くのことを一度にやるのは決して良いことではないんだけどな〜。今の君じゃ気にも留めないか。」
午後の講義終了後
「いや〜、今日の講義は疲れた〜。あの数式周りくどいしちょっと長すぎやしないか、作り出したやつを恨むよ、ほんと。」
「(あれ、何か忘れてる気がする。人生の岐路になりうるものを忘れた気がする)」
ふとスマホの予定表をチェックした。
「(あ、思い出したわ。明日は初バイトの日だ。多少身嗜みは整えたほうがいいの、、か?)」
いやー、わからん。やっぱりネットで調べても多少整えたほうがいいと書いてある。しかしその続きが書かれていない。
「こんな解説書初めてだよっ」
今まで読んできた対策本とか解説書にはしっかりとやったほうがいいこと、その理由が書いてあった。しかーし、今回ばかりは違う。なぜかって、ない。書いてないからだよ。
人付き合いと無縁の生活をしてきた俺にとって、わからなくても当然なのだが、、、、
「石見の名にかけてぇ、仕事のイロハすら分からないなど、言語道断ダァァ」
そう、変なプライドがあるのだ。今まで理解するのに困ったことがない男。それは勉強にも同じことが言えるだろう。そんな幸せな人生をにわかに信じがたいが彼は今恨んでいる。
「どうすればいいんだよっ、ア、でもよく考えたら相模、高校時代からバイトしてたらしいな。バイトの手引きのひとつや二つ教えてくれるんじゃないか。」
そう、勝手な思い込みをした俺は、そのまま寮に直帰した。
一旦は部屋に戻った俺だったがやっぱり教えてもらわないと気が済まなかったので、時間としては遅かったが相模の部屋に自ら聞きにいくことにした。
「夜分遅くにすいませーん。石見です。少し質問よろしいでしょうかー」
「はーい。今開けますね」
「立ち話も悪いし、とりあえず入って。」
「あ、ありがとう」
その場の流れで中に入った俺は、、、、、、、、
「(女子の部屋とか入ったことないんですけどー(棒)どうしたらいいんですかー(汗))」
まぁ、焦っていた。(丸)
「で、どうしたの?何かあった?」
「いやー。バイトのことで少し、、、」
「あーそれなら早く言ってくれればいいのに。わからないことあったら言ってって話してたじゃん」
「ごめんごめん(忘れてしまうほど気に留めてなかった)」
さぁ、前座はこれくらいにして早く本題に入らなければ、、
「でさ、バイトの初日って最低限身嗜みとかは綺麗にして行ったほうがいいのか?」
「ん〜。どうだろうね、どんなバイト受けたの?」
「この近くにショッピングモールできたじゃん。そこのティッシュ配り」
「そういう系か〜。それなら確かに接客業みたいなとこあるしね。整えたほうがいいと思うよ」
やっぱりか。ネットなんかよりずっと人間はいい回答してくれるな。
「例えば具体的にどんなんだ?」
「男の人だと、髭を剃るとか、髪にワックスつけるとかかな」
うんうん。髭は毎日剃ってるな。完璧、、、え、今なんて。ワックスだって?そんなん俺持ってるわけ無いじゃん。どうすんだよこれ。初日からは遅刻するわけには行かないぞ。
「そ、そうなんだー。ワックスとかいるんだー。」
「ふーん。その感じだとワックスと気にしたことない感じだね〜。もしかして、持ってすらない?」
「ああ。もちろんだ」
「え〜。今からは遅いから買いに行けないしな〜。どうしよ」
「大丈夫、明日買いに、、」
「これ、あげる。入学前に髪型変えたことがあってさ。そのときのあまりだから。女性モノに近いから、使えないかもだけど、、試してみないとわからないしね」
「え、あ、ありがと」
(というかこれどういう状況だよ。おい、違和感仕事しろよ。あれ、でもなんか声が出ない。自分で買うよって言えない。)
僕はこのときなにものにも変えがたい、幼少期に一度だけ抱いた感情を心に底に感じていた。
翌朝
昨日相模さんからもらったワックスをつけて、最低限できる身支度だけ整えて、出発した。
バイトの初日なんだ。服装や身なりだけで卑しいだのなんだの判断されちゃ困るってもんよ。
近くのショッピンングモールなのでもちろん歩いて行ったが、、
「えらくあったかいな。今日」
まだ5月中ばだというのに暑い。かなり暑い。寒いのばかりに慣れていた僕にとってはかなり堪えるモノだった。しかし遅れるわけにも行かないので走ることにした。
やっとついた。いつも勉強勉強とばかり言っていた身にとっては少し走るだけでも息が上がるモノだ。
ついてからというもの、バイトの人たちのあるまるところに通され、バイトリーダーによる説明があったあと、着替えた。とんとん拍子のように進んでいく。
