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遥か高みの召喚魔帝  作者: 黒井泳鳥
一月編 後編
623/656

623話

「…………」

 月明かりに照らされた桃色に染まる木々が見える丘の上。

 そこで神薙羅は娘の血に濡れたままボーッと突っ立っていた。

「…………」

 なにを思考するでなく。ただ立っているだけ。

 もし、今なにか考えようとすればちらついてしまうから。

 いくら気を張って、無理矢理閉じ込めても顔を出してしまうから。

 愛してるという気持ちを。一緒に過ごした思い出を。

 だから、その気持ちの波が落ち着くまでここにいようと思ったのだけれど。



「……あーっと」

「……才さ――坊」

 こっちには戻ってるのに屋敷に来ないなら迎えに来たはいいけど……これ、邪魔したかな?

 なんか落ち込んでるし。血生臭いし。

 こいつ、いったいなにしてきたんだよ……。

「今しばらく……一人に……してくれへん?」

 声、震えてる。

 それに、俺には言えないって感じか。こいつにしては珍しい。

 いや、そうでもないか。俺に負担がかかるとなれば口は割らないだろうよ。俺だって聞こうとはしないし。……普段なら。

「…………」

 なんだろうな。この感じ。

 いつもなら踏み込まないようにするんだけど。

「あ~。なんだ。そのよ」

「…………」

「いつもだったら言わないことってのは自分でもわかるんだけどよ」

「…………」

「胸、かそうか?」

「…………っ」

 あ……振り向いた。しかも、すげぇ顔。

 と、おっと。

「ごめんなさい……っ。ごめんなさい……うち……」

「いいよ別に。このくらい」

 血は臭いけど。でも、こいつを慰められるならまぁ……我慢ってか嗅覚閉じりゃ良いだけだしな。

「うち……大事なぉと……」

 って聞いてもないのに……。いや、良いけどさ。

「――だから、うち……うち……」

「そ、そうかぁ~……」

 義娘とやりあってきて殺してきたとか……おんもいなぁ~……。

 でも、それなら納得。

 こいつは母性が強いからなぁ~……。どんな理由があったかはわからないけど。てかあるにせよ、自分の手でとか……そら落ち込むか。

 ……まぁ、理由も多少はわからないでもないけどさ。

 この感じ、大分追い出してはいるみたいだが、御伽とか異歪者ディストレイみたいな特異なヤツだったんだろうよ。

 ……どっちかっていうと御伽のが近いかな。もっと嫌な臭いだが。

 御伽もなんか……侵食されまくってて戻れない感じがしてしたし。それが行くところまで行って敵対……とか?

 わかんないけど。大体そんなもんだろ。間違っててもどうでも良いし。その他に影響もないだろう。

 それより。

「俺にできることはこんくらいだけど。本当に落ち込んでるときはいつでもかすから。いつも世話になってるわけだし、大したことでもねぇけど」

「いえ……いえ……。ありがとう……こざい……ます……」

 いや本当。マジでこんなんで慰めになるならいくらでもやるよ。

 ……コロナがいない場所なら、な。

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