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転生!貧乏貴族の下剋上物語  作者: かめねこ
第一章 タイゼック家の使用人
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第46話 推察!裏の事情

 スイレンに上下関係をしっかり植えつけた後、今俺らは教会の方へ戻っていた。


「結局馬車探せなかったし」


 というのも、あの後何回も俺から逃げ出すもんだから追いかけっこで時間のほとんどを使ってしまって、ことが終わった頃にはすでに休憩時間を過ぎていたのだ。


『そ、その……わ、悪かった。だからもう』

「ん? あのことはもう怒ってないよ?」

『そ、そうかっ……!』

「時間を無駄にさせたことは許してないけど」

『な⁉︎』


 まあ冗談はさて置き、教会に着くとすでに子供たちが庭で遊んでいた。

 芝生の上でバタバタと走り回っている子から日陰に座って本を読んでいる子まで。

 近づくとその本を読んでいる子がフルリアちゃんだとわかった。

 スイレンは俺の腕から脱出すると、フルリアの方へ駆け出した。

 スイレン、一回仕事を代わってもらっただけでフルリアちゃんにすっかり懐いたな。


「何読んでるの?」


 フルリアちゃんはスイレンを撫でていた手を休めず、こちらに顔を向けてきた。


「これ? これはね[動物魔物図鑑とその分布図]だよ」


 どうせチートでいつでも見れるしって覚えるの諦めたやつだ。


「偉いねそんな難しい本読んで」

「何でそんな物言いなのですか」


 ただ単純に褒めただけなのに、後ろから文句を言われた。

 振り向くとそこにいたのはクリアだった。


「あなたも同じぐらいの歳のはずなのにそんな上から目線でものを言うのですか」

「……そんなことないと思いますけどね」


 うん。元の年齢があるからな。

 自然とそうなってしまうのはしょうがないだろ。


「……それにしてもこの庭、まさか午前中でこんなものに仕上げてしまうなんて凄いですね」

「頑張ったので」

「ええ。シスローネから聞きましたよ。それとそこのフルリアからも」


 フルリアちゃんから?

 そんなものここで出すようなものではないだろう。フルリアちゃんを気遣ってのことかな。


「あなた、シスローネには頑張ったって無理矢理説明したようだけど、フルリアはちゃんとその内容を教えてくれたわよ」

「内容?」


 待て、嫌な予感しかしないぞ。


「ええ。なんでも風と土の魔法を使ったらしいじゃないですか。二属性所持者だったんですね」

「ええまあ」

「しかもフルリアが知らない魔法を発動させたのですよね?」

「そうなんですか? まあフルリアちゃんが知らなかっただけで――」

「フルリアは天才です」


 クリアは俺の言葉を遮った。

 天才……か。確かにこの歳で難しい本を読んでいるんだ。そう言われてもおかしくない。

 チラリとフルリアちゃんを見てみると少し照れたようで、スイレンのナデナデが少し雑になっていた。


「適性属性は風で、齢5歳にしてすでに中級魔法まで使うことができます。まだ上級魔法を発動させることはできませんが、魔法の種類は全て暗記しています」


 ああ、本物の天才なんだ。

 そんな感想を抱いている場合じゃない。これは大問題だ。

 俺がそんな天才フルリアちゃんの知らない魔法を使って見せたということは、俺はすでに超級の魔法を使ったと解釈されてしまう。

 いや、実際使ったのだが、それを知られるのは非常に困る。


 クソ、小さな子供が魔法を詳しく知る訳ないと高を括るのがこんな結果になるとは。

 内心はこの場をどう(しの)ぐかで考察しまくっているが、外面は努めて冷静である。


「何故あなたはそんな高度な魔法を扱えるのですか」

「それは……」

「もしやあなた、魔倣器具を持っているのではないのですか」

「え?」


 魔倣器具、それは魔道具とはまた別物の、魔力を使って魔法を放つことができる道具だ。

 違いは明確に分かれている。

 魔道具は何をしたら何が起きるという因果を設定して、その時その時に魔力を流す必要のない道具だ。

 一方で魔倣器具は魔力を流すことで発動する道具だ。


 違いはもう一つある。

 魔道具は発動すると魔力でものを動かしたり、止めたりする。単純に魔力を動力源として動かす機会のようなものだ。

 それに対して、魔倣器具は発動すると、それに登録された魔法を放つことができる道具で、火属性しか持たない人でも水の魔法を使える優れもの。ただし本来より多くの魔力を必要とはするが。


