640話
う~ん……。これ、そうだよな?
いやもうそれしかあり得ないよな?
だって。
「……コロナ。それ、美味い?」
「ん」
「そっか~。良かったなぁ~」
「あん」
いつもの黄色いのじゃなくて茶色いの食ってんだもん。しかも大分濃い~《《豆》》の匂いがする。
いや、わかる。わかるよ? 時期的にもうすぐだしさ。
でもなんかこう隠すとかする気なさすぎでは?
そもそもコロナの全身からすんげぇチョコの匂いすんだもん。さっきまで作ってたろお前ら。
他の連中からしないのはアレだろ? 影で取ったんだろ?
コロナからしてるのはたぶん嫌がったか抵抗したかだろうよ。
こいつ、日に日にマナの扱い上手くなってるし。
俺から流れる量が同じだとしたら、今の状態のリリンの影をぶっ飛ばすくらいわけないだろ。
……いや、影の押し合いならともかく吹き飛ばすだけなら今でもできるか。マナの質的にも量的にも俺たちに近いし。
てか、将来的に並ぶんじゃね? 下手したら越える?
リリンはともかく俺は超えないでくれ。俺はあいつと違ってマナの質しか元々の取り柄がないんだ。アイデンティティーがなくなる。
「コロナ、おやつもほどほどにな」
晩御飯入らなくなるでしょ――までついたら完璧だったなロッテ。
あ、うんわかってる。コロナの胃袋も大概デカいからプリン一個や二個や十個食べたところで――。
「それもう十四個目だろ。食べすぎ」
「うん。それで最後いしとけ」
「……………………ん」
前言撤回。晩御飯入らなくなるからやめなさい。
最近胃袋の容量増えてきたつっても病み上がりなんだからよ。用心しろ。特に内臓ボロボロだったんだから。
で、まぁコロナがね。あの日の証拠を引っ提げてるわけなんだけども。
「……ところでリリンはなに食ってんの?」
「チョコ」
でしょうねぇ。隠す気もないねぇ。
匂い取ってるクセに隠したいんだがそうでないんだか……。
お前らは俺に何を求めてるんだ?
「ふふ。二人ともぎょうさん食べはるねぇ。こりゃ大きなるわ」
皮肉ですか? こいつら既に成人だろ? 人間基準でさ。お前、京都出身だったりする?
や、わかってるよ。こいつがまだ土地の名前もなかった時代の人ってのは。
でもなんかこう……特に最初の頃は含みのある言い回しとか多かったから。あとお狐さんと話すときはなんか底意地の悪そ~な言い方だったり顔だったりするからそう思っちまうんだよな。
「よし、できたぞ」
と、そんなこんなしてるうちに飯か。今日はいったいなんだろな――。
「今日はシンプルにステーキなんだが、ソースを少し工夫してみたんだ。口に合わなかったらすまない」
「……そ」
そっか~……お前もかぁ~……。
存在は知ってるけどロッテまでボケてくるか~。
しかもチョコソースなんて高度な方法で。
もうどうしたらいいかわかんねぇよ俺。




