Butterfly Effect
「 バタフライエフェクトって知ってますか 」
「 あれだろ 風が吹けば桶屋が儲かる的なあれ 中二病なやつ 」
「 なんっすかそれ 意味ワカメ しかも中二病って ユウリくん本当はよく知らないでしょ 」
「 はぁぁっ 知ってるしィ じゃあなんだよ 」
「 どっか遠くで蝶々が羽ばたいたらどっか遠くで嵐が起きちゃうんですよ 」
「 なんかぼんやりしてんなぁ で それがなんなんだよ 」
「 だぁかぁら 蝶々の羽ばたきのような小さな事象が巡り巡って嵐のような大きな事象をも引き起こしちゃうんですよ 凄くないですか 」
「 凄くないよ そもそもどうして蝶の羽ばたきが起点になってんだよ じゃあその蝶はどっから涌いてきたんだよ 結局バタフライエフェクトって言うカッコイイワードを使いたいだけじゃんか そういうのを中二病って言うんだよ 理論としては0点だな 」
「 そうなんですか 」
「 だってそうだろう 反転しても成立しなければそれは理論として成立しない 」
「 わかんない 」
「 だぁかぁら 風が吹けば桶屋が儲かるなんだよ 」
「 それもわかんない 」
「 日本人ならそんくらい知っとけよ 風が吹いたのを起点としてそこから様々な事象が起こり最終的に桶屋が儲かったって言うことわざだよ 」
「 それで 」
「 そこで反転だよ じゃあ何で桶屋が儲かったのか 」
「 風が吹いたからじゃん 」
「 じゃあその風は何で吹いた 」
「 テキサスで蝶々が羽ばたいたから 」
「 そうそう バタフライエフェクトで桶屋が儲かった ってなんでやねん 」
「 うわっ ノリツッコミだ 」
「 だからぁ 事象なんてものには必ず何らかの因果が起因している それを遡ろうと思えば際限なく遡れてしまうんだよ 」
「 まあそうですよねえ 」
「 そしてそれは必ずある一点に集約する 」
「 その一点ってなんぞやもし 」
「 宇宙の始まりだよ それより先へは遡れない 時間自体が存在してないからね 」
「 ってことは すべての因果は宇宙の誕生という一点に集約するってことですか あなた魔法少女ですか 」
「 僕と契約して愛玩動物になってよ 」
「 黙れエロベェ 」
「 痛てて ちょ ツク 歯ぁ立てるなよ 」
「 ユウリくんが余計なこと言うからでしょ
もうしてやんない 」
「 冗談じゃんか 小ちゃなお口いっぱいに頬ばったツクは既に僕の可愛い欲張りハムスターちゃんなんだからさぁ 」
「 囓ってやる ガシガシ 」
「 たんまたんま 今そこ囓ったら血ぃ吹き出るから ホラーになるから 」
「 んで 魔法少女がどうしたんすか 」
「 だからすべての因果を遡って行くと必ず宇宙の誕生という一点に辿り着いてしまう 」
「 それもう聞きましたよ 」
「 そこで反転だよ 」
「 ん? つまり 」
「 つまり 点に過ぎない宇宙の誕生にすべての因果が すべての未来が すべての時間が
内包されている 」
「 ??? 」
「 そして宇宙の消滅までも 」
「 わかるような わかんないような でもそれじゃあ 」
「 そう 時間は軸では無く点でしか存在してないんだ 今この時間の一点こそ宇宙の始まりの一点であり宇宙の消滅の一点でもある
すべての時間がこの一点に集約しているんだ 」
「 いやいや 同一点上に宇宙の全時間が存在してるならそれはもう時間じゃないですやん 」
「 そう 時間なんて単なる概念なんだよ そんなもの存在しない 」
「 だって 時間が存在しないんなら 」
「 すべてがゼロなんだよ 」
「 じゃあ 今ラブホのソファーでいちゃついてる私達って何なんですか 」
「 さあね 何でもないんじゃないのか だって単なる時間と言う名の点に内包されている点に過ぎないんだからね 」
「 いやいや ユウリくんの説は一見騙されそうになりますけど破綻してますよ だってカオス理論を無視してるじゃん 」