 ともかく、クリアがそう勘違いしてくれているならそれに乗っかるのがいいだろう。

 そしてここはボロが出る前に逃げるべし。


「よくわかりましたね」

「っ!! 認めましたね! やはりあなたは……!」

「そうです。魔倣器具を使いました。ところで次の仕事は何ですか?」

「え? 考えていませんでした……けど」

「じゃあシスローネさんを手伝ってきますね!」

「や、え、ちょ、ちょっと待ちなさい!」


 俺は呼び止めるクリアを無視して、スタコラサッサとその場から離れた。

 スイレンは気持ち良さそうだからその場においてこう。


 *


 早々に話を切り上げ、まるで深く聞かれたくないと言うように逃げていったソルトを見て、クリアは自分が考えた仮定が正しいものだという確信に一歩近づいた。


(あの貧乏貴族、裏で何かしていますね)


 これがクリアの立てた仮説。この仮説が立った理由はこの教会にあのソルトが来たから。


 こんなボロボロな教会に来る貴族が、助けになりたいなんて善意で来る訳ない。

 ましてやこの教会が利益を生むとは思えない。

 そう考えたクリアはソルトがここに来た意味を考えるようになった。


 色々考えたがやはり有力なのは身を隠すためという仮説だ。

 こんなボロボロな教会、誰も進んで近寄りたいなんて思わないだろう。しかも子供がいる上にこれでも様々な国で力を効かせる宗教の教会の一つなのだ。

 もしここを隠れ蓑にできるならこれほどの優良物件はなかなか無い。


 となると次に浮かぶ疑問は何を隠したいのか。

 そこでちょうどクリアの耳に“赤髪の少年”の噂が入ってきた。

 クリアはソルトがその噂にぴったり当てはまることからだいたいの事情を想像できてしまった。

 さらに今日のソルトの活躍ぶりを踏まえるとクリアの想像力はどんどんと加速し、それ以外の理由が考えられなくなっていた。


「マザー、あの子は悪い子じゃないと思うよ」

「フルリア、あなたはまだ知らないのです。貴族の恐ろしさを……」


 おそらく今回ソルトが来た理由だってと呟き、推理した内容を反復して頭に思い浮かべる。


 貧乏だということにとうとう我慢できなくなったヨーベクマ家はどうにかして裏から大量の資産を手に入れる方法を入手し成功。

 しかしどこかで失敗、もしくはこの狐が関係した何かでそのことがバレそうになる。

 焦ったヨーベクマ家だったが、全てをソルトに押し付ける計画を思いつく。

 それをたまたま聞いてしまったソルトは親が裏で手に入れた金を持てるだけ持ち、狐と旅にでる。

 噂が旅先にまで伝わっていると気づいたソルトはたまたまクリアのいる教会を見つけ、隠れることに利用させて貰うことにした。


 これがクリアの考えたソルトがこの教会に来た理由の筋道だった。


(これなら家族に触れた時、怒った理由と次にその話をするなと釘を打った理由もわかります)


 そう少しズレたこと考えたクリアだったが、ソルトの威圧が強烈すぎて、ソルトが怒る前の会話と、してはならないことしか覚えておらず、内容までは全く覚えてないのだ。

 ソルトが怒った理由が家族を侮辱したからだとは微塵も思ってない。しょうがないと言えばしょうがないだろう。


 それと魔倣器具は潤った(ふところ)でソルトが買ったか、ヨーベクマ家が買ったのをソルトが盗んできたかしたのだろう。どちらにせよ貧乏貴族と呼ばれるヨーベクマ家が普通に暮らしていて手に入れられるような額のものではない。


 ここでそんな証拠になりうる魔倣器具を使ってしまい、目立ってしまったのは、ここを綺麗にできないと恥ずかしいという貴族のプライドでやってしまったのだろう。

 あれでも一応5歳なのだ。あり得る。

 と、魔倣器具関連もこの通り推理済みのクリアである。


(そう考えるとソルトも可哀想ですね)


 だからといって非情になれないクリアではない。

 もし面倒ごとに自分とシスローネ、子供達が巻き込まれてしまいそうになった時は遠慮なく切り捨てるつもりだ。

 むしろ面倒ごとになる前に証拠を見つけてここから追い出そうとさえ思っている。


(貴族のせいでまたあんな思いをするのはごめんです)


 貴族=信用できない=敵という理論のもと、クリアはソルトを追い出す証拠や方法を考え始めた。

 推理した内容が間違っているとは少しも考えずに。

読んでいただきありがとうございます。

今回はどうでしたか?


助けてください。クリアが貴族を警戒している理由を話すシーンに至るストーリーが思いつきません。

……なんとか頑張ります。本気で頑張ります。無理矢理にならないように死ぬ気で頑張ります。


「面白い」「続き読みたい」「プロットちゃんと書けや」そう思った方は下のブックマークと評価ボタンをクリックお願いします。

これからもこの作品をよろしくお願いします。

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