第53話 恋人!いい人やん
お久しぶりです。
いや、ほんと2ヶ月以上投稿しないとは自分でも思って無かったんです。すいません。
まだ読んでくれてる人がいたらいいなと頑張って完結まで持っていきたい所存でございます。
本当にすいません。
本編スタートです。
「どこに向かったかわかるか⁉︎」
「すまん。全く気づかんかったからどこに行ったかも……」
「チッ。なんのために人形やってたんだよ」
「……すまん」
スイレンは本当に申し訳なく思っているようで、いつにもなく真面目なトーンで謝ってくる。
スイレンが報告しに入って来てからは、クリアやシスローネさんたちには子供たちを任せた。俺はスイレンと部屋で向かい合っている。
「それで? 誰がいなくなったんだ?」
「えっと……」
「フルリアちゃんと男の子5人よ」
子供たちを教会に入れ終えたらしくシスローネさんが戻ってきた。後ろにはクリアもいる。
「……そっか。フルリアちゃんはきっと超級魔導書を探しにいったんだね」
「ええ。たぶん。あそこの近くには魔物に出る森があるわ。ピクニックした場所自体はそこまで危険じゃないけれど、一歩でも森に踏み入ればたくさんの魔物が寄ってくる場所よ」
「わかった。とりあえず門番の人に聞いてみよう」
俺がそう言うと、クリアが後ろから口出ししてきた。
「え、あなたが探しに行くんですか?」
「そうですけど」
「……じゃあシスローネを一緒に連れて行ってください」
「……まぁ、良いですけど」
信用されてないな。
クリアは過去の体験から、仕方ないと言えば仕方ないんだろうけど、俺ってそんなに信用できない奴に見えるのだろうか。
クリアから信頼を貰ってなくたってどうってことはないけどね。
「じゃあクリアさんはここにいる子供たちをお願いします」
「言われなくてもそうします。先に外で待っていてください。彼女と話すことがあるので」
そう言ってクリアはシスローネさんを手招きし、この部屋から出て行った。
少し様子を見てこっそりと2人の後ろをついて行くと、2人はクリアの事務室に入った。
ドアに耳をつけて2人の声を聞こうとするが聞こえにくい。[盗聴]スキルを使うと中で話している内容がしっかりと聞こえてきた。
「……あの子供は信用できません。あなたが監視していてください」
「クリアさんが貴族を嫌うのは当然だと思う。けど、ソルトは何にもしてないでしょ?もう少し信用したら――」
「私だって全く信用していないわけではないです。だから噂の少年がここにいると通報してないじゃないですか」
確かに。
噂で出回っている「キツネを連れた赤髪の少年」が当てはまる人物なんてこの世界に俺ぐらいだろう。
……変装とかしないとダメかな?
「あの子供が人殺しだとかそういう物騒なことをやるとは考えづらい」
今日も酒場で暴れましたすいません。
「だからこそ信用できないんです。私が知っている貴族は子供であっても威張り、傲り、庶民を人とも思わない奴らなんです」
「でもグレン=バード様は例外なんじゃ……」
「グレン=バードだって謝りに来ただけで、裏で何をしているかわかりません」
クリアはとことん貴族を信用していないらしい。
貴族が聖人君主に生きるというのは無理な話だ。
一度貴族社会でお伽話の騎士に憧れ、正しい事を貫こうとした貴族がいた。まだ若かったうえに、領主権は親にあったので貴族たちも微笑ましく見ているだけだった。
しかしその親は突然病死してしまう。すると当然権利が子供に移る。
領主になっても相変わらず正義を貫き、悪いことを徹底的に無くしていったそいつは、自分の領地の経営がうまく回らなくなった。
それだけでなく、他の貴族の悪徳にも指摘を入れてしまっていたために、他の貴族に恨まれ貴族として留まることもできなくなってしまった。
つまりそういうことだ。
「貴族はみんな信用できないのです」
「クリアさん……」
「だからあの子供も例外ではない。そろそろ行ってください。あの子供も待っています」
おっと、危ない。
俺はそそくさと退散した。
*
「お待たせ」
「早く行こう。最悪の場合がないとも言い切れないからさ」
「そうね」
「クリアさんは子供たちをお願いしますね」
「だからわかっています。早く行ってください」
はいはい。
「あ、スイレンっていります?」
「……連れて行ってください」
