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遥か高みの召喚魔帝  作者: 黒井泳鳥
最終章
632/656

632話

「まぁ、じたばたしてもしゃーなし。来るべき時を待つってことで」

「それしかあるまいよ。コロナの知性も上がってきたとはいえ、細かい策を練られるほどはないしな。真っ向からやらせたほうが良いだろ」

「ふん! ふん!」

「やめろ。蹴るな」

「がぁあ!」

「なぁんで私まで干されなくてはいけないのか」

 影で釣られるコロナに巻き込まれてら。ウケる。

 コロナが抗議してはいるものの、俺もリリンに同意。

 ちゃんと説明すればこいつだって大抵のことはやってくれるはず。

 が、今回に限っては無理だと踏んでる。だってこいつ。

「ふん!」

「おう……!? んぷっ。晩御飯出ちゃいそ」

「ほう」

 すげぇ。リリンの影をマナで弾きやがった。余波で灰音がマナ酔いしてるが……まぁ無事だろ。

 元々マナの量も密度もそこそこあって、あの一件から俺やリリンと同等まで底上げしてきただけでも十分なのに。マナの使い方もどんどん上手くなりやがって。勝手に成長しすぎだぞ。俺が言うのもなんだけどよ。

「ふんふん! ふんふんふん!」

 灰音を抱えながら片手でシャドー。キック込み。

 そうなんだよ。こいつなんか血の気多いんだよな。隙あらばこんな感じで落ち着きなくしやがる。

 あのおっさんと戦うのが待ちきれないって感じだな。

 最初はビビってたくせに。どんだけヤル気満々なんだよお前。

 まぁ、だからこそと言うべきか。今のこいつに細かい指示とか策とかは気持ちに反してモチベが下がったり調子崩すかもしれないから迂闊に手加えたくない。

 少なくともコロナはこのまんまがベスト……だと思う。様子は見るがな。

 とはいえ、なにも準備しないのは……アレだし。俺だけでも少しはやれることやっとくか。

「カナラ」

「はぁい」

「また借りるわ」

「借りる……あぁ、はいはい。あっこね。ええよ」

 借りる。借りるといえば。



「ずずぅ……」

 うん。茶が美味い。

「じゃねぇんだわ」

「はい?」

 なんだこの《《家たち》》は。いつの間に建てやがった? しかも全部違う造形。今いる場所なんか茶すするのに良い縁側なんてついてるもんだから一服しちまったよ。俺、ただカナラんとこの島借りに来ただけなのに。

「おかわり、いる?」

「いや、良い。それよりなにこれ。どこの何丁目? 町でも作りてぇの?」

「ん~。今のところは考えとらんねぇ」

「じゃあなんで作ったんだよ」

「それは……大昔の思い出に浸りたくなってしもうて。これ、全部前に住んでた家々なんよ」

「……へぇ」

 なんかちょっと離れたとこにタワマンみたいなのもあんだけど。え、この世界にあんなもんもあったってことか?

 いや、俺たちんとこで住んでた時期もあったらしいからそんときか。

 あれ? でも雪日あのひとが昭和の頃こっちに来てて。そんときには断絶してたからそれより前だよな。

 ん~? 昭和以前にタワマンってあったのか?

 やべぇ。歴史全く勉強してねぇからわかんねぇ。

「ふふ。深く考えんでもええよ。いずれわかることかもやし」

「……そうか。ならそういうことにしとく。じゃ、建物のない場所までいくか。影の練習中うっかり壊したら怖いし」

「そんときはそんときでまた建てたらええんやけど」

「俺は今でも肝っ玉が小さいんだよ」

「……あっちは立派やったと思うんやけど」

「あん?」

「い、いえいえ。なんでもありません。あぁりぃまぁせぇん」

「……」

 大体なにが言いたいかわかるけどさ。

 下ネタも大概にしなよ。年考えてくれ。マジで。

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