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遥か高みの召喚魔帝  作者: 黒井泳鳥
一月編 前編
488/656

488話

 甘えるだけなのは悪いことなのだろう。

 でも、それはすがるのが当然と傲っている者に対してだけで良いと思う。

 多美は前者で、伊鶴は後者と考えは異なるけれど。二人が友人であることには変わりない。

 多美は伊鶴に救われたのだから好感をもつのも必然で。意見を違えてすぐに喧嘩にはしって孤立する伊鶴にとっても多美以外に友人はいない。

 むしろ、頼られることに依存している。

 多美だけでなく。伊鶴からも、依存している。

 そのことは大した問題じゃない。それよりも、伊鶴がどんなに盾になっても。多美の扱いが変わらなかったのが問題。

 伊鶴に守られないようにするなんて、簡単なことなんだ。

 いないところでやればいい。実に単純なことなんだ。

 甘えるのは悪いことなんだろう。

 だから多美は結局やられる側のまま。

 年を重ねれば多美のようなアジア系以外の人間を見る機会も増えて、他の人種がいるんだと知識が増えて。多美だって珍しくないんだと気づいたり。また、自分のやってることに罪悪感を覚えたり。単純に飽きたりで人数が減ったとしても。

 それでも、《《習慣》》になってしまえば。疑問を抱くことなく続く。

 人間は頭の良い動物だけれど。同時に個体差の大きい生物。

 主観と客観を区別できず。自分が一般論と照らし合わせれば悪と呼ばれるモノだと気づけないのも出てくる。出てきてしまう。

 だから、多美はやられる側のまま。

 中学に上がっても変わりなく。

 けど、彼女がまとにされる一番の理由は単に目立つから。

 気弱な性格もあるけれど、なによりも目立つから。

 であるならば、より目立つのがいれば。

 なんなら、大人も目を離したくなくなるような目立ち方をすれば。やわらぐんじゃないか。

 そう思ったならば行動したくなる。

 それが。

「い、伊鶴? その頭……」

 それが伊鶴という少女。

「どうどう? 似合う?」

 とある日曜日。オレンジに近い明るめの茶髪に染めて、濃いオレンジと赤紫のメッシュをいれたド派手な頭にして多美宅へやってきた伊鶴に度肝を抜かれる多美。

 それはそうだろう。二日前には黒髪だった友人がこんな頭に変わってたら正気を疑う。

「な、なにか辛いことでもあった……?」

「もう中学生だかんね! おしゃれに目覚めたんだよ! うちの地域古くさいルールもあるけど髪の色とか下着とかはさすがに指定されてないしね。思いきってイメチェンしちまったぜ!」

「そ、そうなんだぁ~」

 元々勢い任せ思い付くままの脊髄的な生き方をする伊鶴。

 そんなのと小学校低学年から付き合ってたら納得するのも早い。

 でも、それだけが理由じゃないとは、わからなかった。

「それに、やることだけでなく見た目も派手ならちょっとは……ね。マシになるかなって」

「……!」

 照れて顔を逸らしてくれたから潤う目を見られずに済む。

 この数年でからかいあえるような仲になっていったけど、だからこそ今の顔は見られたくない。

 知らず知らずのうちに、強がる相手が友人に移っていることに気づかない多美だった。

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