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遥か高みの召喚魔帝  作者: 黒井泳鳥
最終章
626/656

626話

 二月……か。

 いやも~う二月か。

 三学期始まったばかりじゃないっけ? 俺特になんかした覚えないぞまだ。

 いやでもしゃーないとは思うわけよ。だって二学期で実技の成績出すわけだから演習もない。少なくとも学園側からのはない。あるのは生徒側からの要望で土日に演習場を貸してくれたりするくらいで、試合形式なら予約してぇって感じだし。

 で、俺を今さら指名してろうってヤツも珍しい。正直、この学園じゃ俺とまともにやれるヤツなんてもう学園長くらいだし。

 ……いや、小咲野先生はわかんねぇな。地力は俺のが上でもなんかあの人底知れないし。

 ロッテやコロナだと搦め手でわんちゃん負けたりもあり得るか。うちの連中ほとんどごり押しだからなぁ~……。テクニカルなことできてもしないヤツもいるし。

 とまぁ、そんな感じで。三学期から学園でやることは特にない。他の連中は自主練に精を出してるけど俺はない。

 故に暇。超暇。かといって事件が起こっても困るけどさ――っと、あれ? メール? チャットとかメッセでなくメール。なんかこれは嫌な予感がビンビン。

『明日の放課後学園長室に来てください

紅緒』

 ……うん。事件だなこれ。

 あの人がただ雑談がしたいからって呼び出すわけないもん。多忙だし。

 う~ん。一人で行くのはなんか嫌だな。

 帰ったら誰かついてきてくれるか聞いてみるか。

 リリンもロッテもコロナもカナラもついでに灰音も。俺が言えば誰かしら……いや全員ついてきてくれるだろ。俺、愛されてるし。



「断る」

「すまん」

「あ~い」

「ごめんなぁ、坊。行きたいんわ山々なんやけどちょっとうちどぉ~~~~~~~~~~しても外せへん用事があんねん。ほんま大事やねん。いや坊ももちろん大事やねんけどな? でも今回は外せへんの。せやからごめんね? このお詫びはいつか必ず」

「正直陰険な面した父よりも美人のママの誰かと一緒にいたいって娘の気持ち、察してほしい。だから諦めてくれ。ごめんよ。ふん」

 と、思っていた時期が俺にもありました。

 いやいやいやいやいや、予想外過ぎる。

 灰音は最初はなから度外視として、リリンやロッテも我が強いし断る可能性もあるなーとは思ってた。でもリリンは学園長の呼び出しなら黙ってても引っ付いてくると踏んでたのに意外や意外。意外が過ぎる。

 でも良いよこの二人は。まだ予想してたし。

 予想外過ぎるのが。

「ま、まさかカナラに断られるとは……」

 正直ちょっとショック。俺、愛想つかされた?

「ほんまにごめんなさい! ほんまに! ほんまにぃ!」

 って、ことでもないらしい。ちょっとした頼み事断るだけでこれだし。逆に考えるとそれくらいこいつにとって大事とも取れる。うん。諦めてやろう。

 ……でもそうなると。

「コロナは良いんだよな?」

「うぅん」

「どっち?」

「ん!」

 来てくれるのね。ありがとう。

 頼りないけどいないよりマシだし。とっても心強いよ。

 ……こいつの場合いっそつれてかないほうがいい気がしないでもないけど。背に腹は代えられないってことで。

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