表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遥か高みの召喚魔帝  作者: 黒井泳鳥
七月編
121/656

121話

 特にこれといった事件もなく。週末を迎え、演習試合では勝利を収め、またハイネの御使いの役目を果たすために異界に来てるんだが……。う~ん。来て早々ちょっと混乱してる。

「おらぁ! 十三連勝! どんなもんじゃい!」

「うぉぉぉぉぉぉお! またチェーリの勝ちだ!」

「活きの良い若いヤツのほとんどはやっちまったな!」 

「もうアズくらいしか相手できるのいないんじゃないか!?」

「もっと腕に自信のあるヤツはいないか!? こちとら帰る度に怒られてフラストレーション溜まってるんだよ! 発散に付き合えこんちきしょー!」

 ……野蛮人って毛嫌いしてたじゃねぇか野蛮人。仲良く馴染みすぎなんだけど。どうなってんだよ! ってかまだ族長に怒られてんだな! ざまぁ!

「はぁ~……」

 とりあえず、かなりヒートアップしてるみたいだし、落ち着くまでほっとこ……。



「先程はお恥ずかしいところをお見せしまして……」

「いや、もう良いから……」

 あれから二時間ほどストリートファイトをこなし、やっと俺に気づいたチェーリ。っていうか所用をこなしていたらしいアズが広場まで来たときすぐ俺に気づき、チェーリをぶん殴って場を治めた。ありがたいけど流れるような暴力行為だったから、ちょっと怖かったわ。

 そして現在は二人の巫女の案内で次の巫女のところへ向かっている。

 そういやまだ今度はどんな場所か聞いてなかったな。一応確認してみるか。

「なぁ、今度はなんの民のところに向かってるんだ?」

「今向かってるのは水の民のいる場所なんだが……ただ」

「うん?」

 なんだが歯切れが悪いな。ちょっとデジャヴ。チェーリも山の民のことを話すとき苦い顔してたし。他の民と仲良くないのか? それとも先入観でもあんのか? ……これらとは関係なく、普通にトラブルってのが一番怖いんだが。

「……水の民は放浪の民なんです」

 言いあぐねていたアズの代わりにチェーリが答える。なるほど。だから探すのが手間ってわけか。そんで真面目な性格故に放浪しているヤツらはちょっと気にくわない的な? そんな感じかな。

「とにかく、水の民は決まった地域に住んでいるが決まった場所には住んでいない。だから探すところから始める」

「なるほど……。それは……めんどくさいな」

「仕方ないですよ。頑張りましょ? 私たちも付き合いますし」

「……今思ったんだが。アズ一人でも良くないか?」

「はい? なにがですか?」

「案内」

「だな。なんでお前いるんだ? 森に帰っても良かったんだが」

「それはもちろん巫女ですから。最後まで御使い様のお役目を見届けようかと……」

「まぁどうせグチグチ言われるから帰りたくないだけなんだろうけど」

「……」

 言葉に詰まるチェーリ。図星だな。

「あ~。なんかそんなようなこと叫んでたな。なんだ? 族長と仲悪いのか?」

「別にそういうわけでもないんだけど……」

「ルール破って確認なしで俺に襲いかかったから叱られて、それをまったく反省しないから未だに言われてるらしい」

「ちょ! バラさないでくださいよ! 恥ずかしいでしょう!?」

「うるせぇ。反省しないからだろ」

「完全にお前の落ち度じゃねぇか。帰れ。甘んじて受け入れろ」

「うぅ~……」

 アズの蔑むような目で見られて涙目のチェーリ。それでもまだついてくるあたりよっぽど小言言われるのが嫌なんだな。

 ……ってか、帰るの嫌ってだけならどこか別のところで時間潰せば良いんじゃないか?



「……おい、まさかとは思うが」

「なんだ?」

「こっから探すのか?」

「あぁ」

「水の民って言ってたよな?」

「言ったな」

「じゃあ……なんで……。俺たちは――砂漠にいるんだろうな?」

 目の前に広がる砂。砂。そして砂。さっきまで森だったのになんで急に砂……!? そんで水とはほど遠いと思うんだか? 本当にここで合ってんのか……?

「言いたいことはわかる。すごいわかる。だが諦めてくれ。これは現実だ。あいつらはここのどっかにいる」

 えぇ~……。パッと見数十キロはくだらない規模なんだけど……。本当にこっから探すの~……。

「はぁ~……。めんどくさいなぁ~……」

「すみません。用事を思い出したので」

 俺が諦めると同時に、太陽の熱を蓄え、反射する砂の熱に直接ふれることでお小言のがマシと思ったチェーリが踵を返す。

「「ここまできて逃がすと思ってるのか?」」

 俺とアズに肩を捕まれたチェーリは砂漠とは別の要因で汗をかく。冷や汗というものをな。理由はもちろん俺とアズに肩を捕まれてるから。指がめり込むくらい強く。

「いだだだだだだだだだだだ!」

「……選ばせてやる。このまま握りつぶされるかうちらと共に地獄を歩むか」

「まぁ、握りつぶされるのが肩だけとは限らねぇけどな」

「……………………………………一緒に行かせていただきます」

 へっ。最初からそうしてれば良いんだよ。つか最初からついてこずに逃げてれば良かったんだよ。つか最初からちゃんと反省の姿勢を見せておけば良かったんだよ。色々墓穴掘りすぎだぞお前。

 さて、道連れも秒で説得したし。探しに行くかぁ~。水の民の巫女さんを。……見つかる気しねぇなぁ~。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