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遥か高みの召喚魔帝  作者: 黒井泳鳥
最終章
647/656

647話

「さて、最後の議題はなんだったかな?」

「あ、私のです」

「魔帝刃羽霧紅緒……ということはかねてよりのアレですかな?」

「はい。我が校にも国立と変わらないほどの優秀な子が出てきているので、現場のほうで出していただけないかと。と言っても一部の生徒のカリキュラムに組み込む形なのでプロの方々の手を煩わせることもないかと。もちろん。手を貸していただけるならばありがたい話ではありますが……」

「いやいやいやいや、いくら魔帝とはいえその意見は無理がありますよ。召喚魔法師を贔屓したいのはわかりますがね」

「ですね。将来有望……かはわかりませんが、子供を危険にさらすのはいかがなものかと。いやなに。結果を出したいのはわかりますがね」

「私も同意見です。第一、私は学舎を建てることすら反対だったんですよ。魔帝に割り当てられる予算と貴女の私財から費用を出しているのはわかりますが……正直、無駄としか言いようがありません」

(やっぱり、反応は良くない……かぁ。理由が明らかになっているし、気持ちとしては楽だけれども。それに、今回は彼も手伝ってくれるので心強いんですよね)

「とはいえ、《《明日》》の結果次第では……再検討せざるを得ないでしょう」

「それは……まぁ……」

「魔帝を倒す学生がいてしまえば、そうなりますね」

(良かった。どんなに思考傾向をいじられても公正な判断をしてくれて。アノンさんもシステムは今のところそこまで細かいことはしないって言ってたし。であればこの機は逃したくない)

「現状でいえば承認するわけにもいきませんので、明日の結果を見てから臨時会議を開くということで」

「では今日はこのあたりで解散しますか」

「えぇ」

「そうですね」

「皆様方、ありがとうございました」

(というか、リリンさんの情報も提出してるはずなんだけど。試合でリリンさん出たらどういうつもりだったんだろ……。いや、また理由付けされるのが落ちかな。ワールドエンドだからーって。まぁ、コロナさんもワールドエンドらしいですが)



 これが試合前日の出来事。

 紅緒は政府の会議にて、来年度新たな試みをしたいと議題を提出した。

 簡潔に言えば、異界の探索に召喚魔法師志望の生徒を送り出したいというもの。

 もし成功すれば、アノンがあらゆる異界へのパスを繋げることになっているので、生徒たちの経験値のために絶対可決させたい案件。

 けれど現状において召喚魔法師は紅緒以外の評価は決して高くない。このままでは絶対に通るわけがない。そもそもまともな実力調査も入っていないくらいなのだから。

 なので、ある意味今は最大の好機。

 才がクレマンに勝ち、実力を示せば良いのだから。

 それだけでまともに調査され、才以外の有望株も陽の目を浴びることも叶おう。

(頼みましたよ天良寺君。心配はしていませんけれど)

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