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遥か高みの召喚魔帝  作者: 黒井泳鳥
アノン語る幕間 原初壱花、その一生
549/656

549話

「いや……」

「はい?」

「いやいやいやいやいやいや」

 手を振り頭を振り。否と申すおばあちゃん。

 というのも。

「こ、こないな醜女の老婆がつけ回したら迷惑やろ? むしろ一夜……どこやないけど。数日肌重ねるのも奇跡みたいなもんやし」

「……乗り気に見えましたが理性が止めましたか」

「止めました」

「ですが大女様。その子も満更ではなかったのでしょう? むしろ大女様を求めて観光すらまともにしなかったとか」

「そ、そうね~。時間見つけては会いに来てくれ張ったねぇ~。それで幾度となくうちを……ってもうなに言わすんこの子は~!」

 頬に手を添えいやんいやん。もしも面が無かったら最高に可愛い仕草なんだけれどね。

 が、目の前の成人女性にはクるものがあるようで。

(くぅ~! まさか大女様がこんな風になるなんて! 恋は人を変えると言うけどまさか自分が見ることになろうとは。いや、大女様は元々おちゃめで可愛いけどもっ)

 本当におばあちゃんが好きなんだね~。超おばあちゃんっ子だねぇ~。

 でもそれ、言うなればクズ男にたぶらかされてるの現状変わらないんだよねー。

「っと、ごほん。大女様。つまりはその子も大女様を恋しく思ってるのではと」

「そいであの子ったら赤ん坊みたいに乳を――」

「聞いてます?」

「――はっ!? えっと……なんやっけ?」

「……」

 情事を思い出し人の声が聞こえなくなるとかとんだ色ぽけババアめ。

 ま、本人自覚してないようだけど初恋だしね。仕方ないとは思うよ。事細かに彼がしたことを口にしなきゃだけどね? 赤裸々筒抜けはあまりにも可哀想だよ。

「とりあえず熱烈に求められてるのはわかりました。それなら彼も会いたがってると思いますよ? 彼も初めてだったんでしょう? であれば余計に特別な女性となってるはずです」

「で、でもぉ~」

「……なるほど。さては不安ですか? 一夜の遊びみたいな扱いが。遊んだらポーイが嫌ですか? ないと思いますし、それなら私も気兼ねなく去勢して参りますが」

「それはそれでうちとしては望むところよ?」

「どちらが?」

「遊びの方。去勢とったらばダメ」

「残念です。というか遊びの女は良いんですね」

「そらこんな拗らせ女。遊びでちょーどええし」

「では、仮に本気だとしたら? 本気で大女様を欲していたら?」

「本気で欲っするて……」

「もちろん。伴侶に」

「…………」

 さすがに、言葉に詰まるご様子。

 当然ながら自分は嬉しい。想像しても自分は幸せ。

 寝食を共にし、あわよくば毎夜の如く求められ、たくさん子供を産んで、老後の世話をする。

 それから――。

「ぅぁぁぁぁぁぁぁあん……!」

「ちょ!? 突然どうしました!?」

「いや、あの子の老後を看取るの想像したら感極まって……」

「何十年後までの未来予想図描いてんですか……」

(あ、でもこの方だと六十年なんて)

 そ、あっという間。すでに六千年は軽く生きてるし。

 一人の人間の一生なんて彼女にとっては一年と大差ない。

「とにかく。想像だけで泣くくらいには想いが強いのはわかりました。では尚更気持ちにケジメをつけるためにもお会いになられては? この先結ばれるとしても。永久に会わないとしても」

「……ぅ、ぅぅん。ほう? そのがええかな?」

「でないと大女様日がな一日ぽけぇってしてるだけになってしまいますし。ここまで大女様に影響出すような人間が現れるのも何千年後になるやもしれませんし。良い機会と思えばよろしいかと。……それに」

「それに?」

「朗報です。件の男の通ってる学校には夕美斗も通ってるみたいですよ」

「あ、ほうなん?」

「はい。なので、様子を見に行かせましょう。同学年ですし大した手間はないでしょう。それで、軽く探りを入れさせて。もし大女様を求めていたらお会いになれば良い。二度と顔を見たくないと宣えばその時は処分したら良いんです」

「処分やなんて物騒なことはせぇへんけど。でも、それなら……まぁ……ええかな」

 正直、彼女としてもいきなり会うのは怖い。

 捨てられるのは良い。ぞんざいな扱いはかまわない。

 けど、拒絶を目の当たりにするのは嫌。

 父親にされたような。出産に立ち会った者たちにされたような。

 あんな拒絶を、特別な人にはされたくない。

 それってなんだかとっても……普通だね。

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