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遥か高みの召喚魔帝  作者: 黒井泳鳥
八月編 後編
193/656

193話

「さぁやって来ました! 海! オーシャンビュー!」

 いやいやさっきからいるだろが……。まったく……。

 俺たちが連れてこられたのは浜辺でも立ち入りが制限されている場所。

 普段は一般人は入れないんだがさすが魔帝。権限が半端ない。

 だけどこんなとこに連れてきて一体なにするんだろ?

「ちょっと待ってな」

 アレクサンドラは海へ向かって歩き出す。水に足をつけ、そのままどんどん前へ進んでいく。

「サンディ~。いったいなにがした……ん? んん~?」

 アレクサンドラは真っ直ぐ進んでいる。真っ直ぐだ。《《水の上を真っ直ぐ歩いてやがる》》。

 普通の人間なら驚くのも不思議じゃない。

 ……まぁ空走ってるところ見てるから驚きは少ないだろうがな。

 でも、俺からしたらやっぱとんでもねぇよ。あの人。

 マナの流れが一定だし、しかも歩いたところに常に流してやがる。つまり、他の人間が歩いても沈まないようになってる。

 人間はマナを知覚する感覚器官が退化しかけてるからあんな綺麗に正確に大量のマナを水面に流すのは余程訓練を積んで感覚を覚えたんだろう。

 もし才能で~とか言われたら吐くね。それくらいあれは難しいことをしているぞ。

 ……正直。今の俺じゃできないかも。

「ふっふ~ん♪ 驚いてるかいチルドレン? だがそれはまだ早計ってもんだぜ」

 アレクサンドラはそう言うとマナをさらに広げて水のドームを作り上げた。

「即席の超小型潜水艦さ。来な。足場は作ってある。一緒に海の中を見て回ろう!」

「うぉおう!? マジかよ! 本当に魔法みてぇだなサンディ! 行く行く! 行っくぞぉ!!!」

「ハッハッハ! 普通に魔法だよバカ野郎。ミーを誰だと思ってんだ」

 一目散にアレクサンドラの元へ向かう伊鶴。続いて驚きながらも他の連中もアレクサンドラの作った海水の潜水艦に入っていった。

「お~い! 何してるんだいボーイ? 早く乗りな!」

 躊躇してたら早く来いと促された。

 いや、躊躇してたのにも理由があるんだよ。

 たしかにアレクサンドラはマナを器用に使って見事な海水のドームを作り上げた。中に入ればそのまま海中散歩ができるだろう。

 だが、ドームの中が問題。

 海中の壁や床から漏れでたマナが滞留していて影とまでは言わなくともマナの乱気流が起こってやがる。普通の人間なら問題ないけど、俺だとあれは酔いそうだ。

 いくらマナによる痛みを遮断できても、知覚できないようには俺もできない。そこまでやると危険へのリスクのが高いと体が判断しているから。

 だから躊躇っちまうんだよな……。吐きこそしないが絶対不快感に襲われる……。

 って、足踏みするわけにも行かないよなぁ~……。腹くくろう。

「今行――っと。なんだよ」

 覚悟を決めて行こうとしたらリリンの影が足首に絡みつく。なんのイタズラだこれ。

「我らは後ろをついていく。我はその中じゃマナに酔いそうだ。あとは暇潰しとしてこいつらを連れていく。構わんだろう?」

「構わないけど……。どうやってついてくるって言うんだいプリチーガール?」

「これで良いのだろう?」

 リリンは海まで跳び、水面に立つ。そしてパッと見アレクサンドラと同じように海水でドームを作り上げた。

 だが、マナは海水の壁から漏れ出ることはなく、ドームをグルグル回っている。これなら俺も酔わなそう。

「Excellent…….見ただけで真似たのかい?」

「我はマナを知覚する。この程度なら造作もない」

「ヒュ~♪ そいつはグレイト。ミーたちよりも上の次元の人類ってわけだね。わかった。先導するからついてきてくれ」

「あぁ」

 これにはアレクサンドラも本気で驚いたようだな。仕方ないけど。

 なにしろ超高等技術を見ただけでやられたんじゃな。魔帝の立つ瀬がない。

「そら、お前らも来い」

「……あいよ」

 なんにせよ。リリンに助けられた形だな。口の端がちょっと上がってるからなんか変なこと考えてそうなのが不安だけど。

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