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遥か高みの召喚魔帝  作者: 黒井泳鳥
アノン語る幕間 原初壱花、その一生
525/656

525話

 結論から言うと、焼き討ちを行ったのは武家側の独断。

 少々人外に過激な者が行ったことがわかった。

 首謀者は焼き討ちを行った数日後に不穏な死を遂げたそう。

 はてさて。なんでそんな不幸が起きたんだろうね。

 それから、密告者は昔保護した人間の子供。彼女たちのところでもあまり馴染めず、大きくなってから出ていったが、その後武家に取り入るために密告したみたい。

 その子もまた、夜中に寝ているところを何者かに頭をかち割られて死んだとさ。

 まるで握り割られたような歪な割れ方から、鬼の仕業だなんて言われてるみたい。

 えっと~……あとはなんだっけ。

 あ、そうそう。巴という女武者が割腹していた理由も天上人から聞かされたよ。

 自分の命で他の子供は許してくれだって。

 一応女とはいえ武者として過ごしたからね。筋を通せばとも思った結果行ったんだろう。

 でも、女が男の真似をと死んだあとに嘲笑われただけで。反故にされてしまった。

 まぁ、珍しい話でもないね。基本男尊女卑だし。男の身なら多少胸を打ったかもだけど。女じゃ難しいさ。

 女ながら見事~だなんて。男気溢れることを宣う人間もまたいない。

 だから、無意味に見世物。道化を演じただけになったよ。悲しいね。

 さて、割りとやることはやりつつも、感情はあまり出さない無気力陰気な彼女が激情のまま少数の人間に落とし前をつけさせたわけなんだけど。その後も報復が続くってことはなかった。

 ただ、天上人にこう告げたの。

「これより身を隠す。慎ましく過ごす故。もう探るな。また、人外の者は見つけ次第我が遠い地へ連れて往く。余計な手出しは無用に願う」

 つまり、人ならざる輩はこっちで管理するから人間は邪魔するなってこと。

 難しい話だけどね。だってすでに実権は武家や貴人や摂政なんかに取られることがざらになってるし。今回のことだってやっとの思いでやり遂げたんだから。

 ま、彼女もバカじゃないからそのあたりも踏まえてるけどさ。できる限りで良いって思ってるさ。

 それからというもの。彼女は海を渡って一つの島に自分と同類、人外の者を連れていって世話をして。人間は本土に拠点をつくってそこで育てた。

 何十年。何百年。気を緩めず。慎重に。慎重に事を進めて。

 やがて戦乱の世になり。越えれば完全武家社会になり。その頃には人外の子も何故か生まれなくなって。島でのんびりと過ごしている。

 人間側の捨て子はあのときの体の弱い赤子が大きくなって、その子の子孫が商家を立ち上げて色々とやりくりをしたそう。

 普通の商売だけじゃ子供拾っても育てられないから花街や他の危ない家業にも手を出したりして乗りきり。

 やがて二度目の戦乱まではなんとかなったけれど。また多くを失うことになる。

 そう世界大戦ね。

 人外側の島に商家の跡取りは逃がしたけど、他は全滅。

 なんなら人外側の中から見た目の近い子はほとんど戦争に行っちゃったしね。

 遠い地の同じ境遇。同じ母を持つ家族を守るために。

 その母の生まれた故郷を守るために。

 ま、さすがに爆撃やら銃撃に耐えられる子は彼女以外いないから皆死んじゃった。

 彼女が戦争に出れば国が負けることもなかったろうけど。彼女は人間の争いに手を貸すつもりはないから仕方ないね。家族が生きてれば良かったし。

 ま、残ったのは彼女と、人間側の跡取りだけだから。その願いすら叶わなかったけど。

 さて、そして戦後にまた商家として跡取り君は頑張ったよ。お金とかは大量に残してくれてたしね。親兄弟が。

 そのお金をもとにまた事業を頑張って。裏にも顔が効くようにしていった。

 もちろんというかなんというか。彼女もさすがに手を貸したよ。跡取り君は当時子供だったからね。ギリ徴兵されないくらいの。

 彼女の手を借りて。というか知恵を借りつつ色々と頑張って。お家を大きくして。平成に入るころには彼女の身を簡単に隠せるくらいの大企業に成長。

 ん~。わりと飛ばしてきたけどこっからが本番かもね。

 これよりは令和のお話。

 西暦で言えば二〇二〇年。彼女がなにをして過ごしているか話そう。

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