第52話 暴露!クリアの過去
「クリアさんは何故そこまで貴族を嫌うんです?」
本題。
それは俺が魔道書をなくしたフルリアちゃんにどんな対応をするのかという問題である。
俺自身少し悲しとは思うが、それを責めるつもりはない。
しかしクリアはそれを信じれないらしい。
信じてもらうにはクリアが信じれない理由を知らないと、弁解の仕様がない。
さっき俺が怪我する前のクリアの言葉から、恐らく過去に貴族と何かあったのだろうと推測できた。
あとは「何故信用してくれないのか」と自分の信用性を押し付けるような聞き方で、余計に不信感を与えないように気をつけて聞き出していけばいい。
そこに答えがなかったとしても何かしらの情報は得られるはずだ。
「何故あなたにそんなことを教えないといけないんですか?」
「貴族はみんながみんな悪い奴と思われているのが癪だからです。でもクリアさんの嫌う理由を聞かないと絶対とは言い切れないじゃないですか」
「…………」
クリアはまだ話すかどうか迷っているようだ。
「こんな子供に話したところでどうにもならないですよ」
「……あなたを子供だからといって甘くみるつもりはありません。初対面で言い負かされましたから」
そういやそうだった。
「…………しかし、あなたが今まで真面目に働いてくれたことだけは認めてます。いくらなんでも完了させるのが早すぎですが」
「クリアさん……」
チート持ちですから。
「私には娘がいました。私の家は私と夫どちらも教会で働いていましたから、平民にしては裕福な方で年に一回、その子の誕生日は旅行してお祝いしていました」
凄いな。ヨーベクマ家ですら旅行なんて年に1回もいけないぞ。
まぁ貴族は安上がり旅行なんてできないって言うのもあるんだけど。
「事件が起こったのは娘の16歳の誕生日旅行の時でした。その年は勇者が召喚されたのでひと目見ようと王都へ旅行に行きました」
クリアはとても辛そうな顔をしていた。
俺はシスローネさんに話したくないことを無理に話すことはないと言った。誰にだって秘密はあるものだと。
それでもこのことは言ってもらわないといけない。
俺のためだ。
これを聞いて説得し、クリアたちを安心させるためなんて綺麗ごと言うつもりはない。
どこに行くかはもうシスローネさんに話してしまったため、下手に俺に対する疑心、恐怖心を残したまま旅立って通報でもされたら危険だ。
今はスイレンを盗まれたと騒いでいるのが警備関係の家の令嬢だから噂程度で収まっている。
しかし、クリアが教会に通報したら俺は国を敵に回す上に、他国まで信教を広めているトメカリム教にまで敵対視されてしまう。
そうなると俺はこれからこそこそ生きなければならない。
もちろん家族にも迷惑がかかる。
やはり辛くても言ってもらうしかない。
「辛い話を思い出させてしまいごめんなさい。でもどうか頑張ってほしいです」
「……分かってます。娘の誕生日の日はちょうど勇者様のお披露目パレードの日でした。運良く一番前で勇者様を見れた私たちでしたが、そこに現れたのがグレン=バードです」
グレン=バード?
バード家の現領主じゃないか。
確か爵位は伯爵だったはず。
「グレン=バードはたまたま見かけただけの私の娘を気に入り、私たちの制止も聞かず無理やり連れて行ってしまいました」
「……そんなことが」
「話はこれで終わりではありません。娘は1年して家に帰ってきました……死体となって」
……そうか。
「グレン=バードは動かなくなった私の娘を煌びやかな棺桶に入れて自身で届けてくれました。私は我を忘れて、夫や使用人たちの抑制を振り切って、貴族であるグレン=バードの胸ぐらを掴んで問い詰めました」
“何故私の娘は動かないのか、息をしていないのか”と聞いたらしい。
「しかしグレン=バード自身も辛そうにしながら謝ってくるので強く当たることも出来ず私は泣き崩れました。その間グレン=バードは動くことなくずっと謝っていました」
“しばらくして”とクリアは続けた。
「忙しい身であるグレン=バードは帰り、私たちは残った使用人に事情を話してもらいました。グレン=バードに気に入られた娘はお気に入りの使用人として順調に屋敷で働いていたらしいです。いえ、順調とは言わないでしょう。娘はグレン以外のバード家全員に虐められていたらしいのです。それでも一年間耐え続けた娘でしたが、ある日事件が起きました」
「事件ですか?」
「ええ。グレン=バードが用事で家を離れていた日、娘はバード家の所有していた超級魔道書を燃やしてしまったそうです。それを理由に平民だった私の娘は使用人を解雇にされてしまいました」
あれ?それだけじゃ死んでしまった理由にはならないんじゃ?
「それだけなら良かったのです。いい経験だったと娘と笑い会えますから。なのに、あの家は娘を暗殺しました。残って話してくれた使用人によると、娘はおそらくバード家に言われて魔道書を燃やし、理不尽に罪を着せられ殺されたのではないかと言っていました」
「そうですか……」
要するによくある話だ。
貴族が平民から雇い、それをお気に入りとして扱うと周囲の人物からいびられる。
タイゼック家の屋敷でウキリに説明したのとほぼ同じ。違うのは使用人か側室かだけ。結局お気に入りなのは変わらない。
今回はバード家がわざわざ超級魔道書を燃やさせて追放してから、バード家はもう関係ないように見せかけて殺すという方法をとったまでのこと。
さっきクリアが我をなくしたのも、超級魔道書というトラウマキーワードが重なったからだろう。
「……娘さんは残念でしたが、ぼくは超級魔道書ぐらいで人を殺すような人じゃないですよ。証明する方法はないですけど……」
「貧乏貴族のあなたには高額な超級魔道書がとても大事なものでしょう? あげただけでなく、無くされたのに何も求めないのは余計に怪しく感じます」
そんなこと言われてもなぁ。
「あの超級魔道書は買ったんじゃなくて自分で書いたんですよ。だから値段としては普通の本と同じぐらいです」
「手書きですか」
「そうです。要求するような値段のものじゃありません」
「……手間をかけたものを失くしてしまい申し訳ございません」
「あ、いや……」
そういうことになっちゃうか……。
どう言うのが正解なんだよ。
「……じゃあシスローネさん3回ってワンと言ってください」
「え? 私? なんで?」
「早くしないと桁を2つ増やしますよ」
「300回⁉︎ や、やればいいのね?」
シスローネさんはクルクルクルと回って小さく“ワン”と呟いた。
綺麗な人が恥ずかしがってる姿もいいよね。
「これで罪は償ってもらいました。十分です」
「は?」
「あ、シスローネさんの声が小さかったですね。今度はポーズもちゃんとつけて、はいもう一度」
「え……?ぽ、ポーズ?」
戸惑いながらもシスローネさんはまた3回回ってから、胸の前で下を向けて両手を軽く握り……
「ワ――」
「そんなのを信じれる訳ないでしょう!!」
ちょうどシスローネさんがポージングした瞬間にクリアが叫んだため、シスローネさんは犬のポーズのまま「きゅぅ」と縮こまってしまった。
「あなたは結局私たちに何を求めているんですか!」
「いや、何も求めて無いんですけど」
「覚悟はできてます!回りくどいことなんてしてないで早く教えなさい!」
「だから何も求めてないって」
「それが信じれないと言ってるんです!」
「これに関しては本当に信じてもらうしか……」
あ、これ無限ループに入っちゃうやつだ。
そんな雰囲気を感じ取ったその時だった。
「すまん!子供を数人逃した!」
猫のぬいぐるみが入ってきた。




