49話
一つ希望を抱いていた。仮に日程と外出の申請を出しても受理されないのではないかと。が、一つ思い出した。この学園。そこらへん優秀なのであっさり通してしまうということを。で、何事もなく。語ることもない程度の日常が過ぎ、演習日当日になってしまった。
あ~……めんどくさい。下手に長い休みがあったせいで余計にめんどくさく感じる。なんていうの? 五月病みたいな感じだな。まぁ俺の休みって一週間は入院で一週間は異界での訓練やらなんだけどさ。あいつらは休暇中結構ハードだったらしいけど、俺の訓練ってほぼリリン任せだからこう普通とは違うと思うんだよな。苦しいのもやり始めだけだったし。だからかもう二週間のブランクからの学校が辛くて辛くて……。
と、内心愚痴りまくったわけだが。時間が迫ってきているのでここまでにしてさっさと向かおう。遅れたらうるさそうだからな。主に二人。
「じゃあロッテ。行くか」
「あ、あー……すまない。儂は少々用事があるのだー。なので先に行っててくれ。ゲートを開いてくれれば向かうのでなー」
「あ、あ、そう?」
妙に棒だったんだが……。まぁ、用事があるなら仕方ないな。うん。
「じゃあ先に行ってる。出番が来たら頼むわ」
「う、うん。任せておけー」
……こ、こいつ緊張してるのか? 大丈夫か?
「な、なぁリリン。やっぱりお前が」
「断る」
即答ですか際ですか。じゃあもういいです。ロッテと派手に心中してやるよクソ。
「はぁ……。いってくる」
「あぁ」
「しっかりなー!」
いや、お前がな?
「クハ、クハハハハハ! 不自然! 不自然だったな! クハハハハハハハ! さすがの我も堪えるのに必死だったぞ! そこまで緊張するものかぁ~?」
才が出ていくと、リリンが我慢の限界といわんばかりに笑い転げる。変に緊張していたロゥテシアがおかしかったらしい。
「し、し、し、し、仕方ないだろう!? だ、だって……」
「クハ。まぁ我もヤツの反応が楽しみではあるな。あの仏頂面にはてさてどのような感情が浮かぶことやら」
「……悪戯好きなのか? 意外だな」
「フム? 自覚はないのだがな。しかしあいつには不思議とこういった感情が浮かぶ事があるな。気に入ってるからかもしれんな」
「好きな相手に構ってほしい……みたいなやつか? 群れの子供達はそういう意味でならよく甘噛みしたり挑発してきたりと色々やっていたが」
「さてなぁ~。どういう理由にせよ悪い気分ではないからどうでも良い」
(そら悪戯する側は悪い気分にはならんだろう……)
「それよりも貴様は準備せんで良いのか? まだ慣れきってはおらんだろう。早めに始めたらどうだ?」
「そ、それもそうだな。うん。あ、そうだ! ね、念の為に佐子殿にも手伝ってもらおう!」
「……それは良いが、先に自分でしてからにしておけ。我も見てやるから。じゃないとあいつそのうち死ぬぞ? 我もそれは困る」
「わ、わかった。では頼む。まずは――」
演習場の観覧席。他者の演習の見学のために設けられたスペースなのだが。実際の戦うスペースとは魔法を付与されている強化アクリルによって阻まれており、入学の際に行った契約で壊すことはできないようになっている。なのでとても安全安心な仕様になっております。その安全安全スペースに落ちこぼれ共が集まっておるようで。
「お、さっちゃん。遅いぞ~」
「いやまだ一戦目も始まってねぇだろ……」
俺たちの演習の順番はミケ、多美、伊鶴、八千葉、夕美斗、俺という並び。そのミケのに間に合っていたら始まってようがかまわんと思うんだが? つか地味に俺トリかよ。なんか嫌だな……。
「わかってねぇなぁさっちゃんはよぉ。幼女を毎日ペロペロしてるから~」
「してねぇし」
そもそも幼女じゃねぇしあいつ。ビジュアル的にヤバイし俺からは絶対やらねぇけどさ。
「してたら問題でしょ」
「してないほうがどうかと思う!」
「えっと……。してる方が絶対大問題です、よ?」
「そうだね。彼女は麗しいレディだけどさすがにね……」
「うん。やっていたら擁護できんな」
「四面楚歌!」
そらそうだろ。昔ほどじゃないけど幼女への性的な行為は今の時代も問題だからな。つか犯罪。調べたら異界の生物だとまた変わってくるらしくて、実はリリン相手へのそういう行為は合法です。ただ俺が未成年なので結局アウトです。すでに手遅れな気もするが……。今後はさらに気を引き締めて気を付けていこうと思います。
「まぁ幼女は置いといて」
お前が持ち出したんだろその話題。
「やっぱ戦いの前にリラックスしたいじゃん? そのために雑談したいじゃん? そういうことじゃん?」
うん。全然わかんない。俺、基本ぼっちだったし。一人のが気が楽ってタイプだし。たまに一人になりたくてリリン帰れって思うもん。口にしたこともある。即答で断られたけど。
「色々言ってるけど、伊鶴はただ遊びたいだけだから気にしないで」
「詰まるところ全部建前ってことですね。真面目に捉えるだけ損ですよ」
「本当やっちゃん言うようになったね」
「色々ありましたから」
「八千葉さんもたくましくなったな」
「気持ちだけですけどね……。もう少し体力ほしいです……」
「お? トレーニングならいつでも付き合うぜやっちゃん! シュッシュッ!」
「今度付き合って頂いてよろしいですか? 夕美斗さん」
「そっちかい!」
「あぁ、構わないよ」
「二人だけで話進めないで(´;ω;`)」
「普段の行いのせいだよ。諦めな。それか改めな」
「ハハハ……。ドンマイ」
まったく。相変わらず賑やかなヤツら。休暇中にやった合宿のせいか仲も深まって余計にうるさくなってる感じもするし。……いや、寂しいわけじゃないぞ? 俺一人のが好きだし。マジで。このままミケも俺離れをして女子共といてくれたらって思うくらい。
「あ、才。僕たちも今度一緒にトレーニングしようか! 男同士さらに友情を深めよう!」
「断る。つか離れろ暑苦しい」
思い出したかのように肩を抱くんじゃねぇ。真面目にあっちいけ。シッシッ。
「そうつれないこと言わないで……。おっと」
ミケの端末に開始十分前の連絡が届く。お陰で離れてくれたわ。ナイスタイミング。
「トレーニングの日程は後日決めるとして。行ってくるよ」
いや、やらないからな? 勝手に決定事項にすんな。
「てらっさ~い」
「頑張んなよ」
「応援してます」
「しっかりな」
「さっさと行け筋肉達磨」
「才だけ冷たい!」
うるせぇ。男に肩抱かれて機嫌良く送り出せるかバカ。良いからさっさと行け。
『一年C組小杉佳一。一年E組マイク・パンサー。これより実戦演習を始めます。準備をしてください』
「今日は才も見てるしね。合宿の成果。しっかり見せつけなきゃ。さぁ、行こうか。ジゼル」




