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遥か高みの召喚魔帝  作者: 黒井泳鳥
最終章
642/656

642話

「……あ、そういえば」

「ん?」

 気になる。気にはなるんだけど、下手につついて藪から蛇とか鬼とか痴女とかが出ても困る。

 ってことはここは話を変えるが無難。

「コロナのヤツ、なんか落ち着いてたな。気負ってたみたいだから良かったっちゃ良かったけど、なんか理由知ってる?」

「ん~。さぁな~。なんだろうなぁ~」

「なに、誤魔化してんのそれ?」

「そう見えるか?」

「からかってるようには見える」

「だろうな」

 つまり心当たりはあるし、バカにもしてると。けっ。クソめ。

「なんてことはない。お前も勘づいているアレに関することだよ」

「……バレンタイン?」

「んっ。そ。あいつなりにお前になにを渡すか考えていたぞ~」

「どうせプリンだろ」

「よくわかったな?」

「バカにしてんのか」

 目の前で食ってたぞあいつ。

 色気もワクワクもなんにもねぇよ。

「で、ロッテとカナラはなにくれんの?」

「もらう前提か」

「そらくれるだろ。あいつらなら」

「で、我には聞かんと」

「食う専だろお前」

「よくわかるな?」

 もうすぐ一年だぞお前との付き合い。

 そうでなくても食うばっかで作ったこと一度もねぇだろうがっ。

「なんだ? 欲しいのか?」

「別に。貰えないのが普通だったし。今さらお前に期待することでもないだろ」

「そう言われるとなにかしらくれてやりたくなるなぁ~」

「……自分にリボンつけてどうぞ的展開やめろよ? どうせ手出せないんだから」

「よくわかったものだな。本当に今日は冴えてる。つい先程佐子に提案されたし、やってやろうかと思ったんだが」

 あー。あの人もグルか。変なこと吹き込みやがって。

  でも先手は打ったからな。なにもさせんぞ。

「じゃあまだ先ではあるが、今くれてやるか」

「は? どういう――」

「ほら、良いだろ?」

「お、おい」

 な、なんだよ……。火照った顔でそんな……。

「案ずるな。最後まではしないから」

 いつも顔色変わらないから、赤らめた顔はちょっと新鮮。

 油断してたのもあってこっちにも少し熱が。

 マジでなんなんだよ。

「よ、酔ってんのかよ……」

「そうかもなぁ~。クハ」

 自分で聞いといてなんだけど嘘こけ。お前が酔うかタコ。

 でも発情するのは知ってる。普段抑えてるってのも知ってる。

 けどなんか最近多いぞ。ちょっと前まで落ち着いてたくせに。本当急だな?

 なに? 冬とかにあんの? お前の発情期。

「まぁ、あれだ。ヤツの影響があると言ったろ? ヤツは年がら年中お前に盛ってるからなぁ。我がこうなるのも仕方あるまい?」

「あ~」

 それなら納得。

「で、お前しか静めることができなんだ。少し手伝え」

「いや、お前承諾する前に来て――」

「んむ。ぅれろ」

 って、こいつぅ~……。俺の話しなんざ聞いちゃいねぇ。

 ……まぁ、嫌ってわけでもないし。このくらいなら…………いいか。

 俺もいくら人間やめても男の子だし。

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