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遥か高みの召喚魔帝  作者: 黒井泳鳥
十一月編
321/656

321話

(……っ! 来る……っ!)

 空間が歪む予兆を感じ取り、対応すべく感覚を研ぎ澄ます。

「……」

「!?」

 探知を開始した瞬間。瞬は既に懐に飛び込んでいた。

 夕美斗もニスニルも常時マナの動きを把握してるわけではない。存在融合の負担が大きい為に持続できないのだ。

 だからバレないように。悟られないように。断続的に感覚を閉じている。

 それでも余程大きなマナの動きがあれば感知できるので問題はないかと思ってた。

 実に甘い浅はかな考えだった。

 瞬は空間の歪曲から短縮に移行。さらに移動までが速すぎる。

 元々何も考えていないかのような読みづらさも相まって反応が遅れてしまう。

「……」

 右手から刀までの距離を短縮。刃先が鞘を抜けるまでを短縮。

 右肩が内に入っているのを外にいくまでを短縮。

 肘、手首、柄、鍔、刃、刃先を同方向に短縮。

 一度に幾重にも短縮をかけ、夕美斗の首元に斬撃が襲いかかる。

「く……っ! ぅ……っ!」

 何とか感知が間に合い、辛うじて自分の顔を弾くように小さな空気の爆弾を作成。空気に殴られる形で無理矢理自分の体を反らしてスウェーバック。

「……」

「ふっ! ……くふっ!」

 自らの空気爆弾で鼻血を出しながらも瞬の追撃をかわしていく。

 マナの感知を常時していなければ瞬の動きに対応できない。しかし感知を続けていれば紙一重だがかわし続けることができる。

 消耗は激しいが、夕美斗達に選択肢も余裕もない。

(一度抜いたら必ず鞘に刀を戻している……。それなのにあのきさら並みに速い……っ)

 抜刀時も納刀時も複数の細かい空間短縮を使っている。

 これにより居合の長所である抜刀時最速をさらに際立たせ、居合の為の納刀のリスクをほぼなくしている。

 連続の居合。それこそ反則級の技だ。

(速い……! 確かにものすごく速い! だけど、武術そっちはまだまだだな瞬!)

 達人の抜刀はそれこそ素人には目に見えないレベルの境地に至るという。

 瞬はそれをマナによって無理矢理再現している形。魔法の技術であって居合の技術ではない。

 よって動きの癖が少ないとはいえ、刀に体が多少振り回される。マナによってカバーしているがそれでもぎこちなさがある。

 ならばマナの感知で対応しきれる。夕美斗とニスニルは瞬のマナの動き全てを感知することで超速の居合をかわし続ける。

(この速度にも……慣れてきた)

 不規則に襲い来る斬撃に慣れるには読みづらすぎて時間はかかったが、夕美斗は確実に動きを捉えるようになってきた。

(これなら反撃の余裕も出てきた)

 夕美斗はタイミングを計り、カウンターを狙う。

 振りきった直後。即座に空間短縮による納刀を行っているが、コンマ数秒硬直がある。その硬直のタイミングで一発入れるつもりだ。

(ここ……で!)

「はっ!」

 放たれる拳打。タイミングはバッチリ。

(入る……!)

「……」

「……ぁ」

 硬直のタイミングは完璧だった。しかし、致命的ミスが一つだけある。

 《《瞬の攻撃が超速の居合だけと思い込んでしまったことだ》》。

 瞬は手首を捻りつつ空間を歪める。逆方向への二段目の斬撃を放つ。

(しまっ――)

「夕美斗!」

「ぅわ!?」

 ニスニルは咄嗟に夕美斗を風で吹き飛ばす。

 ピンポイントで夕美斗を飛ばすのは無理だったので瞬ごと飛ばそうと突風を巻き起こした。

「……」

(嘘……)

 しかし飛ばされたのは夕美斗だけ、瞬は着物どころか髪すら乱れていない。

「はぁ……はぁ……」

 致命傷は避けたものの刃は夕美斗をかすめ、出血してしまっている。

 だが夕美斗はそんなことどうでも良かった。

 斬られたことよりも、問題なことがあったから。

(今ので確信した……瞬は……手加減している……)

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