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転生!貧乏貴族の下剋上物語  作者: かめねこ
第一章 タイゼック家の使用人
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第45話 噂話!赤髪の少年

「どうだい! 仕入れたばかりの新鮮野菜だよ!」

「子供に家事を手伝わせない? 生活スキル安くするよ!」

「ママーアレちょうだい」

「ねぇこの女誰よ⁉︎ 私だけを愛してくれるって言ったじゃない!」

「他国で流行りの帽子だよ! これをつけるだけであなたもモテモテに!」

「美味しいよ! おひとつどうだい!」

「お、あそこ新しい屋台じゃないか⁉︎」


 屋台で商品を売る人、買い物に来た親子、修羅場な男女。

 俺とスイレンは今、様々な人の喧騒で包まれていた。

 ここ噴水がシンボルの大広場はいつもフリーマーケットみたいな感じらしいが、まるで遊園地に来たみたいにたくさんの人が行き交っていて、ここにいるだけで疲れてきそうだ。


 シスローネさんが叫びが聞こえた時、彼女は俺にお昼休みの時間だと伝えに来てくれていたらしい。

 ちょうどお腹も空いていたので、短時間で庭を生まれ変わらせた理由を本気で頑張ったということで強制的に納得させ、とりあえずお昼ご飯を探しに外に出た。

 そして人の向かうところに美味しい飯あり、と流れに身を任せる感じでここまで来たのだ。


『おい! 腹が減ったぞ! 早くしろ!』

「わかったよ。どこにしようか」


 四方八方からいい匂いが漂ってきて、どこに行こうか迷ってしまう。

 とりあえずいろんな屋台を回って食べ歩きをすることは確定だが、まずどこから行こう。

 やっぱ味の薄いやつからかな?


『いつまで迷ってるんだ! 先に行ってるぞ!』

「あ、ちょっと⁉︎ 金もないのにどうやって買うつもりだ!」


 ……まあ本能に従うか。

 俺もスイレンについて行くことにした。


 *


「ふぅ〜……満足満足」

『我はまだだぞ。おいアレも買え』


 スイレンが“アレ”と言ったものを見ると、パンに焼いた豚肉と野菜を挟んだケバブに似た食べ物が売られていた。


「お前どんだけ食うんだよ。そろそろ馬車探しをしたいんだけど」

『いいから買え!』

「しょうがないな。一つだけだぞ」


 その屋台に近づくと店番のおっちゃんが「らっしゃい」と笑顔で挨拶してきた。


「一つください」

「おぅよ。銅貨7枚だ」

「ちょっとまってね」


 俺はポッケから出すように見える仕草でアイテムボックスから銅貨7枚を取り出して、屋台のおっちゃんに渡す。


「はいたしかに。ほら、残さず食えよ?」

「ありがとう!」


 最後に爽快な笑顔を向けてきたおっちゃんに俺もにかっと笑い返す。

 それに「いい笑顔だ」と、おっちゃんは俺の頭をぐしゃぐしゃとかき回す。

 俺は直したい気持ちを抑え、おっちゃんに手を振り足早に立ち去った。


 *


 ソルトが立ち去った後、ケバブ(に似た料理)を売っている男性はそのソルトの姿を目で追っていた。


「おい、おっちゃん。これくれ」

「あ、ああ。はいよ」


 男性は唐突に聞こえた声に視線を引き戻された。

 男性に話しかけた彼は、よく居酒屋で会う酒仲間の青年であり、毎週ここで買い物をしてくれる常連客の青年でもあった。


「どうしたんだ、いつもの威勢の良い声は」

「いや、あの坊主見てたらお前のことが見えてなくてな」


 今は客もいない。男性は遠慮なく彼と話し始める。まぁ客がいても話していたが。


「どこのどいつだ、こんなおっさんを惚れさせた奴は」

「惚れてない。俺は嫁一筋だ」

「お前は嫁2人いるだろうが」


 彼はやれやれというような態度でツッコミを入れ、男性と一緒に軽く笑う。


「それで結局どいつだ?」

「ほれあそこでキツネと噴水に座ろうとしてる赤髪の――あ! 嘘だろ⁉︎」


 男性が見たのは赤髪の少年がペットの狐に自分の商品を食わせている場面だった。

 目立つ赤髪だけに、すぐにその少年を見つけた青年は「ああ、あいつか」と納得したように頷いた。


「う、ウチの料理はペット用じゃねぇ……」

「ああ。みんなと同じこと言ってる」

「みんな?」


 同じ場面を見ているはずなのに驚く様子のない青年に男性は再度驚いた。


「ああ、いつものように屋台を渡り歩いているんだがな? 何店かはそうやって“人に食べて欲しい”って嘆いているんだよ」


「で」と青年は続けた。


「話を聞いてみると“狐といる赤髪の坊主が……”ってみんないうわけだ。さらに女性がいる屋台では、その女性たちはみんなあの坊主にメロメロ。そんな感じだから今広場では割と有名人だぞあの坊主」

