426話
思ったよりこっから長いかもしれませんので、途中で更新切り上げて午後か明日に回すかも知れません。
――時は遡り。十二月二十三日。
ん~。リーグ戦も終わって冬休みに入り、のんびり過ごしてるうちにもうこんな時期。気づけばイブ前日。
本当はもっと早く誘うべきだった。うん。わかってる。
けどなんかこう……特に理由もなく後回しにした結果今日まで来てる。本当になんの理由もない。
だって誘えば絶対断られないし。緊張するような相手でもないし。
しいて言えばコロナが邪魔しそうだとか、リリンがちょっかい出しそうとかは思うけど。気にするレベルでもない。日常だし。
はぁ……。言い訳にもなんねぇわ。する気もないけど。
同時にスルーする気もないんだよなクリスマスイブって一応特別なイベントをよ。
二年も待たせるんだからこれくらいはしてやりたいって気持ちは俺にもあるから。
ってことで、さっさと伝えちまお。当日よかマシだと思うし。
「あ~……カナラ」
「ん~? なぁに? あ、お腹空いたぁ~? ごめんなぁ。ご飯ならもう少し待っててくれるぅ?」
「いや……そうじゃなく」
確かに飯時だけども。コロナとかは腹ぎゅ~ぎゅ~鳴らしてるけども。
「明日……なんだ。ちょっと付き合え」
「明日? なにに?」
はい説明不足すみませんね。《《女の誘い方》》なんて知らないもんで。
自分。経験不足故に。
「学園の外に用事があるっていうか? そんな感じ」
「?」
あ、こりゃ顔見なくてもわかる。わかってない顔して首かしげてるぞあいつ。
ん~でもどう伝えたものか。
「クハハハハ! お前不器用にも程があるだろう? 面白いから構わんがな。いつまでもそのままでいてくれ道化」
「……チッ」
さっすが察しの良い女代表。よくもまぁ俺のしたいことに気づけるわ。
てかわかってるならよ。
「代わりに言ってほしいんだけど?」
「はぁ~? お前それは……んまぁ良いか。煙魔よ。明日こいつは貴様と二人きりで……あ~貴様にわかりやすく言うと逢瀬をしたいんだと」
「ぅぇえ!?」
あ、包丁が指に。
まぁ切れてないんだけどさ。
代わりに包丁の形が変わったよ。刃の部分が指の形に凹んでおられる。
「ところで逢瀬ってどういう意味よ」
「隠れてヤる」
「……いやそれはさすがに嘘だろ」
「似たようなもんだよ。というか、代弁させておいて文句あるってか? 随分良い御身分だなぁ?」
「えっと~。隠れて男女が会う意味だそうだぞ。いたいた。群れにもそういうヤツら。臭いで丸分かりだというのにいじらしいこと」
「じゃダメじゃん」
隠れてねぇよ。明らかによ。超オープンじゃねぇか。こっちもそっちも。
それにロッテの言い方からしてヤる意味も含まれてないしさ。
「娯楽のない時代の人間がやることなど子作り以外あるかよ」
んんんんんん。否定しづらい。
くそう。俺がもう少し歴史に詳しければ……。
って、んなこたぁどうでもいい。
隠れて……はないけど。意味はある程度伝わったみたいだし。
「とりあえずそういうこと。明日どっか行くからその……付き合え」
「フゥム。我が父よ。常々思うんだけど亭主関白って感じするよな。そんなんじゃいつか見限られるぞ~」
「やかましい」
良いんだよカナラは。こういうのが好きっぽいから。
……それに。
「そ、そんな……。ふ、二人きりやなんて……。何度かそういうのはあったけど坊からのお誘いはそないなかった気ぃするし……? あぁそれも明日なんて急……っ。どないしましょどないしましょ!?」
ほらな。クネクネして喜んでる喜んでる。ついでに包丁もクネクネしてる。っていうかグニャグニャしてる。
「……煙魔母。良いのかい? それで」
いんだよ。本人が幸せそうなんだから。
「出掛けるゆーても何着たらええのか……。あぁ明日ほんまどないしたらええか……。あ、その前に今日のご飯も……! あぁ……あぁ……っ。もう頭ん中こんがらがってまう!」
おおう。思った五倍はパニクってる。
……ん~。落ち着いたら急だったのだけは謝っとこ。