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遥か高みの召喚魔帝  作者: 黒井泳鳥
最終章
648/656

648話

「はぁ~……やっと来たと言うか、とうとう来ちまったというか」

 粗雑でアナログな待合室テント。足元は赤砂。あ~これ、近くで見ればわかるけど。鉄分はほとんど血液からだなぁ~。怖い怖い。

 いったいどんだけここで生き物が死んだんだか。

「にゃーにゃー」

「あん? って、おいおい」

 砂遊びに飽きたのか? どーでも良いけど砂まみれの手で触るのは……まぁ、いいか。どうせしこたま汚れるだろうから。そもそもこの試合用のレンタルだし。

 ありがとう学園長。プロ仕様の制服寄越してくれて。妹とお揃いで俺ぁ嬉しいよ。

 絶対ボロボロになると思うんで弁償代もおなしゃす。

 あーそれで? なんなの?

「も、いい?」

「なにが?」

「ふんふん!」

「あー。うんいいぞ」

 学園外だからな。俺でなくコロナは自身のマナを使うことになるわけだ。つまり、俺たちの抑えは入りづらいと考えてんだろうな。

 残念。場合によっちゃ干渉すんぞ。俺たちは。

「ふぃひひ♪」

 嬉しそう嬉しそう。なーんも知らねぇで。

「今日は……ちょっと頑張ろうな。相手は御伽よりもヤバそうだし」

「……ん」

 うお!? な、なんてシリアスな顔……っ。お前そんな顔もできんのか!?

 一見悲しげだったりアンニュイだったり……なんか、ちゃんと美少女面してる!

 ……なんか、こう見るとカナラとかリリンと似たような顔の作りしてんだよなぁ~。普段は若干眠そうな目でまったりしてるけど、表情ちゃんと作ると如実だわ。

 よくよく思い返すとロッテも幼くすれば似てるかも。いや本当すごい偶然。

 でも、俺に縁があるわけだから似たような顔が集まるのかもだし。それか美人って大体似たような顔面の振り分け方してるっつーか。いやまぁその美人基準も俺なわけなんだけど。

 とにかく、違う星で生まれたわけなんだから偶然以外のなにものでもない。……ないわけではあるんだが。なんで違和感があるんだろ? う~む。

「……ん? 誰だろ」

 急に二人近づいてきてる。おかしいな。俺たちとあのおっさん以外危ないから入ってこないって聞いてたけど。

「……? にゃーにゃ――」

「――うっほーい! ハローハロー! 元気しってるぅ~!?」

「!?」

「……あ、退院おめでとうございます」

「……サンクス」

「きっちりすかされてんじゃないのよ。というか、集中したいときに乱すのはやめてあげなさい」

 なんだただのアレクサンドラか。もう一人は……知らないな。

 坊主頭でパンツスタイルの女性……。こんな見た目ドインパクトの人なら忘れないはずなんだが……。

「あー。はじめまして。私はレア・ボネ。一応魔帝よ」

「……! そ、そうでしたか。どうも、天良寺才です。こいつはコロナ。契約者の一人っす」

「ん」

 まーた大物かよ。いや、アレクサンドラの連れだからある程度は予想したけどさ。

 しかも、実力以上にキャリアなんかの功績でなったタイプの人だろ確か。召喚魔法師もどきって揶揄されてる記事見たことあるぞ。それでもめげずに己の立場を固めた人。

 正直よく別人レベルでファッション変えるから気づかなかったわ。

「貴方のことはレックスからよく聞いてるわ。とっても優秀なんですって?」

「いや、それほどでも……ないっす」

 ……この人は召喚魔法師蔑視はないタイプか。一緒にされた過去があるから良い印象はないと思ってたけど、逆に親近感得た感じなんかな。

「それほどでも大有りでしょ。既にミーよりファンタスティックだろボーイ?」

「急にエセ外国人みたいになるのやめてくださいよ。ペラペラの癖に」

 そのしゃべり方されっと誉められても素直に喜べねぇよ。ふざけてるとしか思えなくて。

「この子は昔からこうでね。良く言えばムードメーカー。悪く言えば空気の読めないお調子者」

「いやまったくそのとおりっすね。よく表現できてると思います」

「うーわ。二人とも酷い! 慰めておくれコロ~ナァ~!」

「や!」

「……悲しい」

『時間です。双方所定の位置までお集まりください』

「お、時間か。いくぞ、コロナ」

「ん!」

「あら、やっぱり時間ギリギリだったのね。ごめんなさいね。大事な時間に」

「いえ、激励に来てくださったんでしょう? 大変励みになりました」

「若いのにしっかりしてるのね。この子とは大違い」

「いや~一緒にされたら失礼ですよ。僕に」

「へいボーイ。そりゃどういう意味だい?」

「じゃ、これで」

「無視は良くねぇよ?」

 うるせぇ。邪魔しに来たとしか思えない登場した人を相手にしてやるほど暇じゃねぇんだよ。

「……ボーイ」

 と、思ったら急にシリアスなトーンに。

「……なんすか?」

「私は役に立ったかい?」

 ……この展開を予見してたんだったな。

 素直にスゲェんだけどさ、勘だけでリリン並みの予想立ててるわけだし。しかも、俺たちのために鮮度の良い情報もくれたわけだし。

 簡単にできることじゃねぇんだよな。予想立てて当てるのも。それ以上にあんなに体酷使すんのも。

 ……まぁ、だからってわけじゃないけど。ここは素直に答えてやろうかな。うん。

「たちましたよ。お陰で対策も立てられました」

「そっか。やられた甲斐があったってもんだ」

「いやほんとにその通りで」

「はっはっはー! これで負けたらぶん殴るからなぁ?」

「どうぞ。戦うのはコロナなんで殴るならこっちで」

「……にゃっ!?」

「さいてーかよ」

「ジョークに決まってるでしょ? ……そうよね?」

「もちろん」

 そもそも負ける気ないし。だから関係ないんだよな。

「じゃ、いってきます」

「きっちりぶちのめしてきな」

「うっす」

 さぁて、一年生最後の大一番。やってきますよーっと。

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