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遥か高みの召喚魔帝  作者: 黒井泳鳥
一月編 後編
622/656

622話

「――食い終わったか?」

「あ! お姉様! はい! ちょうどこれで最後です!」

 血まみれの砂漠。声帯を食われ続けている父と妹の元へ訪れたリリン。

 まぁ、食い続けているのはその妹なのだけれど。

 右手を変形させ少し平たく、指は長く引き伸ばし、下顎から鎖骨にかけてへばりついて無数の小さな口で食い続けている。

 拷問だとか。嗜虐趣味だとか。父の再生力を利用した食事というわけでなく。ただ単にうるさかったからそうしていただけ。

 なにより、リリンが来たから食事をし続けているだけで。来なければ即座に《《丸飲み》》にしていたことだろう。

「そうか。じゃあ食え」

「はい!」

 元気な返事と共に父を抱き締める。

 接触部には小さな口が作られていて、一分もする頃には彼女たちの血族は残り二人に淘汰されることになった。

「さすが元二番。中々の満足感」

「良かったな。それでだな――」

「こうなると一番の味が気になってしまいますね」

「フム?」

「お姉様。愛しいお姉様。どうか味見をさせてもらえませんか? 痛くしませんし、味見だけで食い尽くしたりなんてしませんから♪」



バトルパート


     リリン

      VS

     リリア――











「阿呆。いくら我が血族らを喰おうが貴様ごときが我に触れることができるとでも?」

「………………」

 影を使うまでもなく。片手を振れば肉が散る。

 既に神薙羅の力の一部はその身に写してある。

 マナに関しては神薙羅のが上だが、使い方はリリンのが圧倒的に巧み。密度を調整すれば一時的なら神薙羅の出力も上回ることも可能だろう。

「…………………………さ、さすがお姉様。私、舞い上がっていたようです」

 元々潜在能力が高く。娘の因子に含まれる人間の部分が強く出たために知能がやや低かったリリアン。

 それが同族を喰らい、強い細胞とわずかな因子を統合し続け、力を得ていった。

 が、それでも尚究極の一たるリリンには遠く及ばない。

 才と繋がる以前でさえも。決して届かない差が、この姉妹にはあってしまう。

「ふん。一度吹き飛ばして頭も冷えたようだし、ほら。土産だ」

「ごくっ」

 紫を帯びた影から神薙羅から譲り受けた死体を取り出す。

 それを見た瞬間。リリアンは目を輝かせて喉を鳴らして涎を垂れ流し始めながら近寄っていく。

「お、お姉様っ。そ、それは食べてもよろしいやつで?」

「あぁ。くれてやる」

「ありがとうございます!」

「喰ったらしばらく動かず馴染ませておけ。そうすればいくらかマシになる」

「馴染ませ……? よくわかりませんが大人しくしていればよろしいと。それはいつまでですか?」

「フム。そうさな。我とは違う扉が開けばそこに入れ。あとはそこで出会った最初のヤツに聞けば良い」

「はぁ……。わかりました。言う通りにします」

「念のため言っておくが、そいつは殺すなよ?」

「え。駄目ですか?」

「ああ」

「襲ってきても?」

「襲ってこないと断言してやる。むしろ貴様が率先して突っ込まないか心配なんだがな」

「お姉様の言いつけは守ります」

「だと良いんだが」

 リリンの妹にしては知能が低い。いくら同族を食べてきてもそのあたりは成長していないように見えて、さすがのリリンも感情が面に出てしまう。

「……本当にやめろよ?」

「はい!」

(返事だけは良いな。こいつ)

 リリンの不安は結局拭えなかったとさ。

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