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遥か高みの召喚魔帝  作者: 黒井泳鳥
七月編
104/656

104話

「なるほど。そういうことでしたか。それで今回は貴方が御使いに」

 場所を変えつつお互いに事情を話し、今は森の民の方々にとって神聖な洞窟の奥にある場所。空神の祠にいる。なんで連れてこられたかは不明。これから生け贄にでもされんのかな……? もしそうなら全力で逃げるけど。

「えぇ、そういうことなんですけど……。それで役目の一つは果たしたと思うんですけども。なんで俺はここに案内されたんですかね?」

「……貴方のお力はこの目で確かめていただきましたが、念のため御使いかを確認願いたく」

「はぁ……まぁ。そうですね」

 虚偽の可能性はそりゃあるし、確認は必要だわな。

「で、いったいなにを?」

「御使いかどうかは巫女のみが判断できます。場所は本来どこでも構わないのですが、こちらにも色々と都合がございまして。お付き合いください」

 文化レベルを見るに迷信とか古くからのルールとかが根強いんだろうな。村自体も完全木製の家や石作りの道具とか、食料もパッと見だけど狩りによる物がほとんどっぽいし、かなり文化水準が低かった。まだごくごく短時間しかいないしチラ見程度のものだから確証はないけど。ま、大体あってんだろ。間違ってたとしても特に困らねぇし。どうでも良い。

 そんなことよりも俺は帰ったときが恐ろしくてならねぇよ。一応断ってたとはいえ日を跨いだからなぁ~……。コロナ大丈夫かなぁ~……。

「えぇ、大丈夫です。ただちょっと急いでるんで、確認が終わり次第一度帰りたいんですけど……」

「なるほど。ではすぐに済ませてしまいましょう――出番だぞ馬鹿娘チェーリ

「……はい」

 言葉だけなら名前を呼んだだけなんだけど若干怒気を感じたよね。巫女殿は俺よりも言葉に込められたニュアンスを感じ取ったんだろうな。すげぇ複雑な顔してるわ。ま、自業自得だし擁護する気もまったく起きないがな。

「では御使い様。失礼いたします」

 チェーリは俺に背を向け、長い髪をかきあげる。するとうなじ部分に羽の形をした痣が見える。俺の手につけられたやつよりも小さいけど同じ形だ。

「巫女にも御使い様同様空神様の羽が刻まれております。羽同士を近づければ巫女は御使いかどうかわかるそうです」

「ほう。じゃあ失礼して」

「うぎゃあああああああああ!!?」

 うなじに手を伸ばしてガッシリ掴んだら死を覚悟したような悲鳴を上げられた。え? 近づけたら良いんだよな? ダメだった?

「み、御使い様!? ど、どうか殺さないでください! 無礼を働いたことは反省します故どうか命だけは!」

 超涙声で許しを乞われてる。本当に殺されるかと思ったのかあんた。反省するのも遅いし失礼だな。ぎゃあぎゃあ喚かれるのもうっとうしいから離してやるけどさ。

「で、確認できました?」

「は? え、ええと。申し訳ありません。恐怖のあまりよくわかりませんでした」

「……」

「いぃぃぃぃぃいやぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」

 ふざけたことを抜かすので再び首を掴んでやる。おら近づけてんだ確認しろよ。ほら。早く。

「っ!? わ、わかりました! ま、間違いなく御使い様です! きっちり役目を果たしましたので! どうか命だけは助けてください!」

「……本当に確認できんたんだろうな?」

 わ~実の父である族長に疑いの目向けられてるわ。そら規律を守れない巫女だもんな。仕方ねぇな。ただ今回ばかりはかばいたい。だって嘘だと俺が困る。

「……代々巫女は御使い様を判別できると聞かされますが、その意味がわかりました。この巫女の証を中心になんかこう……感じると言いますか。説明が難しいけれど……。とにかく、この方が御使いというのは間違いありません。それだけは絶対に」

「……わかった信じよう」

 俺を襲っていたとき並みに真剣な空気を出してるので族長さんが信じてくれたよ。……比較対照が襲撃ってどないやねんって感じだなこれ。

「では御使い様。確認も済みました故」

「あ~はい。……あ、帰る前に一つ頼みが」

「なんでございましょうか」

「次来たときのために案内を頼みたいんですけど。毎度森をさ迷うわけにもいかないんで」

 完全に時間の無駄だからな。用はさっさと済ませて帰るに限るからな。あの暴れん坊……もとい甘えん坊のストレスを溜めないために。

「わかりました。次参られたときには巫女であるチェーリをつけましょう」

「え」

「えっ」

 いや俺はわかるけどなんで巫女あんたまで嫌そうな顔してんだよ。俺はあんたの言動に不安覚えてるからだけどあんたのほうは何が不満なんだよ。巫女だろ? 御使いの役に立てよ(怒)。

「して、次はいつ参られるので?」

 えっと……。今日が日曜で土曜に演習の時間指定してるから……。

「六日後です」

「むいか……? とは?」

「……」

 あ~……これ時間の概念ないやつか……。どう説明したものか……。そうだ。

「おいハイネ。どうせ視てるんだろ?」

「「「ブッ!?」」」

 族長。巫女。その他その場にいる俺以外が噴いた。よく考えれば当然か。神様を呼び捨てにしつつ気軽に話しかけてんだもんな。悪い悪い。悪いと思いつつスタンスは変えねぇけど。

「時間についてどう説明したら良いよ」

『……森の民は日に二度食事を取る。故に十二の食事と言えば伝わるはず』

 やっぱり視てやがったか。しかも音ではなく俺との繋がりを利用して語りかけやがる。コロナのときに近いやつだな。つか視えてて話せるんなら案内もしろよ。こちとら無駄に何時間も迷った挙げ句襲われたぞこら。今後の案内も巫女に頼る必要ねぇんじゃねぇの?

 まぁ良い。その辺りはまた後にしよう。まずはこっちの話を終わらせて一刻も早くコロナのところに帰らなくてはいけないんでな。

「え~十二回くらい食事を取った頃に来ます。ハイネに聞いたところ大体そんなもんらしいんで」

「は、はぁ……。本当にずいぶんと親しげなんですな。少々驚いてしまいました……」

「さすがは異界より選ばれし御使い様ですね……」

 少々どころじゃなかったっぽいけど……。指摘はすまい。あと別に選ばれし御使いじゃねぇし。そもそも御使い自体当の本人大したモノだと思ってねぇよ絶対。あんたらのご先祖様の決めた習慣にわざわざ付き合ってるだけだぞあいつ。だから俺みたいな馬の骨にも任せせられるんだからな。こっちは力だけ寄越してはいさようならでも良かったのにわざわざ仕事のおまけまでしやがって。めんどくさいったらありゃしねぇよ。

「とりあえず今回はこの辺で失礼します。また後日」

「はい。次回の来訪お待ちしております」

「……お待ちしております」

 間を空けんじゃねぇよ巫女。せめて歓迎の体でいろ。あんたに求めるのは酷なのはわかってるけどちょっとはつくろえ。ま、どうせ今回切りの付き合いになるだろうから細かいこたぁいっか。そんなことよりも早く帰ろう。

 と、帰る前にあの人のところ寄っとくか。感覚的には問題ないけど、存在の変化が危険なのはリリンで実証されてるからな。保険はかけるに越したことはない。

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