「 げっ なんでカオス理論が出てくんだよ 」
「 だってカオス理論じゃ未来予測は不可能なんですよ それにバタフライエフェクトだって微少な事象が予測不能な大きな事象を生み出すという点ではカオス理論と同意なんですから そもそも時間を逆行する時点で間違ってるんです あくまでも嵐が起きたのは遠くで蝶々が羽ばたいたからじゃなくって
蝶々の羽ばたきが思わぬ未来を招いたと言う例えなんですから 桶屋さんが儲かったのは風が吹いたからじゃ無くって桶屋さんが頑張ったからです ただ風が吹けば桶屋さんが儲かるような思わぬ不確定な未来が起こりうる可能性があるってだけですよ 」
「 それは僕たち人類には予測不能ってだけだろうカオス理論なんて人類の限界の言い訳だよ 無限の思考を積み重ねれば必ず解は導き出せるはずだ 」
「 その無限の思考を積み重ねるにはそれこそ宇宙の誕生から消滅までの時間と同じくらいの時間が必要なんですよ その時間が点ならば積み重ねられないじゃないですか 」
「 そんなことないさ 宇宙の誕生から消滅までの時間が同時に点として集約してるんだから何兆年の思考だって所詮1つの点に過ぎない 人類がまだこの宇宙の真理に到達してないだけだよ 」
「 なんかペテンっぽいなぁ じゃあユウリくんの言うように時間が一瞬の点でしかなくって その一瞬にこの宇宙のすべての時間が同時に存在してるなら宇宙なんて存在していないなも一緒じゃないですか 」
「 そうだよ 宇宙はどこに存在してるか知ってる どこにも存在してないんだよ だって宇宙の外側は無なんだから ゼロの中に存在する宇宙 それはどう計算しても答えはゼロ以外導き出せないじゃないか この世界なんて始めから何処にも存在していないんだよ 例えばツクがもし死んだらどうなる 」
「 ユウリくんの背後霊になって一生つきまといます 」
「 何いきなり告ってんだよ 」
「 告ってねぇし バカ 」
「 で 死んだらどうなる 」
「 どうもなりませんよ 人間死んだらお終いです 」
「 そう 死んだらそれでお終いだね その先なんて何も無い そしてその前も無くなる 」
「 たんま 先が無いのはわかるけど前は無くなんないしょ 何私の存在した事実を消してるんすか 」
「 それはツクの外側の話だろ もちろん僕は一生ツクの事忘れないぞ 」
「 なに勝手に殺してんだよ 絶対ユウリくんより長生きしてやる そんで死んだら速攻忘れて彼氏作るもん 」
「 僕より長生きするなんて至難の業だぞ 」
「 むぅ 」
「 じゃなくて 所詮人間なんて個の中でしか完結出来ないだろ その個を失えば個に内包された人生と呼んだ時間すら失われる つまり 死んだら個としての鳥追月夜は失われ存在しなかったのと同意となってしまう それは宇宙だって同じだ 宇宙という個が失われれば内包する時間も失われる 時間なんて宇宙の中でのみ完結する妄想と同じなんだよ 宇宙は無の中に誕生したと同時に刹那に消滅する 時間という妄想を抱いてね 」
「 うぅぅぅぅっ わからん 言ってる事はなんとなく理解は出来るような気はするけど胡散臭過ぎです だって私達は実際存在してますし時間だって経過してますよ それでも宇宙は存在すらしてないって言われても そこまで行くと宗教哲学ですよ 」
「 真理と言うものを探究すると行き着く場所は無ってことになっちゃうからね 僕たち自身 無が具現化した形なのかもな せっかく宇宙という刹那の狭間に存在出来たんだ 難しいこと考えずに楽しめばいいじゃないか 」
「 って コラ ……ン〜ん もう…… 」
「 何だよツク 」
「 ……あっ ……ちょ ……最低 」
「 本当に? 」
「 いじわる 」
「 ところで バタフライエフェクトがどうしたんだよ 」
「 んンン…… だからぁ 私とユウリくんのバタフライエフェクトって どこで起きたのかなぁって 」
「 ……君のお母さん 鳥迫真月を殺した時 」