「(こんなもんなのか。昨日焦りまくってた自分が恥ずかしいわ)」
着替えが済んだ一行はそれぞれ開店前だが、持ち場に移った。ちなみに僕はメインゲート前だ。そう、一番人に会う場所だ。ちなみにノルマは袋に入ったティッシュ100枚を配ること。
話上手な人にかかれば100枚、いや、500枚くらいは午前中に配り終えるらしい。
色々話したが、これが最初のバイトだ。気張っていかないとな。
インバイトスタート
First Guest ティッシュをもらうのと一緒に道案内要求してくるパターン
「ティッシュどうぞー。」
「ありがとう。ワシ、ここはじめてでな、トイレの場所がわからんのじゃが教えてくれんかね?」
(キタ。この手のパターン。やっぱ相模の言った通りだ。しかし、これに関しては対策済み。
そう、俺は昨夜持ち前の記憶力で完璧にモールの中を暗記したのだ。そこから導き出されるトイレの位置とは、、、、)
「おじいさん。ここをまっすぐ行って突き当たりを右に曲がったらトイレに付きますよ」
「ありがとう。これで楽しく買い物できそうじゃ。」
「いえいえ。それでは楽しんでくださいね」
Fist Guest クリア
(後99人。この調子なら午前中までには、、、、)
この後ティッシュウ配りは順調に行きました。しかし55人目で悲劇が、、、、
Fifty-fiveth Guest とりあえずクレーム押し付けてくるパターン
「ティッシュどうぞ」
「ああ?そんなゴミ渡してんじゃねぇよ。そうかそうか、お前には俺がポケットティッシュ如きを意気揚々を嬉しそうにもらうような貧乏人に見えたのか」
「いえいえ、そんな滅相もない。決してそんなわけでは、、」
「おい、責任者呼べよ。早く、いじいじしてないでサァ。俺様の大切な5分を奪った罪は重いヨォ。あ、そうだSNSに書いちゃおっかな〜『オープニングスタッフの対応最低って』」
「おやめください、、私一人のせいで店のメンツに泥を塗るわけには、、、、」
(アホかこのクソガキ。どんな生活送ってんのかかしらねぇがこっちも好きでやってるわけじゃないんだよ)
「お客様どうされましたか?」
「こいつが俺に無礼働きまくるんだよ。お客様は神様、おたくちょっと従業員の教育なってないんと違います?」
「ああ。そのような無礼を働いてしまったということでしたか。申し訳ございませんでした。こちらとしてもより一層教育を徹底して参りますのでどうかよろしくお願いいたします。あとでそのお詫びとしては足りたモノではないのですが、当店で使用できるクーポンを差し上げさせていただきます」
「おう。物分かりが早いニイチャンで助かるよ」
(こいつ、めっちゃ物に釣られてんじゃねえか。にしてもまだ風は冷たいな)
「あーありがとよ。ハックシュン」
「ティッシュいるんじゃないですか?」
Fifty-fiveth Guest クリア
その後はこんな客に絡まれることもなく、そしてついに最後の一枚に、、、
Last Guest 同級生に見つかっちゃうパターン スタート
「ティッシュどうぞー」
「あ、石見君じゃん。あー、ここのこと言ってたんだ。」
「え、相模?来てたんだ」
(バイト、知ってる人に見られるのどことなく恥ずかしいんだけど)
「よかった。髪決まってるね!」
「え、あ、それはお前が昨日くれたから、なんとか間に合ったんだよ」
(なぜだ。受験の時以来のこのドキドキは。治らないこの鼓動どうして、、)
「おい、石見、初日から仕事サボってんじゃないぞ」
「は〜い。ということだから、また」
「今日のことまた聞かせてね。それじゃ、がんばってね〜」
Last Guest SSクリア
バイト上がり
なんやかんやあったがギリギリ100枚午前中に配り終えることができた。
間に合った、配るのは間に合ったが、さっきの[100枚目事件]の心の整理は一切追いついていない。
「不思議な気持ちだなぁ。忘れかけていた気持ちだわ」
空を見上げて、寂しそうな、どこか満足げな顔をして笑った。
「さ、寮に戻って課題終わらせないとな」
どうでしたか?石見や相模たちの小さき気持ちの揺れ動きは再現できてましたでしょうか?
私はまだまだ未熟者で、他の執筆者様の作品を見て学ぶことばかりです。
ですが、自分なりに編み出した言葉で彼らの気持ち。我々作者陣の気持ちを出来る限り紡いだ限りです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また次の連載でお会いしましょう。
さようなら。また会う日まで・・・・・・・・・