流石に飼い主のいない妖狐と一緒にいるのは恐いか。
じゃあスイレンも連れて行くことにしよう。
「見つけたらあまり叱らないでください。帰ってきて私がちゃんと叱りますので」
もともと叱るつもりはない。
シスローネさんへの言葉だろう。
「わかったわ」
よし。行くか。
俺とシスローネさんとスイレンは、みんなが昼間ピクニックした場所に近い、南の門へと向かった。
*
「女の子と男の子数人?」
「はい。見てないですか?」
「うーん……ここにはたくさんの人が出入りするからなー。うーん…………うーん…………」
シスローネさんは門番に尋ねていた。
門番は入る人はちゃんと確認するが、出る人までは覚えない。
町が割と栄えているからちゃんと覚えていて欲しいものだが、余程奇抜じゃない限り目にも入らないのだろう。
だがここまで覚えていないものだろうか。まぁ記憶力は人それぞれだしな。
フルリアちゃんたちが居なくなってそんなに経ってないはず。
なら門番以外で見かけたと言ってくれる人がいるはずだ。
辺りを見渡すと待ち合わせをしてそうな女性がいた。
話を聞こうと近くと、気配でも感じとったのかこちらに気がついた。
目が合ったので愛想良く笑いながら近づくとその女性は目を逸らして反対方向に歩き出した。
何故逃げるのか不思議に思いつつ速度を上げた。
すると向こうもスピードを上げ、剣技無しじゃ追いつけなさそうだったので、俺はスイレンに止めてくるよう命令した。
こんな街中で幼児が短剣持って全速力で走っていたら怖いからね。かわいい狐に任せよう。
スイレンが足元に纏わり付くことで、ようやく止まってくれた。その女性に近づくと見知った顔だった。
「あ、酒場の時の……」
「ひっ……!」
「そんなに怖がらないでよ。ただ聞きたいことがあるだけだからさ」
「わ、わかってるわ。別に怖がってなんてないし」
いやあんた「ひっ」て言ったやん。
まぁいいや。
「今は門で待ち合わせしてた?」
「そうよ。一緒にクエスト受ける人が消耗品を買ってきてくれてるから」
「へー。……それって――」
「言っておくけどあのハゲとチビじゃないわよ」
「あ、違うんだ」
「あの2人はもともと少しレベルの高いクエストを受けるため、しょうがなく一緒にいたのよ」
「別の人にすればよかったのに」
だってあいつら弱いし。
むしろ足手纏いだろ。
「さっきまでは拒否出来なかったのよ」
「それはどう言う……」
「あ、来たわ」
待ち合わせの相手だろうか?
後ろを振り向くと一瞬でその人が目に入った。
なぜなら……
「あ、モヒカン……」
金髪のモヒカンはこの町でもウザいくらい目立つ。
そういえば酒場に居たな。
確かに女と一緒のテーブルに座ってた。
「あれ?さっきの坊主じゃないか」
「こ、こんにちは〜」
「さっきはごめんな?こいつと連れの2人が」
「いいよ、別に被害は受けてないから」
あ、昼食が屋台になったって言う被害があったな。
まぁおかげでサーカスに逢えたし許容範囲内だろ。
「俺の昔の友人だったんだけどな?流石に子供襲うようなクズだとは思って無かったわ。契約は解消してやったからもうここには来ないぞ」
「へー」
やっぱりちゃんと常識人。
「あ、そこで買ったリンゴやるよ。親御さんに切って貰いな」
「わーありがとー」
てかいい人。
でも気になったことがある。何故女と一緒にいるのか。俺に危害を加えようとしたのはこの女も同じだ。
「なんでおじさん2人は解約したのにこの人はしなかったの?」
「ん?あーこいつは契約上の関係じゃなくてだな……一応俺の彼女なんだよ」
あらまぁ。
女がこのパーティーから抜けられないと言ったのは、こう言うことか。
「ちゃんと叱って置いたからもう手は出さないよ」
「出したくても出せないわよこの怪物には……。第一、噂になる方が悪いんじゃない」
「こら。ダメだよ。この子にもいろんな事情があるんだろ」
そうそういろんな事情がね。
他所様の家のゴーレムをぶっ壊したり、他所様の家に不法侵入したり。
……………………俺が悪い気がする。
いかがでしたか?
コロナ大変ですね。皆さんも気をつけてください。
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これからもこの作品をよろしくお願いします。