「そうだったのか……」


 料理を売る身としては人間が美味しく食べるために作ったのだから人間に食べて欲しい。

 なんでも少年だけが食べる屋台はなく、狐だけが食べる屋台も多いとか。男性の屋台もその一つだ。


 メロメロな女性たちも残念に思う気持ちもあるが、若い子から男性と同年代の女性までみんな一様に「将来が楽しみ」と言っているらしい。

 男性陣からすればこの歳ですでに女タラシとは「将来が怖い」の一言しか出てこないが。


 青年の話はまだ止まらなかった。


「しかも抱えてるのが狐だろ?」

「ああ。今はあんな噂もあるしな」


 その噂とは、男爵家にペットの狐を盗んだ奴がいるという噂だ。

 詳しくはわかっていないが、そいつは防犯の魔道具を売りにしている領地の領主の館にバレることなく忍び込み領主の娘の溺愛するペットのみを奪ったらしい。

 流石にペットが自分で逃げたのだろうと男性は考えていたが青年はどこからか新鮮な情報を仕入れて来たらしい。


「いや、この噂は本当らしいんだよ。そこの領主は隠そうとしているが、そこのお嬢様がいろんな人に情報をばらまいているんだ。“私の狐が盗まれた!”ってな」


 そうだったのかと男性は青年の情報網に感心した。


「まぁそれはおいといて、そんな噂があるからその犯人もあの子の関係者なんじゃないかと疑う輩がいるほどだ」

「なるほどなぁ」

「で? お前さんはなんであいつを見ていたんだ?」


 あいつと言われてふと男性がその方向をみると、少年と狐はすでにいなくなっていた。


「いやな? なんか感じたんだよ。あの坊主、すでに何かでかいことを成し遂げると心に決めてるぞ」

「はぁ? あの歳で?」


 青年はあの歳で女タラシというのも怖いが、それよりもこの男がそう断言してしまったという事ことの方がよっぽど怖かった。

 この男、この見た目で本業は占い師なのだ。本当にお金が必要になった時しかやらないので、どっちが本業かわからなくなるが、占いの才能があることだけは確かだ。


 流石に百発百中とはいかないが、今現在又はすぐ先のことぐらいならば外さないという、えげつない才能を持っている。中でもこの男は人の感情が関わることに強く、運命の相手やその人の心情はズバリ言い当ててしまう。


 そんな男がそう言い切ったのだ。

 つまりそういうことなのだろう。

 青年は買った料理が冷め始めたことに気づいて、かぶりつきながら呟いた。


「俺とは全然違うんだな」

「お前はもっと野望をもて」


 男性は相変わらず高みを目指そうとしていない青年に呆れのため息を落とす。


「しかしあの少年……いや、なんでもない」

「なんだよ」


 たくさんの困難にわざわざ立ち向かって行っていく気なのは何故だろうか。

 男性はその言葉を寸前でのみこんだ。

 それはあの少年にはその困難を全て解決できる器があると見えたからだった。


 *


噂になっていると薄々気がつき始めたソルトはやっと食べ終わったスイレンを抱いて定期馬車の集まる場所に近道を使って向かっていた。


『おい我はまだ食い足りないぞ!』


スイレンは不服らしいが。

抱いて移動しているのはこれが原因だ。


「もう十分食ったろうが」

『お前が少ないんだ。我はもともと体がでかいんだぞ! その分多いものだろう』

「それはもう聞いたよ。だから沢山食わせてやったろ」

『我は[変化(へんげ)]と[幻覚]を使っているんだ! エネルギーが足りんわ!』


腕の中でもがくスイレンを俺は抑えつける。


「お前はどんだけ食うんだよ! お前のために銀貨20枚も使ったんだぞ!」


銀貨20枚は日本円で2万と同価値だ。

一食で2万とか下手したら高級レストランより高いぞ。


『知らんわ! 我は全然満足してないぞ! 食わせろ!』


それから食わせろ食わせろと叫び続けるスイレンは、腕の中でも暴れて、ついに俺の腕から逃げ出した。


『へへっどうだ! 我はもう一度あそこにいくぞ!』


 スイレンは『待ってろ我の食事たち!』と走り出した。


「おい……」


俺が放ったその言葉にスイレンはピタリと動きを止め、まるで錆びた機械のようにこちらへ振り返る。

スイレンと目を合わせないように、若干俯きながら前髪で目を隠してスイレンに近づく。

兄さんとこの街に来る途中でスイレンが目さえ合えば幻術にかけることができると言っていたからその対策だ。


「少し優しくしてやれば調子に乗りやがって……」

『ヒッ……⁉︎』

「昼前に間違えて怒ったこともあったから、せっかく今日ぐらいは多目に見てやろうと思った矢先のこれだ」

『わ、悪かった! じ、時間ないんだろ? 早く行こうじゃないか。な?』

「そうだな」


俺が呟くとスイレンはホッと安堵の息を吐いた。

が、それは(つか)の間だった。


「時間ないから早めに済ませて馬車探しに行かないとな」

『な、何を済ませるんだ?』

「何って……母さん直伝の“教育”だよ」


俺はピシッと凍りついたスイレンを抱き上げ、町の外へと歩きだした。

安心してほしい。俺は俺なりのやり方だから。母さん並の威圧を出し続けるのは無理だから。

そう教えると、何故かスイレンの体が震え出した。


『お前はあの母親以上を出せているぞ……』


そんなことないだろう。俺はせいぜい睨みつけるぐらいだし。

母さんなんて後ろに水龍がいるんだぞ? 俺なんかまだまだだ。


『気づいてないのかこいつ……』


スイレンは何かを呟いていたが小さすぎてこの次の言葉は聞こえなかった。

読んでくださりありがとうございます。

今回はどうでしたか?


実は今週の月曜日から新しい作品を投稿し始めました。

この作品とはまた違うチート物語となっております。

一話二千文字で書いているので暇な時やちょっとした隙間時間に読みやすくなっております。

そちらもどうぞお楽しみください。


さて、この作品を「面白い」「もっと読みたい」「更新頑張れ」そう思ってくださった方は下のブックマークと評価ボタンをクリックお願いします。

これからもこの作品をよろしくお願いします。

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